【オンライン】275話:サーカス団の思いと恋の行方
『早速じゃが、童達は鬼人の者達と共に生きたと思うておる。一族の長共は考えが古くてのう、未だに己の考えを童達に押し付け、洗脳に近い教育をしている輩まで居る始末――』
そういう確執や古い仕来りが嫌になって逃げだしたのが、此処に居る妖怪達だと言う。
妖怪ならではの特技を使って大道芸をして路銀やら生活費を稼いでいた所を、サーカス団に誘われたらしく、そこそこに有名になってきた頃には、彼女が団長としてサーカス団を率いる形になったらしい。
ただ、最近になってプレイヤー達に乗っ取られたという。
『そこでじゃ、童達のサーカス団を取り戻してくれたら、此処に骨を埋める覚悟で協力をしたいと思うのだがどうじゃろうか、お主に絶対の忠義を誓う事を約束する。……ただ、そのな、少しだけ協力もしてもらいたいのじゃよ。鬼人達の中を取り持ってもらいたいのじゃ』
指先をツンツンと合わせて、恥ずかしそうにしながら吹攻めがちに頼みごとをしてくる。
何処となく、恋する乙女っぽい仕草だった。
「ねぇねぇ、もしかしてさ。此処に来たのって好きな人でも追いかけて来たのかにゃ?」
きっとミカさんは冗談で言った言葉だったろう、余りにもミスユ団長が恋する乙女な雰囲気を醸し出していたとは言えど、核心を付くつもりはなかったはずだ。
『あの、そっ、そうい訳じゃあ……うぅ』
ボフッと熱暴走したロボットみたいに顔から湯気が出そうなほど真っ赤になっている。
「え? マジだった?」
「うわぁ~誰だろう? アタシ達の知り合いかな」
アズミルが恋バナになった途端に、凄い食いついてきた。
〈僕等の知り合いって、鬼達のリーダーであるズナミくらいだよ〉
打ち込んだコメントに反応してか、僕の方をジッと見て耳や尻尾が凄い反応している。
『アヤツの名前はズナミと言うのか?』
〈まぁ、僕が名付けましたけど……〉
ミスユ団長が目をパチパチとさせて、次第に半目になっていく。
『お主は、どういう関係なんじゃ?』
なんか変な事を言うとライバル関係として認識されそうだ。
〈どうって……上司? というか、先輩?〉
「まぁスノーはグランスコートのファーマーだからね、彼等はその配下って事になるんだろうな。忠義を誓っている訳じゃあないけどな」
ティフォがそういうと、ガバッと勢いよく、僕の両手がミスユ団長に掴まれた。
『なるぼど、なれば此処へ最初に訪れたのは神の思し召しに違いない』
瞳をキラキラと輝かせながら、熱のこもった目で見つめられる。
『どうかサーカス団の権利を取り戻したいのじゃ。このままでは祭りが終わってしまえば、無理やりにでも他の場所に移動する事になってしまう。童を助けると思って是非に』
なんだこの選択肢、僕のウィンドーには、《手伝う》か《イエス》という二択しかない。どっちもハイなんだから、一択で良いじゃんと言いたくなる。
断ろうにも両手を封印されては、何にも打てないので仕方なく頷く事しか出来なかった。
『おぉ、引き受けてくれるか⁉ よろしく頼むぞスノー姫よ』
妖艶な風貌を持つ狐のお姉さんが、子供みたいにはしゃいでいる。
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