【オンライン】274話:サーカス団の秘密(5)
狐の耳がピコピコと動き、三尾のふさふさな尻尾が彼女の感情に合わせて揺れている。
『いつまで抱っこしてるんだ、下ろせよ』
ミカさんの腕をタヌキタシタシとタヌキが可愛らしく叩いている。
「あ、ごめんね」
『まったく、これだから人間ってヤツは困るんだ』
『とりあえず団長に報告、よろしくね』
タヌキはエリエさんの言葉に頷き、倉庫の方へと歩いて行った。
「それで、話しっていうのは?」
『私達の事は秘密にしておいてもらえないでしょうか』
何度か頭を下げて、エリエさんは必死にお願いをしてくる。
〈妖怪って知られるのって何か都合が悪いのかな〉
「さぁ、俺に聞かれても知らないぞ」
「ガウっちは何か知らないの?」
シュネーに聞かれて、ガウは自分の記憶を辿る様に考え込むこと数秒。
「拙者も解らないでござるな。調べるなら中央都市に行って図書館にでも行かないとなんとも言えないんだな」
「そういうのは、本人達に聞いた方が早いんじゃない」
確かに、アズミルの言う通りだな。
『あまり良く思われていないのは確かです。それに、ここって鬼人が居るじゃあないですか、その~、あんまり仲良くなれないと言いますか、数年前までは敵対関係だった事もあってですね、妖怪だと知れると色々とトラブルになるかな~って』
「人族の方は問題は無いの?」
『はい、友好関係ではありませんけどね』
どういう事だろう、サーカステントの効果はしっかりと発動している事から、人間が多く住んでいるグランスコートと鬼人の人達との関係は良好になっているのに、肝心のサーカスだんは、あんまり仲良くないなんてね。
「なんで妖怪ってバレると鬼人達とトラブルになるんだ?」
〈話を聞いてたよね? ティフォはもうちょっと人の機微ってものを学ぼうね〉
戦争をしていたんなら、確かに関係は微妙だろうね。
「ねぇねぇ、ついでに聞きたいんだけどさ。なんでサーカステントの中には、キミ達が居ないの? プレイヤーしか居なかったのってなんで?」
『プレイヤー? ってなんです?』
シュネーの質問に対して、エリエさんは小首を傾げ、良く解らないと僕等を見てくる。
「渡り人しかテントの中に居なかったでござるが、お主達は公演はしないのでござるか?」
ガウがシュネーの聞きたかったことを、相手に伝わる様に言いかえてくれた。
『あぁ、その事ですか……』
ばつが悪そうにして、僕等から顔を背けてしまう。
なにか言い難い事でもあるのかな。
『そのお話は童がいたそう』
タヌキが連れてきたのは、九尾のお狐様だった。
巫女服みたいな衣装を身にまとい、グラマラスなお姉様で妖艶な微笑みが良く似合っている。胸も大きく、チラッと見える太腿に男達の視線は釘づけにされていた。
「もう、花の下を伸ばして見ないの」
アズミルがティフォの頬を引っ張って注意する。
ガウもお尻辺りをミカさんにつねられて、正気に戻ったみたいだ。
〈お邪魔しています、僕はスノー。こっちはシュネーで相棒です。それに仲間のティフォナス、ガウ、ミカ、アズミルです〉
『ほほ、童なのに礼儀のしっかりした子じゃのう。童はミスユじゃ』
もう少し堅苦しい人かと思ってたけれど、どうも違うらしい。
僕の前に手を出して握手を求めて来た。
別に断る理由もないので、差し出された手を掴んで握手を交わす。
その瞬間、ほんの少しだけ、ミスユ様の口元がニヤついた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます