【オンライン】273話:サーカス団の秘密(4)
〈幽霊って言うか、妖怪の類かな?〉
顎に指先をトントンと当て、考え事を纏める様にコメントを打ちこんだ。
僕の事を凝視しながら、慌ててお尻に手を当て尻尾を必死に隠そうとしている。
「という事は、拙者達が声を掛けた者達は幻術で生み出された可能性もあるでござるな」
「数も多いし、きっと他にも仲間は居そうね」
ミカさんはワザとらしく視線をあっちこっちに向けて、周囲を隈なく観察している。
何時の間に打ち合わせしたのか、それとも状況からお互いにやることが分かっていたのかは解らないけれど、アズミルがペット達に指示を飛ばしてテントの周囲を監視していた。
「み~っけ♪」
音も無く空からフールが獲物を捕らえるかの様に、ターゲットに向かって滑降する。
それに気付いて、一匹のタヌキがこちらに向かって走って来た。
『おいぃ! 聞いてないって、助けろエリエ!』
どうやら受付のお姉さんはエリエと言うらしい。
『あ、バカ。その姿でこっちに来ないでよ⁉』
声からして男の子っぽいけれど、今は完全に小動物のタヌキにしか見えない。
集中力が切れたのか、受付のお姉さんことエリエさんの狐の尻尾が完璧に見えてしまっている。しかも数は三つ、つまりは三尾という事だ。
エリエさんはキョロキョロと左右を見回す。誰もこちらに気を向けていないの確認し瞬間だった。
受付のカウンター席から飛び出して一直線に僕の元まで走ってきた。
一瞬だったし、彼女のスピードが速くガウですら動きについていくのがギリギリだった。
僕の手をグッと握ってから、ひょいっとお姫様抱っこされてしまった。
「あっ! ボクのスノーに何するんだよ」
何時から僕はシュネーのモノになったのかね。
『此処じゃあなんだから、一緒に来てもらうよ』
『待て待て、置いていくんじゃねぇ~って』
トテトテと必死に付いて来るタヌキさん。
しかし、彼はエリエさんみたいにスピードが速い訳じゃあないらしく。
簡単にガウが追い付いて捕縛されてしまう。
お仲間が捕まったというのにエリエさんは速度を落とさずに、一定の速さでサーカステントの従業員専用スペースへと駆け込んでいく。
彼女はガウやティフォ達と離れすぎないよう、姿を見えるギリギリの位置をキープしつつも、何度か後ろを振り返ってティフォ達が付いて来ているかの確認をしていた。
『先輩! 正体がバレちゃいました。彼等に話をしたいので受付の交代をお願いします』
『あら、可愛いお客さんじゃない……って、バレちゃったのね~。しょうがないわね』
なんか深刻そうな感じではないみたいだ。先輩と呼ばれた六尾の狐の尻尾を持つ女性は、唯々、あっけらかんと笑いながら、呑気に体をほぐしている。
『それじゃあ、説明は宜しくね~。受付と盛り上げ役は任せてちょうだい』
ウィンクを飛ばして、完全に尻尾と耳を消すとチャイナ服に着替えて、サーカステントの方へと歩いて行ってしまった。
少し遅れてティフォ達が入れ替わる様に従業員施設のテントに入って来た。
「はぁ、流石に追い辛いでござる。このタヌキ殿が居なかったら見失っていたんだな」
どういう事だろう、僕から見えていた感じだとずっと後ろを追ってきていた気がする。
『はん、感謝しろよな』
「なんで偉そうなのコイツは」
アズミルが偉そうにしているタヌキのお腹を突いて遊び出した。
『や、やめろ、突くな~』
「まぁまぁ、ポコポコと小さい前足を動かしてる感じとか可愛いじゃない」
ミカさんからすれば愛玩動物と変わらないらしい。
ずっと抱っこされていたが、全員が揃うとエリエさんは僕を優しく下ろしてくれる。
〈追い辛かったってどういうこと?〉
下ろしてもらってなんだが、すぐにティフォの元まですぐに駆け寄る。
「あぁ、気配を隠すスキルか技を使われてたんだよ、少しでもよそ見してたら見失うって感じだったな。まぁ、ワザと姿を見せてくれてる時もあったからギリギリで追えてたんだ」
ガウなら全力で走れば、追い付けはするのかな。でも、隠密系の能力で下手に追えないから皆と僕の間くらいで追ってきていたのだろう。
『此処なら、人目を気にすることなく話せそうですね』
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