【オンライン】272話:サーカス団の秘密(3)




 受付のお姉さんに声を掛ける前に、大道芸をしてる幽霊達に適当に話しかけてみたけれど、反応は一切返ってこなかった。


 そして夜になるにつれて、段々に幽霊の数が増えていく。

 人型だけでなく、デフォルメされた幽霊や、都市伝説に出てくるようなキャラまで。


 本当に色々なタイプの幽霊が増えていっている。

 幽霊が増えれば増える程に、ティフォが助けを求める様に縋りついてくる。


〈アズミル、変わらない?〉


「ん~、羨ましくはあるんだけどね~。ちょ~っと外から見てる方が楽しかな~って思うんだよね~。スノーちゃんは別にライバルにはならなそうだしね」


 確かに元男の僕には、ティフォと付き合うっていう事はない。けど、だからってこの状況から助けてくれても良い気がするんだ。


「そんなこと言って~、実は恥ずかしいんじゃないの?」


 シュネーが揶揄う様にいうと、図星だったんかアズミルは顔を背けて小さい声で答える。


「……否定はしない、かな」


 ゲームとは言っても、流石に抱き着かれて移動するのは恥ずかしいらしい。

 何度か怖がっているティフォを撮る為にカメラ機能を使っていた。


「それより、なんて声を掛けたら良いんでござるか?」

「ストレートに幽霊ですかって聞いちゃあダメかな?」


〈それで話してくれると思うのシュネー? 下手に刺激するのって怖いと思うよ〉


「何でもいい、早く終わらせよう。ダメもとでも良いからストレートに聞こうぜ」


 今回は本当にティフォは役に立たないみたいだ。


「考えていませんでしたね。どうやったら答えてくれるんでしょう」


 良い案が出ないまま、ゆっくりと歩いていたつもりだったがサーカステントの受付についてしまった。


『あら、どうかしましたか? 何かお忘れ物ですかね』


 ひょっこりと小さな受付テントから顔を出した受付嬢さんに、どうしたものかと皆がお互いの顔をみて首を振ったり、視線で会話を持たせろと牽制しあっている。


 最初に痺れを切らしたのはティフォだった。


「お、お前は幽霊だろう。なあ、なんで此処にいるんだ! テント周りにいる幽霊達はいったいなんだ! なんでこんなに幽霊が居るんだ! ……教えてくださいお願いします」


 なんで最後の方はしおらしくなって、僕の背なかに隠れる。


『あらまぁ、上手く化けていたつもりなんですけどね。やっぱりまだまだですね』


 誤魔化すことなく受付のお姉さんは、けろっとした態度で笑っている。


〈少しだけ、お話を聞けたらと思いまして〉


『話ねぇ~。別に悪いことをしている訳じゃあないんだけど』


 別に気を悪くしたわけじゃあなさそうだ。

 受付のお姉さんは余裕な表情で、逆に僕等の出方を窺っている。


「あれ? お姉さんの後ろに何かついてるよ?」


 シュネーがフワッと飛んでいって、受付のお姉さん背後に回って気になる部分に触れる。


『きゃ! そこはダメよ』


 お尻の少し上あたりに手を伸ばし、突く様に触るとお姉さんが急に焦りだした。


「へ? ご、ごめんあさい」


 背を向けたお姉さんのお尻辺りには、狐の尻尾みたいなモノが見えた。




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