【オンライン】271話:サーカス団の秘密(2)




「よし、帰ろう。というかもう終わろう」


 僕が気付いたことを話すと、数秒の間ティフォが石化みたいに固まって再起動すると、すぐにメニューを開いてログアウトしようとする。


 それを僕とシュネーが慌てて抱き着き、阻止する。


「ダメだよ。ティフォが落ちたらボクらだって落ちなくちゃいけないんだから」


〈今は小鳥ちゃん達も居ないんだから。お母さんに怒られる〉


 まだティフォが一緒だから長時間プレイしていてもある程度は許されている。

 幽霊が怖いからという理由で落ちられたら、謎が謎のままで終わってしまう。


「放すんだ。俺は落ちる。なんだ此処は何時から地獄になった⁉」


「さっきまでは普通にほっつき歩いてたんだな」


「うぁ~女の子を放っておいて帰っちゃんですか~。それは男としてどうかと思います」


 アズミルが挑発するようにティフォを見下したように言う。


「まぁ、今の恰好からしたら別に良いじゃない? 可愛いし」


 今のティフォは清楚なお姉さんにしか見えないのに、幽霊が怖く、あたふたとして逃げ腰な姿は、男の保護欲を搔き立てるくらいには破壊力がある。


 ミカさんが止めの言葉を口にして、ログアウトをしようとしている動作が止まる。


「うぅ~、やれば良いんだろう。ただし、次からは夜に絶対に来ねぇからな」


 涙目でプルプルしながらも強がり、僕等に指を指して情けない宣言を言う。


〈はいはい、頑張ろうね〉


 身長差で頭は撫でられないけど、指さされた手を握ってあげる。


「良いか……お前は絶対離れるなよ。夜だし、人が多くなるかなら」

「どの道ティフォは離れないでしょう」


 シュネーが半目になってティフォを見ながら、呆れた様にため息をつく。


「しかし、さっきまでこんなに居たでござるか? サーカステントに入る前にもこの辺は歩いたのでござるが、夜でも此処まで幽霊は居なかった気がするんだな」


「確かにそうよね。夜にしか出てこれないのかしら?」


〈そりゃあ、幽霊だから?〉


 サーカス団のテントをぐるりと一周してきたが……。

 プレイヤーさん達と僕等が見ている景色が違う気がする。


「あ、すり抜けた」


 シュネーが指さした先に一人のプレイヤーが食べ歩きをしながら、そのまま堂々と大道芸をしている幽霊をすり抜けて通っていく。


 その光景を見た時にティフォが僕の体をギュッと抱いて、僕を盾にする様に隠れた。


「普通は反対でしょう、というかスノーを盾にしないの!」

「こ、怖いんだからしょうがないだろうが」


 幽霊と分かっていても、殆ど実体がある様に見えるんだから普通なら避けるだろう。


「やっぱり、見えてないよね」

「そうね……アレは見えてないと私も思うわ」

「ちょっと待ってるんだな、聞いてくるでござる」


 ガウがさっき幽霊の体を貫通していったプレイヤーに話を聞きに行く。


〈可能性があるとすれば、サーカス団のテントに入ったから見える様になったのかな?〉


「トリガーのあるイベントって事かしらね」


 面白いモノを見つけたという感じに、ミカさんがメモ帳に何か書き残している。


「フラグはテント内に入れるようになるかどうかって所ですかね~」


 アズミルがフリーパスを手元で弄りながら、嬉しそうにしている。


「やっぱりあの人には見えていなかったようでござる」


 ガウが話しを聞いて戻ってきた。


〈誰か適当に幽霊さんに話しかけてみる?〉


「っていうかさ。あの受付の人も幽霊なんじゃないの?」


 じーっと受付の人を見ていたシュネーが、何かに気付いたみたいだった。

 それを聞いて全員が受付さんに注目すると、確かに一瞬だけ姿が朧気に見える時がある。



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