【オンライン】270話:サーカス団の秘密




 サーカス団のテントから出ると、ちょっと遅れてお姉ちゃんからメールが届く。


『あぁ、そうそう。フリーパスを持ってるんでしょう。色々とサーカス団について調べてみなさい。テントの周辺とかね、面白い事が分かるかもしれないわよ』


「調べ回ってはないけど、サッとは見て回ったよね?」


〈そうだね、何があるんだろう?〉


 シュネーと一緒になってお姉ちゃんのメール読み終えると、周りを見回している。

 お姉ちゃん、そういう情報は教えても良いモノなの? ダメなんじゃないかな。


 ピコン――っと、もう一通が届いた。


『大丈夫かなんて余計な事を考えているんでしょうけどね、本来は奥まで来て色々と説明してヒントを出す予定だったのよ。入り口近くですぐに帰っちゃうんだもん。ゆっくりと見えていけば良いのにさ~、お姉ちゃんは楽しみに――――(愚痴と文句が永遠と書かれていたので割愛)。仕事時間外なら遊んで良いのよね。……逃げるんじゃないわよ。泣くからね』


「怖いって、どれだけ重度なシスコンなのさ」


 この短い間にどれだけの文章を打ち込んでるんだよ。半分くらいや病んでるし。

 本当、昔から人気者の癖に身内や親しい人には誰よりも寂しがり屋さんになるんだから。


 とにかくこの内容を……重要な部分は最初のだけな気がするけど、皆に教えよう。


「ねぇちょっと。なんで皆が一斉にメールを見始めたの? また除け者な感じなんですけど⁉ お~い、誰か返事を返してくださ~い」


 潤んだ瞳で構って貰おうと必死に跳ねたり手を振ってみたり、アピールを欠かさないミカさんが少しだけ不憫に思えて来た。今日はそういう役回りが多いね。


〈僕が説明してあげるから、落ち着いて〉


「ほんとう」


〈うん。そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないでください。あと縋りつかないで〉


 色々と当たるんだよね。扱いとしては子供に構って欲しいお姉さん的な感じだけど。


「スノーに変な誘惑はしないでよね」

「別にしてないよ~。良いじゃんか別に減るもんじゃないんだし」

「減るの、色々とスノー成分が汚染されるからダメ」


〈君らはどいう言い合いをしてるんだよ。多分、皆はお姉ちゃんからのメールが届いてるだけですよ。なんかサーカス団について調べてみると良いって話みたいです〉


 最初の一分はきっと僕と同じだろうけど、なんか二通くらい届いてるっぽい感じだから、僕と同じように何かしらの愚痴やら文句が書かれているに違いない。


 届くタイミングがズレていたから、其々に内容の違うメールっぽい。


「それにしても、サーカス団を調べるって……イベントの特殊施設だよね?」


 なんでという顔で僕を見られても困るのだが、僕だって知らないんだから。


〈さぁ、調べて見なことには何とも〉


 イベントクエストじたいは、もう終わったと思うんだけど。


 そもそも、この施設はNPCとプレイヤーが多く居るせいで、調べようにも何処から調べて良いモノやら解らない。


 空が徐々に赤く染まって、日が沈んでいく。


 タイミングが良かったのもあるだろうが、お姉ちゃんからのメールが無ければ周囲を注意深く観察することはなかっただろう。


 暗くなり始めて、パッと見た瞬間は気のせいだと思っていたのだけど。

 思わず目を擦ってしまう。


「あぁゲームだからって目を擦っちゃダメでしょうスノー」

「どうしたの? 何かあった?」


 けれど結果は変わらず。さっきまで居た人達が急に増えた。


〈急に人が増えました。それだけじゃなく大道芸をしている人も増えた気がします〉


 朝から所何処で芸を披露している人達が居たけれど、さっきまで居なかったはずの場所に初めから居た様に出現した。


 その人達を良く見る。

 しっかりと肉体がある様に見えるのに足や腕が数秒だけ透けて見える事がある。




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