【オンライン】269話:姉の登場とサーカス団
楽しそうに微笑む顔を見ると、どうしても良くない事を考えていそうな気がしてくる。
「ふふ、貴方がゆきちゃんのパートナーよね。うんうん、良いんじゃない」
僕の腕の中にいるシュネーをじ~っと観察すること数分。
「妹が急に二人に増えたみたいだけど、私は嬉しく思うわ。良かったらお姉ちゃんって呼んでも良いのよ。特別に許してあげるから」
「あ、姉(あね)さん?」
戸惑いながらもシュネーが上目遣いチラッと見てからすぐに顔を背けながら、気恥ずかしそうにして言うと、お姉ちゃんは蕩けた顔で悶えている。
「ゆきちゃんとはまた違ったタイプ、それでいて姿かたちは似てるんだから、最高ね」
「なに、出会い頭にシスコンを病発させてんだよ。現実に戻って来てくれ頼むから」
ティフォは関わりたくないが、無視して逃げだしたら更に厄介な事になりかねない考えて、イヤそうにツッコミを入れてお姉ちゃんを正気に戻す。
「ふぅ、失礼しました。私としたことが久しぶりの再会に思わず暴走を」
「その妙な色気を出して謝らないでほしいんだな。鳥肌が立って仕方ないんだな」
本性というか、中身を知っているガウとティフォはジト目でお姉ちゃんを見ながら、一定の距離を取りつつ、僕を隠す様に間に入ってくれる。
「えっと、シャープさんがどうして此処に居るんですかね?」
アズミルが話しの本筋を戻そうとしてくれている。彼女も見た目がちょっと変わっているお姉ちゃんの中身には、きっと気が付いているのだろう。
小鳥ちゃん辺りから僕の話も間接的に聞いている筈だ。
アズミル自身もお姉ちゃんには、あんまり関わりたくないという雰囲気が漏れ出しているんだけどね。
「あぁ~。それは秘密かな。守秘義務って言うのがあるからね」
人差し指を口元に当てて、軽くウィンクしてきた。
「ふむ、つまりはズィミウルギアに慣れる為の期間という感じでござるか?」
「えぇそうね。他のメンバーも好き勝手に遊んでるわよ。時期が来れば本来の姿でプレイできるんだけどね。今は特別にちょっとだけ姿を変えて貰ってるのよ。でもまぁ、親しい人や見る人がみれば、バレちゃうんだけどね」
僕等の反応を窺いながら、言える範囲の事を教えてくれる。
ミカさんは必死に記憶を辿って、なんとかお姉ちゃんの事を思い出そうとしているみたいだけど、残念ながら出てこない様だ。
「なんだろうこの喉まで来てるんだけど、そっから先に出てこない感じ。うぉ~もどかしいよ、皆は知ってるんだよね? 教えてくれても良くない」
どうしても思い出せないミカさんが救いを求めて僕等に縋って来るけれど、全員がミカさんから顔を背けて、ヒントも出さずに沈黙を貫き通した。
「あらあら、ちゃ~んと私の事を守ってくれるなんて嬉しくなっちゃう。本当はもっと近くでゆきちゃん達と遊びたいんだけど、流石にお仕事だから勝手は出来ないのよね」
〈そう言いながら、なんで僕に近付いてくるのかな?〉
ティフォとガウを盾にしつつ、クルクルと逃げ回る。
「もう、可愛がるくらい良いじゃない。まぁ、簡単に捕まらない所がまた可愛らしくって、どうしようもなく手に入れたくなっちゃうんだけど……ね」
獲物を狙う目で舐める様に見られて、背筋に寒気が走った。
「自分らはまだまだハロウィンを楽しみたいんで、この辺でおさらばしようかなって思うんです。シャープさんには申し訳ないですが、今日はこの辺で帰ります」
アズミルが矢継ぎ早に言うと、お姉ちゃんが少しだけ不満そうな顔を向ける。
「え~、せっかくの機会だし見回っていけば良いじゃない。退屈はさせないわよ」
「いやいや、お仕事なんでしょう。ボクは姉(あね)さんのお邪魔はしたくないかな」
〈そうそう暇な時間の時にでも連絡してよ〉
とりあえず、この場から逃げ出す為に、フレンドコードを教えて、テントを出よう。
「ふ~ん、まぁ仕方ないかな」
ほんの一瞬だけフレンドコードを交換する時に、スッと目が細められた瞬間。
小さく舌打ちが聞こえた。
この人絶対に案内するとか言って、テント内を連れまわすついでに僕の事を誰かに売り込もうとしていたに違いない。お姉ちゃんならそれくらいは絶対にやるだろう。
「こっちでは、ティフォナスちゃんね……貴方も中々よね~。ねぇ――」
皆で急いでテントから出ようとしていた時に、ティフォが最後にお姉ちゃんに捕まって、何かを耳打ちされていた。
首が取れそうな勢いで左右に首を振って、
「無理ムリ、絶対に無理ですから」
「やっぱり可愛い反応ね。私としては良い所までいくと思うんだけど。あ、そうだこの際だからゆきちゃんと一緒に売り出して見ない」
「ささ、行くでござるよ。ダメなんだな、耳を傾けたらドロドロと引きずり込まれるんだな」
タイプは全然違うけど、ガウのお姉ちゃんに似てるもんね。あしらい方をよく知っている。
お姉ちゃんはガウを睨みながら、むくれている。
それを無視して皆をテントの外へと押し出して、ニッコリと微笑ながら逃げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます