【オンライン】266話:サーカス団
朝昼晩とサーカステント周辺では色々なパフォーマンスが見れる様になっている。
ただし、基本的なジャグリング、ディアブロなんかの道具を使ったパフォーマンスが多い。夜になると、色んな光を放つモノを使って楽しませてくれる。
ゲームならではの魔法を使った演出なども少しだけ見れる。
炎の玉やシャボン玉を動物の形にして操り、楽しませてくれる。
「此処は凄いわね、上手い具合に賑わってるんじゃない?」
ミカさんが周期を観察しながら呟いた。
大き目の出店には鬼達が店番をしている所もあるけど、サーカス団の人達が上手く立ち回ってくれているようで、疎遠にされる事も無く楽しんでいるようだ。
大きな体で鉄板焼きをしている鬼のお店や、ケバブの様な肉の塊を炙り焼きにしている店なんかが人気で、並んでいる人が多く居る。
〈なんであんなに並んでるんだろう〉
他のお店にもチラホラとお客さんは居るけれど、並んでいる人の数が段違いだ。
『それはですね、鬼という種族は火に関する特殊スキルが多くありまして、彼等が作った肉料理の美味しさレベルが格段に上がるんですよ』
優しい声をしたピエロさんが説明をしてくれた。
「それであんなに並んでるのか、焼き鳥屋の方にも凄い列だな」
ティフォは食べたそうに鬼達の出店を見ているが、流石にあの列に並ぼうとは思わないみたいだ。サーカス団の人が手伝ってくれてはいるが、それでも捌き切れては居ない。
〈鬼達と村人達の間を取り持ってくれたみたいですね、ありがとうございます〉
『いえいえ、私共は楽しさを共に分かち合えればと、思っただけですから』
娯楽施設という事で、種族違いの蟠りや不平不満が解消されやすくなる効果があるらしい。
完璧に取り除ける訳ではないけれど、少しずつでも歩み寄ってくれるようになるだけでもかなり有難い効果だと思う。
サーカスの受付を探して歩いていると、すぐにチケット売り場っぽい小さなテントを見つけた。可愛らしい衣装を身にまとった女性が受付をしていた。
『あら、いらっしゃい。チケットは五千スィアですよ』
僕が受付の前まで行くと、子供を相手にするかのような声で説明してくれる。
カウンターが少し高くて、僕が背伸びしてから机に上半身を乗り上げないと話し辛い。
そんな僕を見かねてか、ティフォが代わりにフリーパス交換チケットを持ってくれる。
「このチケットを使いたいんですけど」
『あらコレは……あらあら、まぁ~。そうですか、ありがとうございます。確かに人数分のチケットがありますね。少々お待ちください』
カウンターの奥に消えた。
しばらく待っているとヒョコっと別の場所から受付のお姉さんが出て来た。
『こちら、期間中のフリーパスですので無くさないようご注意くださいね』
お姉さんの手には小箱が抱えられていて、その中にフリーパスのカードが人数分入っていた。デザインはサーカステントにハロウィン仕様のカボチャオバケが描かれている。二匹のモンスターっぽいカボチャのデフォルメキャラが妙に可愛い感じだ。
『公演は一日の内に二回です、お昼の12時と0時になります』
ゲーム時間で二回って事だろうな。約三十分単位で公演しているという事らしい。
〈あれ? 公演期間がずっとありますけど?〉
『はい? そうですが……何か問題がありましたか?』
〈ハロウィンの期間だけじゃないんですね〉
『あ~、それはですね。正確にはハロウィンまでですが、グランスコートの管理者様が続けてもよいという場合は継続してこの施設を維持する事が出来るんですよ』
なるほど、僕がどうするかで決まるのか。
『……何かとお役に立てると思いますよ』
〈売り込みですか? 考えておきますね〉
僕がそういうと受付のお姉さんが嬉しそうな顔をして、僕の両手を掴んできた。
『ふふ、是非に。私共事を知って下されば、手放したくなくなるかと』
娯楽施設は確かに必要っぽいし、手放したくはないな。こういう建物の維持コストがどれくらいかかるかは、後で調べて見ないとダメだけどね。
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