【オンライン】265話:ハロウィンイベント(14)




 帰り道の馬車の中ではスパイクとズナによる格付けが行われていた。


 周りの僕等からすると、じゃれているだけにしか見えない。

 だけど、この子達にとっては凄く大事な事なんだろう。お互いに牽制をしつつも決してティフォの膝元からは離れず、しっかりと自分の場所はキープしている。


 ただ、喧嘩が激しくなるとティフォが叱るのでそれ以上は動けなくなった感じだった。


「端っこの奥まった場所だよね。あっ、あれ美味しそうだよ」


〈シュネー、出店が気になるのは分かるけど、今はイベントの方が先だよ〉


 良い匂いだったり、楽しそうな出し物の方に気を取られてしまっている。


「いいか、お前ら離れず固まって動けよ」


「今度は後れを取らないよう気を付けるでござるが……ティフォナ妃はただ怖いだけであろう。。前にも言ったでござるが、くっ付かれ過ぎると動きずらいんだな」


 ガウの背中に隠れて、僕とシュネーを強めに抱きしめてくるから更に歩き辛い。


「あった。お店も一緒だし立っている人も同じっぽいよ」


「こうしてみると、少しだけ透けてるんだね。ロウソクの灯りで照らされているから、ハッキリと見えているみたいだけど」


 足元の影が濃くって気にならなかった。


 しっかりと観察してみると、確かにミカさんが言った通りで透けて見える箇所がある。


『おやおや、もうちょっと時間が掛かると思っていたのですけれどね』


 想定外と驚きの顔を見せてはいたが、何処か嬉しそうに笑っている。


〈きちんと全員に渡して来ましたよ〉


『それはそれは。本当にありがとうございました』


 紳士の様にしっかりとしたお辞儀で頭を下げている。


「其々の人達から色々なアイテムを貰って、宝箱を開けた訳だけど。良く解らないチケットがあるのよ。貴方はコレの事をしってるかしら?」


 アズミルが警戒しつつ、チケットを取り出して見せる。


『ふむ、コレは……サーカスの無料チケットです。この期間中に何時でも入れるフリーパスと交換できるチケットですね。交換場所はサーカステントの入り口にある受付から貰える筈ですよ。良いもんが入っていたようで何よりです』


「中身は知らなかったのでござるか?」


『はい、知りません。迷えるモノを救ってくれそうな人を導く事が仕事ですので。それ以外の事は知り得ません。それなりに難しい問題だったのですが、ありがとうございました』


 コレってイベントの殆どをつぎ込んで建てたサーカス団が来なかったらどうするんだろうか、もしかして、サーカス団を呼ばなかったら、この手のアイテムはドロップしなかったのかな。それだったら、用意していて良かったと思えるね。


『本来なら5千くらいの費用が一回毎に掛かりますが、そちらのチケットで交換した特別なフリーパスでしたら、テント内の色々な場所へ無条件で入れますよ』


〈それは、スタッフ専用のエリアも見て回って良いってことですか?〉


『はい、問題ないと思いますよ』


 アイテムも色々と貰えたし、イベントクエストって事で普通よりも良いアイテムが手に入って皆で楽しめたのに、更に何かお楽しみがあるのか、クリアー特典って事かな。


 イベントクエスト完了という表記が、一瞬だけ視界の端っこに見えた。


『またすぐにお会いできると思いますが、それでは私は失礼します』


 そう意味深な事をいって、今度はスゥーっと目の前で消えていった。


 消える直前に僕達の方を向いて、何かを口遊んでいたけれど、声は聞こえなかった。





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