【オンライン】264話:ハロウィンイベント(13)




 地面にペタッと腰を下ろして落ち込んでしまっているけれど、慰めてくれている二匹を優しく撫でながら、満更でもなさそうに癒されている様子だ。


 二又猫は《癒しのオーラ》を出している時は白かったけど、普段は黒い色の毛並みをしている。感情により黒か白に色が変わる不思議な猫らしい。


「でもさ、この猫を見つけても肝心のアイテムが手に入ってないよ」


「それよりも、猫からどうやって依頼を受けるのよ? 言葉だって喋れるわけじゃないのにイベントアイテムを貰えるの?」


 確かに普通ならそうだろうけど、テイムされているモンスターはかなり知識が高いきがするから大丈夫なんじゃないだろうか、ちゃんと飼い主の思考を理解して動いてる。


「なぁお前さ、何か持ってたりしないか?」

「にゃ!」


 急に二又猫が飛び出して、ティフォについて来てという感じで、進んだ先で振り返りクルクルとその場で回っている。


 皆で近付くと、また少しだけ先に進んで先導してくれている。


 何度か繰り返していると、渓谷したの川沿いに出てしまう。そこから少しだけ川上へと歩いていくと小さい滝がある泉まで連れて来られた。


 滝の横へ連れて行かれて、そこの壁をカリカリと猫が引っ搔くと小さな部品が転がる。


「おぉ、コレだよ。ありがとうな」


〈ねぇ、早く名前を決めてあげなよ〉


 猫なで声で撫でているティフォがしばらく悩んで、ようやく決めた様に頷く。


「ズナって名前はどうかな?」


 ティフォは猫にそう呼んで良いか聞いてみると、返事をするように一鳴きして答える。嬉しそうに目を細めて、ティフォの手にほっぺを擦り付ける。匂いを付けて自分のモノだとアピールするように体も擦り付けようとするけれど、スパイクに阻止されてしまう。


「名前も決まったし、早く箱を開けてみようよ」

「さんせ~、私もシュネーちゃんの意見に同意です。早く見たい」


 アズミルとシュネーが我慢できなくなって騒ぎ出した。


〈はいはい、ティフォ、早くそのギアを頂戴〉


「悪い悪い・ほれ」


 手渡された部品を付け、鍵をゆっくりと開けていく。


 カチカチと周りのギアが嚙み合っていき、カシャン――と音を鳴らして四角い箱だった物が、次第に大きくなっていった。


〈おもい……〉


 急激に重量が増したせいで、手から落としてしまう。


「よっと、大丈夫だった?」


 足に当たらない様にミカさんがすぐに引っ張って抱き抱えてくれた。


〈あ、ありがとうございます〉


「なんのなんの、これぐらいはお安い御用だよ」

「段々と宝箱の形になっていくでござるな」


 眩しいという訳じゃないけど、光の粒子が集まって如何にも大事なモノが入っていそうな大きな宝箱になっていく。宝石の様な装飾が施された、豪勢なモノだった。


「トラップなんて付いてはないでござろうが、念のために拙者が開けるでござるよ」


 ガウは皆に確認を取ってから、ゆっくりと宝箱を開く。


「ふむ、どうやら其々のジョブに関するモノが一つずつ入っている感じでござるな」


 ガウには盾。

 アズミルとティフォには、特殊な効果の付いたアクセサリー。

 ミカさんには錬金術の高級作業台になる材料。

 シュネーは楽器で、僕には白紙の設計図というアイテム。


〈それで、最後に謎のチケット人数分……なんのチケットだろう〉


「見た事のないチケットだね」

「ミカっちが知らないんじゃあ誰も分かんないじゃん」


 このパーティーで一番物知りなミカさんがわからないのなら、僕等ではお手上げだ。


〈イベントクエストが発生した場所に、もう一度だけ行ってみる〉


「それも良いでござるな」

「もしかしたら、あの謎の出店が復活してるかもしれないしね」

「今度はしっかりスノーちゃんを守るからね」



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