【オンライン】261話:ハロウィンイベント(10)




 幽霊さんの攻撃とシュネーの追撃で一気に半分以下まで体力が下がり、シュネーがぶつけた炎の魔石と聖水によって継続ダメージが入り、幽霊さんの技で大きく能力値が減少した御蔭で、ガウ達三人でも十分に戦えるレベルになった。


 後は僕とシュネーでアズミルの援護に入って、雑魚敵が彼女に追い付かない様に気を付けつつ、トラップで足止めをして数を減らしていく。


『次は周りの雑魚を一掃するかい』


 息切れしていた幽霊さんがよろけながらも、立ち上がってもう一度しっかりと弓を構え。

 矢の先が光り出していく、どんどんと力をチャージしていくのが分かる。


〈おねがいします〉


『《連弓弾》……はぁ~、しんどい』


 無数の矢が雨の様に骸骨兵に向かって飛んでいく。

 それと同時に幽霊さんが大の字に後ろへと倒れていった。


「有り難う御座います。これなら皆で勝てるよ! 皆で一気に攻め崩すよ」


 一気に数が減って、アズミル達が反撃の号令を掛ける。


「チルとフールはそのまま交差して、キュスはスピードを上げて突っ切って」


 シュネーが上から逃げ回っている子達に指示を飛ばし、上手く敵を一ヶ所に固める。


 後ろから追ってきていた骸骨兵達がお互いにぶつかって一ヶ所に山の様に固まると、間髪入れずにアズミルが総攻撃を仕掛けていく。


 フールとキュスは範囲魔法や技で、アズミルとチルは止めの連携必殺技を叩き込む。


〈ふぅ、終わったね〉


『やるもんだね。良いチームワークだよ』


 僕等が終わることろ同じくらいに、ティフォ達もボスを倒していた。


「だぁ~、かなり疲れたぜ」


 ティフォがその場でへたり込んで、息を整えている。


 ミカさんもガウもかなり消耗しているようで、汗を拭いながら、両膝に手を置いて肩を激しく上下させては、大きく息を吸い込んで一息ついている。


 落ち着くまでしばらく休み、全員の体力が全快してからゆっくりと部屋の奥にあった大きな宝箱のある部屋へと向かう。


〈鍵が掛かってるね〉


『ふふん、ここはアタシに任せなよ』


 宝箱の前にしゃがむと、カチカチと鍵穴を弄繰り回す。

 するとすぐにカチャっと鍵の開く音が聞こえた。


「流石はトレジャーハンターなんだな」


『これぐらいは出来ないとね。トラップ解除から鍵開けは基礎中の基礎だからね』


 宝箱の中には大きな袋にお金が沢山と、祠のクリスタル。そして小さな歯車が入っていた。


「よかった、これなら普通に使えそうだよ」


 お金は皆で分け合って、最後に宝箱の中に何もないかと確認すると。

 端っこの方に何かあるのを見つけて引っ張り出す。


〈ドックタグ?〉

『……やっぱり、此処にあったかい。悪いがそいつはアタシのでね』


 ギュッと大事そうにドックタグを持ち上げて、胸元へと持っていく。


「二つ? それもお姉さんのなの?」


 シュネーが興味深そうにドックタグを覗き込みながら聞く。


『あぁ、こいつは旦那の名前が書いてあるんだ。これでアイツの元に行けそうだよ』


 幽霊さんの目じりに少しだけ涙が見えた。


「良かったですね。迷わずにちゃんと成仏してくださいよ」


 ティフォは茶化すように言いながらも、名残惜しそうに横目で幽霊さんを見ていた。


「少しの間でしたが、ありがとうございました」


「そなたのトレジャーハンターとしての技量を少しは学びたかったでござるが、成仏が出来るならそっちのほうが良いでござるな。強かったでござるよ。貴方が居なければ正直、負けていたでござろう」


『はは、そんな事は無いだろう。きっと何とか切り抜けてるさ。おっと、逝く前に一つキミらにプレゼントだ。私が居た場所があったろう、あそこを調べて見な。良いもんがあるよ』


 ポンポンと僕の頭を撫でて、幽霊さんは優しく笑いながら「ありがとう」と言ってスーッと消えていってしまった。姿が消える瞬間に光が天から差し込んだように見えた。




 帰りに祠の近くを皆で探してみる。


「彼女が言っていた場所は此処でござるよな」

〈コレじゃないかな?〉


 近くにあった巨大な木の根元に隠す様に木の枝や葉で覆われた小箱があった。

 中には人数分の綺麗なビー玉の様なピンク色の水晶があった。


「コレってスキル水晶じゃない⁉」


「スキル水晶ってなにさ?」


「あ~っと、このゲームは自分で色々と作れる能力があるって謳い文句があるでござろう。ただ初めから簡単に作れるわけじゃなくって、こういう特殊アイテムが必要なんだな」


 必要なのは【空のスキル水晶】という特殊アイテムで、コレの事らしい。

 とりあえず、人数分という事で、一人に一つ配って大事にインベントリに保管する。




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