【オンライン】260話:ハロウィンイベント(9)
聖水を蒸発させて、ゆっくりと空気を送り込んでいくこと五分くらいだろうか、段々と変化が出始めて来たのだ。
幽霊さんのおかげで奥の空間には逃げ道はなく、空気も抜けていかないという事は把握済みで、僕は自分のマップを逐一確認していたら、清められた空間という表記が出始めた。
そして骸骨兵達も次第に骨が軋むように動きが悪くなっていき、その場で崩れ落ちる骸骨兵がチラホラと出始めた。
あまりの様子に偉そうに座っていた魔導士骸骨が立ち上がって、周囲を警戒し始める。
『なんだ、どうしたというのだ⁉』
〈……骸骨が喋ったよ!〉
「どうやって喋ってるんだろうね」
僕とシュネーがそんな事に驚いていると、ティフォとガウから呆れのため息が聞こえてきた。アズミルやミカさんは我慢しているようだけど、僕達の様子に肩を揺らして笑うのを堪えているのが分かった。
「マナって不思議パワーで喋ってんだよ、きっとな。追及してやるなよ」
「この世界は不思議が一杯なんだな」
〈なるほど、風の魔石でも詰まっているのか、骨にそもそもそう言った力が宿ってる?〉
「あ~、それなら喋れそうなだね」
なんか知らないけど、皆がそういう結論に行きつくのかという感じで、呆れとも驚きとも取れる様な顔で僕等を見てくる。
『それよりも、早く行こうじゃあないか。この空間はアタシにとって心地良過ぎてさ、ずっといると成仏をしちまいそうになるよ』
その言葉に一人を除いて僕達は幽霊さんに謝り、突入の準備を始める。
ティフォだけはすっごく小さい声で「成仏してくれ」と言っていた。
『何者だ! 出て来い』
「流石にレイドボスだけあってこういった小細工じゃあ能力減少は微量だな」
「フール!《シャイン》キュスは《ライトレイン》で皆を援護しながら戦って。チルは私と雑魚処理に回るよ、出来るだけマラソンしながら攻撃は最低限に抑えるから」
アライグマのチルが辺りを素早く駆け回って雑魚敵のターゲットを取っていく。
清められた空間の御蔭か、骸骨兵達の動きは凄く鈍重だ。
チルの動きに翻弄されて転ぶ者達が多く、アズミルは距離を取って戦う事が出来ている。
『何をしておるのだ! くそぉ、貴様らは一体何をしたというのだ⁉』
魔法を演唱して氷の礫をアズミルに放つが、それをガウが盾で叩き落とす。
「お主の相手は我等でござるよ」
『次から次に、下等生物共が!』
「スパイク《ラッシュスパイク》」
魔導士骸骨に向かって飛び上がり、体を丸めてトゲを次々に打ち出していく。
『くそぉ! お前達、ワレを守らぬか』
足止めくらいだったら出来るかな。
え~っと、大体の位置は敵マーカーの手前辺りで、その部分に周りにある石をかき集める。
〈シュネー、小さいゴーレムを作って〉
「え? そんなの作っても何の役にも立たなくない?」
〈大丈夫、骸骨兵の足元に向かわせて足元を不安定にさせたり、足の速いヤツには転ばせる感じで石を投げるだけで良いから〉
僕の提案にシュネーも悪戯っ子の顔になって、「いいね~。やろうやろう」と言ってくれる。随分と乗り気だけど、コレって良いのかな。シュネーに良くない事を教えているみたいで、なんだがすっごい気が引けるんだけど。
そう言っている間にも、アズミルの逃げ道が徐々に塞がれていっている。
知識量は低いといっても、統率者が居る分で補って上手く囲まれているようだ。
「オーケー。スノー何時でも行けるよ」
〈よし! アズミル、右に逃げて!〉
「ほぇ? わ、わかった」
〈シュネー! 手前の敵に投擲。次に三体後ろ右のヤツ〉
「くらえ~、ほれほれ」
動きは遅いけど、そこはアズミルが逃げてくれていた御蔭で上手く誘導出来ている。速度の分は、威力に回し、ピッチングマシンみたいに腕を回して石を剛速球で投げつける。
ボーリングのピンみたいに手前の骸骨兵が倒れ、後ろが続々と転んでいく。
「次行くよ~」
〈次は左後ろに飛び退いて逃げて!〉
「りょ~かいっ‼」
掛け声とタイミングを合わせて飛び退いた所に、シュネーが石を投げ込む。
聖水の御蔭て脆くなっているのか、足が吹っ飛んで巻き込みながら多くの骸骨兵を転ばしてく。そこを狙いすましたかのように、アズミルのフールが追撃を加えていく。
『やるもんだね~、どれ、アタシも手伝おうかね』
〈え? 幽霊さんも手伝ってくれるんですか⁉〉
どうやって攻撃する気なんだろう。
『こう見えても、それなりに名の知れたトレジャーハンターだったんだ、こんな小さい子達が戦ってて、お願いしたアタシが戦わない訳にはいかないだろう』
大きな弓を構えて、力を溜める様に矢の先に魔力が宿っていく。
『このぉ! 邪魔だ⁉ ワレの楽園に下等生物が入り込んだだけでも万死にあたいする』
「半分はゴースト系で物理が通りにくいんだな」
連打で飛んでくる魔法を叩き落としては、隙を見てはガウは体を翻して避けて逃げる。
『えぇい! 鬱陶しい⁉』
「拙者にばかり気を向けすぎでござるよ」
ニヤっと笑ったガウに気付いて、他の二人を見失った魔導士骸骨は周囲を見回してしまう。その隙にガウが存在をアピールするように大楯を前面に押し出して突進してくる。
後ろに下がった所をミカさんから追撃が飛んできて、一番に警戒していた聖水をぶつけられて、全身に痛みが走ったように転げまわる。
「隙だらけだよ」
『ぐぁ~⁉ くそぉ、くそがぁ!』
転がった所をティフォが待ってましたと。スパイクの技で追い打ちをかける。
「聖水を当てるとかなりのダメージを出せるんだな」
「はぁ、こういう時にアタッカーが居ないのが悔やまれるんだな」
かなり良い感じの連携をしても減らせたダメージは半分も減っていない。
〈それなら大丈夫そうだよ~〉
僕の声に振り返ったティフォが少しだけ驚いた顔をしていた。
『準備出来たよ、何時でもぶっ放せるよ』
ギギッと限界まで弦を引く音が聞こえてきた。
「ガウっ! 相手を少しだけ押し出してよろけさせたら、上に飛べ」
「御意に⁉ 《シールドバッシュ》チェイン《ダンプアクション》」
盾で敵を押し倒してから、地面に押し付ける様にしてその力を利用して、真上に体を打ち上げる様にして退避する。
〈幽霊さん、発射です!〉
『《邪龍弓弾》、長年の怨みだ、じっくりと味わいな』
弓がドリルの様に回転し、その後を九つの魔弾が一緒になって飛んでいく。
無防備になっていた魔導士骸骨の急所にクリーンヒットして、一気に敵の体力を削る。
『下等生物、ごと、きが……』
「その見下した相手に負けたんだよ、キミはさ」
聖水と炎の魔石を一直線に魔導士骸骨へと、シュネーがぶん投げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます