【オンライン】259話:ハロウィンイベント(8)




 洞窟の中に入ると大きなネズミと骸骨の魔物がウロウロしていた。


『あのホネ共が祠のクリスタルを持って行った奴らだ。気を付けろよ』


「なんだ、幽霊じゃあないなら問題ないな」


 さっきまでガウ背中にくっ付いて離れなかったティフォだが、中に居た骸骨兵を見て震えも治まり、ケロッとした様子でスパイクと一緒になって骸骨兵に喧嘩を売りに行った。


「物理攻撃が効くお前らなんか怖くないんだよ。スパイクっ!《ニードルラッシュ》チェイン《岩砕断》。脆いホネ共に要は無いんだ、さっさとこの依頼を終わらせるぞ」


『なぁ、アタシの存在はそんなに彼女を追い詰めたのだろうか』

「気にしちゃダメだんだな。アレは半分は暴走でござるよ」

「そうそう、ティフォナんが幽霊が駄目ってだけで、慣れればいつも通りに戻るからさ」


〈恥ずかしがってるだけで、八つ当たりの対象が彼等魔物だっただけ、気にするだけ無駄〉

「スノーって偶にキツイよね」


 せっかく幽霊さんを気遣っているのに、なんて事を言うんだよ。シュネーの一言で僕が少しだけ傷ついたんだけど、どうしてくれる。


 ティフォの暴走と、皆の連携でどんどん奥まで進んで行ける。ゲームを始めた当初と違ってティフォの戦い方も随分と様になってきている。


「こういう狭い通路だと僕等って役立たずだね」


〈そうだね、落とし穴なんて使ったら一定時間は道が使えないし、下手したら自分達の退路まで潰しかねないもん〉


 そもそも地盤が固い場所では落とし穴は作れない。こういう通路でも使えるトラップも考えないとダメだな。いつも開けた場所で戦える訳じゃあないし、手札を色々と準備しておかないと、肝心な時に何も出来ずに負けが決まってしまう。


『そろそろ奥地だ、多分だけどこの先に死霊術師が居るはずだ』


 随分と奥まできたけど、あまり知識のある敵じゃあなかったのか特に罠らしいモノはなかった。ただホネの魔物と巨大なネズミが多く居ただけだ。


「流石に数が多いな。どうしよう」


 奥まった場所には広い空間があり、そこを拠点にしているようだった。


 木箱を椅子の代わりにして偉そうに座っている魔導士の服を着ている骸骨が一体。その周りを守る様に骸骨兵がうじゃうじゃしている。


「数で押されてあっという間にやられちゃうんだな」


「こんな事なら聖水をもっと用意してくるんだったわね。防御力無視で直接相手にダメージを負わせられるけど、ボスに使いたいわよね」


 ミカさんが数本の瓶に入っている聖水を取り出した。


「コレだけじゃあ数が足りないよ」

「聖魔法を使えるっていってもね、数が多すぎて息切れしちゃってからやられる未来しか見えないね」


 ざっと見ただけでも三十体はいるだろう。対してこっちには聖水が十個だ。

 皆は戻って仲間を募るかなどの話し合いを始めている。


 ただ、僕はちょっと違う考えをしていた。ちょっとした好奇心というか、試してみたい事が出来たのだ。聖水というアイテムはアンデットやゴースト系の魔物に効果的としか説明欄には書かれていない。


 書いてあるのは曖昧で僕には良く解らない。


 効果的というが、何がどう効果的なんだろう。そのまま振りかければ相手にダメージを与えるとミカさんが言っていた。それなら効果的ではなくダメージを与えるアイテムになる。そしてそれが固定数値なら、アイテムの説明にはその事を書くはずだろう。


 それじゃあ効果的という事は、別の効能もあるのではないだろうか。例えば弱体化といった効果があるなら、それは振りかけなければ効果はないのか? 液体を直接ぶつけなければ効果は全くないのか? それが知りたくなってしまった。


 幸い、此処にはアズミルのフールが居るし、モモンガのキュスも確か風系の魔法が使えたはずだ。空気の流れはある程度なら操れるだろう。


 それに、失敗して逃げるにしても落とし穴の罠で時間は稼げる。


 もう考え付いたら行動に起こしたくなってきてしまった。


 ミカさんの袖を掴んで引っ張る。


〈ミカさん、この聖水を蒸気にして部屋中に蔓延させたらどうなりますか?効果は無いんですか?やっぱり投げるだけが聖水の使い方ですかね〉


「え? えと、ちょっと待って。なに⁉ どういうこと?」


〈でも待てよ、洞窟内で炎は不味いな……空気が無くなったら? 鉱山だし下手したら危ないかもしれない、か…………火の魔石で水の中で沸騰させれば出来なくもないかな〉


「ちょっと~、今度はスノーちゃんが暴走し始めたよ~」


「おいシュネー、お前止めろよ」

「ティフォっち、無理なの分かってボクに振らないでよね」


「しかし、面白いかもしれないんだな。清められた空間になれば骨の兵達はモノの数にならないんだな。効果があるかどうかは試した事がないから拙者は知らないけど」


「私だって知らないわよ」


『随分と面白い子達だね。ファーマーだし子供だったから戦えないと決めつけていた自分が恥ずかしくなるよ。頼もしいお仲間じゃあないかい』


 ミカさんの錬金セットの中にある鍋を貸してもらい、

 聖水を注ぎこんで炎の魔石で一気に蒸発させていく。



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