【オンライン】258話:ハロウィンイベント(7)




 皆で祠を綺麗にして、周りの設備にも少しばかり手を加える。


 シュネーはパニアの力を借りて簡単な小屋を建てて、騎獣達が休める様に屋根付きの休憩所を作ってくれた。僕は騎獣達の力を借りて、大きな岩などを運び使いやすい場所を作る。


「ふぅ、こんなもんで良いだろう」

「そうでござるな、問題はこの祠が使えるかという事でござるが」

「中にクリスタルはなさそうよね」


 エーコーさんの泉では外から見ても分かるくらいに、クリスタルの光が漏れていたけれど、この祠は中で何かが光っている様子が全くない。


 徐に中を確認してみると、何にも入っていない。


「スノーちゃん、こういうのは普通は開けちゃあ駄目だからね」


 子供を叱るみたいに、ミカさんから怒られてしまった。


〈ごめんなさい。でも、何も入ってないのは何でだろうね〉


「モンスターにでも取られちゃったんじゃないの?」


「あのなシュネー、忘れてるかもしれないが本来なら結界が発動していて魔物は近寄ってこれないんだぞ。特別な理由でもない限りな」


 僕以外の皆がティフォの言葉に頷いていた。


〈でもさ、前のイベントではエーコーさんの泉にモンスター達が攻め入ってたけど?〉


 あの時は僕等が駆け付けて、色々と手助けをしたから何事もなく終わったけども、あのまま放置していたら、エーコーさんの泉は無くなっていたかもしれない。


「祠の力もさ、誰も管理しなくなった状態で放置されてて、あんなに荒れてたんだよ。本来の効果なんて無くなってたんじゃない?」


 僕とシュネーの言葉に反論できず、皆は確かにという感じで考え込んでしまった。


「それなら、魔物にクリスタルを持っていかれても不思議じゃあなさそうね」


「拙者も何度か来たことがあるのに気付かない程に荒れ果てていたみたいでござるからな、あの写真がなかったらこっち側には見向きもしなかったでござるしな」


 落ち葉や枝のせいで隠れてしまっていたから、洞窟から出てきても気付かないだろう。


『君達か、この祠を綺麗にしてくれたのは』


 薄い人影……ではなく、幽霊が現れた。


 カウボーイハットや少しボロボロの革ジャン。それに短剣や探索装備のリュック。動きやすいズボンに安全ブーツと装備万端な格好をしているワイルドな女性だった。


 ブロンドヘアーに猫目の綺麗な人だ。


「ティフォナ妃、頼むからガッシリ掴まないでほしいんだな」


 ティフォがガウの背中に隠れてガクブルと震えている。


 それもで気になって覗く姿が何とも可愛らしい女の子に見える。ホラー映画が嫌いだと言いながらも、気になって見てしまう感じである。


 実際、ティフォは何かの宣伝映像が流れたら気になって僕達を連れて見に行くんだけどね。怖い怖いと泣きながらも、最後まで見ないと逆に怖くなると何度突き合わされたことか。


 そんなティフォの姿を見てか、アズミルが嬉しそうにしている。


『すまない、驚かせるつもりはなかったんだ』


〈気にしないでください、彼女はオバケが苦手なだけなので〉


「彼女じゃねぇ。俺は男だ……」


 そんな姿を見て男だとは看破出来る人は、ケリアさんみたいな人だけだと思うよ。パッと見ただけなら、完璧に幽霊を怖がって隠れてる少女だから。


「アナタは此処にあったクリスタルの事を知ってるのかしら?」


『あぁ、知っている。この先にある洞窟に住み着いた魔物に持っていかれたのだ』


〈お姉さんはどうして此処に居るんです?〉


『己の未熟さが招いたミスでちょっとね。まぁ過去を悔いてずっと此処に居る訳じゃあないよ。心残りは魔物に持っていかれた道具があって、それを取り返したくてね。ちなみに、此処にあったクリスタルも同じ場所にある筈だよ。同じ奴が持って行ったからね』


 乾いた笑いをしながらも、お姉さんは真剣な顔になって僕等に頭を下げる。


『お願いだ、取り返してはもらえないだろうか』


〈それは構わないんだけどさ、お姉さんってコレ知ってる?〉


 名前の削れたドックタグをお姉さんに見せてみた。


『あぁそりゃアタシのだよ。っていうか、引き受けてくれるのかい⁉ ありがとう』


 屈託のない笑顔で僕の手を握ろうとして、失敗している。

 そりゃあ幽霊なんだからすり抜けるだろう。


「せっかく綺麗にしたし、此処へのアクセスも簡単にしときたいしね」

「そうですね、此処に来れれば色々と楽になりそうです」


 ミカさんもアズミルもやる気満々のようだ。


「相手がモンスターなら、問題ないな」

「ゴースト系は任せるんだな。ティフォナ妃に今回の活躍は期待してないでござるよ」


 ガウは呆れた顔でティフォを見て言うが、肝心のティフォには言葉が届いていない。

 早くこの場所から離れたくて仕方がないんだろう。




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