【オンライン】257話:ハロウィンイベント(6)
ガラガラと音を鳴らしながら馬車が進む。
「よくまぁこんな方法を思いついたな」
「良いでしょう。移動にしたってやっぱり乗り物っているのは必要なのよ」
「一生懸命に考えたんだよ。ナイスなアイディアだと思わない」
「確かに楽ちんだね」
「しかし、タイヤ自体に工夫をするとは思わなかったでござるよ、コレなら確かに鉱山まで楽々と行けるでござるな」
皆は後ろに席に座って楽しそうに会話している。
〈僕は神経を使うんですけどね〉
「ボクなんてパニアの代理でこの馬車にパスを繋げてるんだけど。結構に疲れるよ」
シュネーには【シンクロ】なるスキルを取得していて、それを使えば僕の従者となったモンスター達から力を借りられるのだ。
つまり、パニアが町でゴーレム達を指揮しながら、その力の半分をシュネーが使う事が出来るようになる。スキルを使っている間は移動が出来ないし、対象の物体に触れていないと効果は反映されない、などの使用条件が色々とある。
まぁ、それでもパニアに町を任せて、こうして冒険に出かけられるメリットに比べれば、些細な事だと思えるけど、残念な事に僕等はかなり疲れるのだよ。
車輪の外側には石を撒いている(戦車のキャタピラみたいな感じ)ので、かなり重くなっているから、馬車を引いてくれている馬の魔物であるアゴロ族達に逐一気を使ってあげている。中央都市からお借りした馬だから、余計に心配だ。
僕にかなり懐いてくれているから、尚更に可愛くて構ってしまう。
原理だが、馬達にはランニングマシンの様な台に乗ってもらい、車輪とキャタピラを動かす原動力として走ってもらっている。鉄の混じったタイルが地面の凹凸によって形を変えてスパイクの様な役割をなして進む。僕とシュネー(パニア)がいて初めて出来る芸当だ。
「そろそろ着くでござるぞ」
「やっぱり早いわね。本当だったらもっと掛かるのに」
こっちまで来たことがあるアズミルやガウ達にとっては信じられないくらい早いのだろう。
僕やティフォはこっち側には来たことがないから良く解らない。
「ほぼ真っすぐに進めてるからね、此処の道って穴ぼことか空いてるから真っすぐに進むのが難しいのよね。騎獣なら早く進めるんだけどね」
下手するとクレーターみたいな穴に落っこちて這い上がってこないといけない、そんな場所があったりするのだけれど、僕等の馬車は関係なく進んでいける。
厄介なのが草原の草が生い茂っていると穴が見えなかったりして危ない事だろう。
少し急な坂道を登りきると、その先に見えたのは鉱山だった。
ヴォルマインの様な殺風景な岩肌が露出した山々ではなく、緑の残る山に所々に洞窟の洞穴が見え隠れしている。
「モンスターの住処にもなっているでござるから、下手に洞窟に入るのはダメでござるぞ」
ガウは僕とシュネーを見ながら注意してきた。
「やだな~、そこまで好奇心旺盛じゃないよ。ちゃ~んと分かってるって」
そう言いながらシュネーの目が泳いでいるのを僕は見た。いや、全員が見ただろう。
まぁ、確かにちょっと冒険気分で入っていこうとか思っていたのは僕もだけどね。
「この辺にあるかな、少し岩肌が見える洞窟に、周りに木々が生い茂ってる場所って」
アズミルがフクロウのフールを飛ばして、鉱山の周辺を観察する。
「露店をよく開いてる三人組に聞いたんだけど……もしかしたら、少しだけ道を逸れた南側にあるかもってさ。少し岩肌が露出してるんだし、すぐに見つかるんじゃないかしら」
馬車で行ける所まで進むと、廃れた祠が見えてきた。
「あった、あったよ。多分だけど此処から見れば写真と一緒な感じになるかも」
「こんなとこに祠があったなんて知らなかったでござるよ」
「落ち葉とか、木の枝に隠れて見えなかったのね。私だって初めてみるわよ」
とにかく皆で祠を使える様に周りを整備して、綺麗な状態にしてあげる。
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