【オンライン】254話:ハロウィンイベント(3)




 次に向かったのはヴォルマイン側に続く中央都市の北街だ。


 お店の階段付近に座っている人を探してみると、道行く人々をぼーっと眺めている中年の男の人が居た、まだ開いていない飲み屋の階段に腰かけている。


 景色的にもあの人で間違いないだろう。並ぶ屋根の色や煙突などがピッタリと写真の位置と同じで、行き交う人々も同じアングルに納まる。


「少し聞きたい事があるのでござるが――」

「あぁ、別に構わねぇよ。なんだ?」


 ガウはポケットから欠けたコインを取り出して中年に見せる。


「拙者はガウでござる。このコインに見覚えは?」


「まった懐かしいモンを……何処で手に入れたかは知らねぇがな、そいつについて語る事なんてねぇぞ」


「それは良いでござるよ。コレを持ち主に返して欲しいと頼まれたんだな」

「……そうかい。じゃあ有難く貰っとくぜ」


 おじさんはコインの欠けた部分を優しい目で見つめ、指先で優しく撫でている。


 これ以上の会話はないと思い、その場を離れようとした時におじさんが「ちょっと待て」と言い、握った拳から親指で何かをガウの方へと弾き飛ばして渡す。


 持ち前の反射神経で飛ばされたモノをキャッチする。


「持ってけ、コイツを届けてくれた礼だ」

「コレは……歯車でござるな」


 古びた歯車が一つだけ渡された。


「何の歯車なの?」


 シュネーが聞くと、おじさんは顔を横に振って肩を落として見せる。


「知らねぇ、コイツを渡したヤツに貰ったんだ。まぁ、昔でい言うお守りみたいなもんだな」


 懐かしむ様にコインを空に掲げて、日に当てる様にして見ている。

 おじさんはそれ以上は何も言わずに、その場から去っていってしまった。


〈また謎のアイテムが増えたね〉

「今度は歯車か」


 ティフォと一緒になってガウから渡された歯車をクルクルと手の中で回して見る。


「鍵に歯車と、この調子だと其々に一つアイテムがあるって事かしらね」

「そうっぽいね、次の場所に向かってみよう」


 折れた宝剣はフォレストヒル方面。

 西街の貴族街に騎士がよく素振りをしているという丘公園に向かう。

 泉の近くに、良い芝の広場がある。そこで一人の男性か剣の訓練をしているという。

 僕等が向かうと、すぐに此方に気付いて不思議そうに見てくる。


「私に何か用が?」

「えっと、こちらの宝剣に見覚えってあったりしませんか?」


 ティフォがおっかなびくっくり近付いて、折れた宝剣を見せた。


 此処からの反応は前回、前々回同様に驚きながら少しの昔話を話してくれた後に、嬉しそうに宝剣を抱いて受け取ってくれた。


「父上は無くしたと言っていたが、やはり嘘だったんだね。ありがとう、私は迷わずに前に進める。後で我が家に来てくれ、渡したいモノがある。我が家は緑の屋根が此処から見るだろう、あの屋敷に居るから。私は一足先に帰ってこの剣を父上に渡してくる」


 そう言って嬉しそうに駆け出して行ってしまった。


「今回はすぐにくれなかったね」


 取りに行かなきゃダメかなって顔で僕の方を見てくる。


〈シュネー、そんな面倒そうな顔で言わないの〉


「まぁ気持ちは解るがな、貴族の礼儀なんぞ俺も知らねぇし、堅苦しそうだもんな~」


 いや、どうだろうね。息子があれだけ僕等に気さくに会話をしてくれるなら大丈夫かもしれない。あんまり、冒険者や渡り人に偏見とか下に見てくるとかはしなさそうだ。


「とりあえず、行きましょうよ。さっさと済ませて、他のアイテムも渡したしね」


 ミカさんの言葉に皆で頷いて、青年が向かった先へと皆で向かう。


 騎士の家系らしく、豪胆な主人で言っては何だがかなりガサツな感じの人だった。奥さんが時々に咳払いで制していた所を何度も見た。


「お礼と言っては何だがな、コイツを持って行ってくれ」


 不思議な箱を執事さんから渡された。


〈宝剣はそのままで良いんですか?〉


「あぁ~、知り合いの鍛冶屋に頼むさ……と言っても、何処かに引っ越しちまいやがってな。腕の良い鍛冶屋だったんだがな。タムアートとブルアートって夫婦が……」


「あぁそれならボクらの領地に引っ越して来た人達だね」


 騎士のおじ様がダンッと両手で机を叩いて立ち上がる。


「そりゃあ本当か⁉ ってか、領地ってお前達は?」


〈あ~、グランスコートの発展にちょっと手を貸しているだけです〉


「ほう、それはそれは良い事を――イタっ⁉ ……聞いたぜ」


 急に大人しくなって着席した。


「おほほほ、主人が大声で失礼。でも、そうですか、貴女様があの地を……今後とも良いお付き合いをしていきたく思います」


 ブルさんの鍛冶屋の場所を教えて、騎士のお屋敷を後にした。何かといっては引き留められそうになったけれど、何とか理由を付けて逃げ出せてよかった。


「あの奥さんの目は、獲物を逃がさないって目立ったんだな」


〈やめて、怖いことを言わないで〉


「でも、鷹見たいな目立ったよ」


 シュネーさんや、鷹を見たことはないよね。的確に猛禽類で例えないでほしい。

 でも、これで少し進んだ。


 この箱には、各面に嵌め込む穴があって、歯車がピッタリと嵌め込めた。





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