【オンライン】253話:ハロウィンイベント(2)




 一番最初に向かったのは門番、つまり錆びた短剣を届けに行ってみた。


 推測した通りであれば、写真の場所は中央都市であるフォレストヒル側の門ではないかという。ミカさんがよく見る光景に似ていて、フォレストヒルからの移動は馬車だったり、徒歩だったり、馬に乗った旅人という感じで疎らなんだそうだ。


 ヴォルマインは基本的に荷馬車が並び、ジャンシーズの方は貴族の馬車や商人達が乗るようなテント付きの馬車が多いという。


 ちなみにグランスコートの方は最近になって人の出入りが増えきたらしいんだけど、比較的に安全な草原で初心者の冒険者やピクニックに行く家族なんかが多い。


「さて、写真からみると右側の人っぽいでござるな」


「とにかく話をしてみようか、この短剣を見せれば何かしらの情報をくれるだろう」


「写真の時間帯っぽいし、大丈夫だとは思うけどね」


 出店の時みたいな事を避ける避ける為か、ミカさんが僕から常に離れず傍にいてくれる。


〈過保護過ぎない?〉


「何言ってるのよ。貴方が死に戻りした時のペナルティは洒落にならないんだから、第一に守らなきゃいけない対象なのよ。大人しく守られてなさい」


「そう言って、役得とか思ってない? まぁ、ボクじゃあ守れないから仕方ないけどさ」


 ちょっと悔しそうにしながらも、僕の頭の上でシュネーが拗ねた様に言う。


「シュネーちゃんも同様の対象なの、さっきみたいに人質に取られた時点で私達の敗北よ」

「はいはい、大人しくしてますよ~」


 本気で心配されているからか、拗ねた様に顔を逸らしながらも、何処か嬉しそうな感じだ。

ティフォとガウ、それにアズミルが門番の人に話しかけに行く。


「すみません。少しお時間良いですかね」

「はぁ、何か御用ですか?」


 警戒した様子を見せつつも、笑顔で応答をしてくれる。


「この短剣に見覚えがあったりしない? 何か知ってる事でも良いんだけど」


 アズミルがインベントリから取り出し、両手で丁寧に差し出してみせる。

 少しだけ顔を寄せて訝しげに錆びた短剣を見る。

 次第に門番の顔が変わっていくのが分かる。


「コレを……どちらで?」


「知り合いに頼まれたんだな。この短剣の持ち主に返してくれと預かったモノでござる」

「手に取って確認してもよろしいか?」


「えぇ、しっかりと確認してみて。何か知っているのよね」


 アズミルからそっと錆びた短剣を手に取って、大事な宝物でも眺める様に見つめる。


「確かに、知っています……しかし、持ち主に返してくれと頼まれたのですよね」

「うん、確かにそう言っていた」

「その人は……その、元気でしたか?」


 何かを確かめる様に、僕等を見ながら真剣な表情で門番さんが聞く。


「その、なんと言ったら良いのかな。説明がし辛いんだけど」


 門番さんは短剣をアズミルに返し、ブツブツと何か言いながら何かを考えている。


「あの、どうかしたのか?」


「一つ、確認させてください。コレを持っていたのは……その、ゴースト、ですか?」


 門番さんがそう言うと、僕ら全員の些細な表情まで決して見逃さずに読み取ろうと、鋭い目つきで全員を見ている。


〈そうです、コレは幽霊さんから預かりました〉


 皆がどうしようかと困って、其々に視線を交わしている間に僕はただ門番さんだけを見つめて、しっかりと答えてあげた。


 数秒くらいジッと僕を見つめて、険しい顔から優しい笑みに変わっていく。


「そう、ですか……この短剣を頂いてもよろしいでしょうか」

「え、えぇ。元より返すつもりで持ってきたモノだしね」


 アズミルから改めて錆びた短剣を受け取り、目じりに涙を溜めながら「有り難う御座います」と深々と頭を下げてお礼を言われた。


「聞いても良い? その短剣ってなんなの?」


 シュネーがずっと気になっていた事を聞く。


「コレは、俺の父が持っていたモノでね、母の家から伝わるお守りの短剣なんだ。あぁ、勘違いしないでくれよ父は生きて帰って来たぞ。寿命まで生き、大往生だったんだからな。ただ、父はこの短剣を命の恩人に渡したと言っていた。もしも、この短剣を持ってきたものが居たら、コレを渡す様にと言われていたんだ」


 アズミルは小さな鍵を代わりに渡された。


「自分にはそのカギを何処で使うのか、残念ながら解らないんだ。すまない」

「いいえ、ありがとうございます」


 その後は少しだけ他愛もない話をして、お別れをした。


「どうやら、正解だったみたいだね」

〈問題が残ったままだけどね〉

「使いどころの解らない鍵ね~」

「まぁ、とりあえずは当たってたみたいだしさ、他の写真の場所も行ってみよう」

「今回みたいに、何かしらのアイテムを渡されるかもしれないしね」

「ほっこり話で良かったんだな。父の形見とかいう話じゃなくてよかったでござるよ」

「確かにな~、それで敵討ちにモンスター討伐何て言うのがベタな展開だもんな」


 それは何とも、ありそうな展開だね。


 しかもその場合、下手すると悪霊や悪魔なんかが相手になりそうだ。


 イベント的にありそうな展開で、もし幽霊系だったらティフォが全く戦力にならない。

 



 

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