【オンライン】239話:ハロウィンの準備(4)




〈ねぇティフォ、あの二人にさ――〉


 今の僕から何かを言った所で可愛がられるだけな気がするから、此処はティフォに頼むのが一番だろう。フー先輩には効果絶大だし。


「あ~コホン。二人とも、ちゃんと鬼達と協力して、イベントを盛り上げてくれよ」

「はい、お任せください!」

「ティーちゃんは心配しょうだな~。大丈夫よ、お姉ちゃんに任せときなさい」


 頼む人を間違えたかもしれない。


 ティフォも釘を刺しにいくなら、もっと堂々として欲しかった。恥ずかしがり屋の少女みたいにモジモジとしながら、注意しに行くなんて逆効果にしかならないだろう。


〈ズミナ、解らない事があったら僕等の所に聞きに来て良いからね。あの人達に頼り過ぎるのは、なんか危険な気がするからさ〉


「うム、良く解らないが……わかった」


 それは駄目なヤツだと思うよズミナ、少なくとも君は此処のリーダーなんだからね。


 思考と言う点では、まだまだ鍛えていかないとダメそうだ。

 いざって肝心な時に、この集落のメンバーを任せられない。


 思わず出てしまったため息を、少しだけ呑み込みながらフー先輩達に話しかけに行く。


「あら、何か御用ですか?」

〈そう、ズミナには色々と考えさせながら、鬼の集落を盛り上げていってほしんだよ〉

「彼に、ですか?」


「エーコーさんはある程度の考えや知識の使い方があったから良いけど、ズミナは猪武者のままだと、この集落も発展していかないでしょう。こういうイベントなんかは良い経験になると思うんだ。だからお願いしますね」


 学校行事なんかだって、そういう意味合いで子供達に委ねて成長させようって始まった事だと思うし。こういう機会を活かさない手はないだろう。


〈彼等を上手く成長させることが出来れば、ティフォは凄く褒めてくれると思うよ?〉


「……なるほど」


〈それに、グランスコートの村人達と鬼達が仲良くなったっていう評価が得られれば、カミルさんの評判だって凄く上がると思うな。もう、上司に小言何て言われずに済むだろうし、後輩からだって尊敬されると思うな~〉


「確かに、それだけの功績があれば、皆を見返す事が出来ますね」


〈下手に自分達だけが目立とうと、この牧場だけで楽しんじゃったら反感は多いだろうね、上司からも怒られるだろうし、下手したら受付所に逆戻りなんてことも……〉


「そ、それは困ります!」


〈そんな事になったら、ティフォもショックだろうな~。せっかく皆で楽しもうと頑張ってるお祭りを、フー先輩が独り善がりに盛り上げて、周りから反感なんか買っちゃって、鬼達と村人が対立なんて事になったら。きっと怒るし、少しだけフー先輩から距離を取る事も〉


「そ、そんなのダメです⁉」


 ちょっと脅し過ぎた気はするけど、ここまで言っておけば下手な事はしないだろう。


〈それじゃ。くれぐれも鬼さん達をよろしくお願いしますね〉


「任せて置いて下さいまし。ティーちゃんに良い所を見せる機会ですもの」

「全力で彼等のサポートに当たらせて貰いますよスノー様。失敗などしません」


 なんか、妙な張り切りようだけど、軽く考えてトラブルを起こされるよりは良いかな。


〈あ、そうだ。フー先輩に言い情報をあげますよ〉


「……何ですか?」

〈えっとね――〉



   ☆★☆



「ティフォナ妃よ、ああいうのが人の上に立つ資質というモノでがござる。誰にでも優しく接していると、後ろから刺されるでござるぞ」


「なんでそういう話に繋がるんだよ! アレは逆に怖いだろうが⁉ 小学生くらいだぞアイツは、そんなヤツが同年代を手玉に取ってんだからな」


「はぁ、コレだから我が親友は心許無いのでござる」

「だから、意味が分かんねぇって」




「こうして見ると、やっぱり人を手玉に取ってる方がスノーってイキイキしてるよね」

「でも、逆に責められたりして、あたふたとしてるスノー先輩って可愛いですよ」

「普段とは違う姿に、思わず抱きしめたくなる?」


「ねぇねぇ、アタシ達もさ、何かしら考えて驚かせてみない? お化け屋敷みなたいなので、仮装させるとかさ、絶対に可愛いと思うんだよね」




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