【オンライン】238話:ハロウィンの準備(3)
「スノー様は町中にポイントを使わないって事でしたけど、こういう小物はどうせすか?便利ですよ~、特にアイテムボックスなんてお勧めです。でもですね、一番のお勧めは、受付を派遣、なんてモノもございましてね」
カミルさんはどうやら、便利アイテムよりも最後に進めてきた受付の派遣というモノを選んでほしいみたいだ。さっきから必死にアピールしてくる。
〈はぁ、カミルさん。正直に話してくれれば選んであげますよ〉
彼女自身はもうグランスコートの専属として働いてくれているようだから、イベントでも僕等の町を中心に動いてくれるだろう。という事は、仲の良い同僚を呼び込みたいといった感じだとは思うけど、なんか妙に怪しいんだよ。
カミルさんが進めてくるから、怪しさが増すのかは解らないけど。
「お友達を呼びたいのと、同僚に自慢したいのと! 上司に自分は遊んでばかりではありませんと、見せつけたいであります」
ビシッと綺麗に敬礼をしながら、ハキハキと僕等に心情を聞かせてくれる。
「予想よりも多かったな」
「自分の好きな事をやってる時は、すっごく生き生きと仕事してるんじゃん」
「シュネー妃、確かに拙者達が居る場所ではカミル嬢は好きな事をしているから、熱心に仕事をしているみたいに見えるんだな。少し前のカミル嬢は、受付スライムの異名を持ってた程なんだな、カウンターの机で溶ける様に突っ伏して寝ていた事で有名であった――」
スコンッとガウの頭から良い音がしたと思ったら、何処からともなく木札が御凸に直撃していた。回避と撃たれ強さに自身のあるガウが地面に転がっている。
「……あらら、どうしたんでしょうね。ガウさん? 急に倒れたら体に悪いですよ」
ガウを心配している事を口では言いながらも、ガウの様子を見るでもなく、自分が飛ばしたモノであろう木札を回収している。
そういえば、初めて会った時には、そんな感じだった気がする。
あんなのを見た後では、絶対に書かないけど。
「そういえば、埃を頭にかぶってたもんね」
シュネーのボヤキにこの場にいる全員が一瞬、息を呑んだ。
「それもスノー様の御蔭で使われていなかった道具達も、役に立ってくれている様子。本当にお二人には感謝ですよ~。受付嬢の仕事が暇だからって、書類仕事の雑務に追われる毎日から、私を救い出してくれた救世主です」
殆ど無理やりにこっちに働きに来た様な覚えがあるんだけど、ダメだ、言いたい事があるが余計な一言が、後々に悪影響が出そうで怖い。
「ねぇ、お姉ちゃん。彼女の言ってる内容って……」
「しっ、ここは止観だ。下手な事を言って見ろ。お前ら全員が巻き込まれるぞ」
「アレは絶対にワザと大袈裟に言ってるんだな。彼女の同僚達や上司達のアピールに駆り出される」
どうやら皆、同じ気持ちのようだ。
きっともうエーコーさんは引き返せないだろう。あそこまで色々とカミルさんが手取り足取り教えながら、積極的に手伝っていたみたいだからね。
「それならば、この農場と鬼さん達の集落を盛り上げてみてはいかがです? それならば、手伝いという名目で受付の仕事をしなくとも、此処で色々とお仕事が出来るのでは?」
フー先輩が急に動き出して、僕等が止める前に一気に余計な提案をしてしまった。
いや、でも待てよ……悪くはないのかな。
〈そうですね、鬼達も次のお祭りは良く解っていない様子だし……上手く立ち回れれば、確かにカミルさんの評価も上がるし、鬼さん達も楽しめるお祭りに出来そうですね〉
「でしょう、私も、この牧場を一人で切り盛りできる訳ではないですし、お手伝い願えませんか? その代わりに、グランスコートの方はお任せできなくなりますけど」
「喜んで、私が色々と教えてあげますよ。それにグランスコートは人が多く居ますからね、私が出張った所で、あんまり活躍は出来そうになかったんです」
なんだろう、カミルさんとフー先輩の間で、妙なやり取りが行われている気がする。
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