【閑話】掲示板組の準備。




「さて諸君、我々が先頭に立って活躍が出来るイベントが始まろうとしている」


「前のイベントでもそれなりに活躍はしていただろう。まぁ、確かに今回のイベントは僕等の分野だとは思うけどさ」


「売上や集客率での競争だからな、他所に負けたくない気持ちは良く解るぞ」

「露店三人組には悪いんだけど。此処の売りって無いのよね」

「ねぇ、何でこんな所でヒソヒソと話し合いをしなくちゃあいけないのよ」


 彼等が居るのはまだ新築で、何も物が置かれていない。だだっ広いフロアーである。

 ケリアが後々に衣服を取り扱おうとしている、お店になる場所だ。


「自分は新参者ですから、こういう所に居て良いモノか」


 コックの恰好をしている青年が一人、少し戸惑いがちに挙手して発言をする。


「何言ってるのよ。今回はハロウィンよ~。貴方のお菓子が無いと始まらないじゃない」

「はぁ、そういうお祭りなんですか?」


 ガタイも肉付きも良いメイド服を着た人物が体をくねらせながらコックの肩を叩く。


「孤児院の人達、それから子供達にも手伝って貰って、沢山のお菓子を用意しないとね。作ったお菓子の交換や、子供達にプレゼントしたりっていうお祭りなんだけどね。今回のイベントはどうもそれだけじゃあないみたいなのよ」


「呼ばれてもいないが此処に居るミカさんを見習えよ新人諸君。町中の装飾は皆で作って飾りつけをしようってスノーちゃんが連絡が来たから、その事は通達しておいてね」

 

 ボウガ木工の弟子達が露店店長の言葉に頷く、横にいた妖精達やコック見習い達も居たりする。

 妖精達は、ただ楽しそうな雰囲気だからノリに合わせて静かにしている。


「まぁ良いがよ、何で俺達まで駆り出されてんだよ」

「父さん、将棋や囲碁で遊びたいからって、逃げようとしてたんですよ」


「エーコー様に後れを取る訳にはいかないからな。最近は気を抜くと追い詰められそうになるんだぞ、こういうのは日々の研鑽がモノを言うんだぞ」


「お弟子さん達が可哀そうになって来たわね」


「いえ、それが……あそこの人達も挙って遊んでいるみていで、仕事の出来が良ければ父さんと勝負できるって感じで、なんか違う意欲を燃やして腕を磨いています」


「流石は俺の選んだ弟子どもだ」


「嬢ちゃんは悪くねぇ、変り者の所に変わった弟子が集まっただけだ、恥ずかしがる気持ちは解るがな、良く回ってるんなら良いじゃないか」


「それよか、次の祭りについて話し合いだろうが、こちとら貴重な時間を割いてきてやってんだ、俺にも頼みたい事があるから呼んだんだろう?」


「えぇ、そうね。立て看板を幾つか作ってほしいのよ。後は、大き目の看板ね。町の入り口とかに飾るヤツを三種類からしら。鬼の集落と、エーコーさんの泉。それに私達のグランスコート。其々にね、デザインは皆で話し合いながらだから、そこは臨機応変に変えられるようにしたいの、出来るかしら?」


「それくらいだったら朝飯前だな、後はなんだ?」


「そうですね、出店だけだと食べる場所が限られますから、座って食べられるスペースを各所に作りたいですね。ゴミ箱も設置しておければ、ごみ問題も減ると思います」


「なるほどな。それじゃあ、外で食べられる机とベンチを作れば良いんだな」

「ある程度の強度と頑丈さで、組み立て式にして欲しいんだ」

「あぁ? なんでそんな七面倒な注文になるんだよ?」


「作った机をその場に置いたままって訳にはいかないでしょう。折りたたんだりして、お祭りの度に出せる様に倉庫に仕舞えるようにしておけば、また使えるじゃないですか」


「ふむ、そういう考えか……考えてみよう」


「ありがとうございます。コレで問題は一つ片付いたとして。子供達や村人達がどうやって、怖がらずに、鬼達との繋がりを作ってやるかなんだよな」


「ハロウィンは良いイベントだからね、上手く仲良くなれるように後押しを出来れば良いんだけど、スノーちゃんが選んでくれたサーカス団に協力とかお願い出来ないかしらね」


「それは望み薄ね。イベント専用要因だから、そこまでの動きはしてくれないでしょう」


「自分もお菓子作りから、仲良くなれないか考えてみますよ」




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