【オンライン】223話:恋のライバル認定(1)




 ふぁ~っと欠伸をしながら起き上がる。


「良く寝てたねスノー」


 ニンフィに抱かれる様にして、顔だけ覗かせると何時の間にか休憩が終わっていたようだ。トワちゃんやボウガさんは未だに囲碁や将棋をしている。


〈なんかちっこい体って慣れない〉

「そう? 慣れると楽しいよ」


 ニンフィに乗ってるだけでも、なんか布団に寝ころんで飛んでいる感じがする。


 自分で動くとなると、常に浮いている為に動きにも少し気を付けないと前に進んでしまう。基本的な動きは体重の掛け方で前や後ろに進む、上下の高さは意識して変えている。


 よく僕の頭にシュネーが乗っている気持ちが良く解る。

 誰かの上に乗っかっていると疲れないのだ。


「ふふん、やっぱそこが落ち着くよね」


 ただ、僕がシュネーの頭に乗っているとニンフィが少し寂しそうな顔をする。


〈……ニンフィ、もうちょっと体を纏めるというか締めるというか、ちっちゃめに出来るかな、もう少し固めの方が乗りやすいんだけど〉


 僕の言葉を聞いてしばらく考え、クルンとアイスのコーン見たいな竜巻型になった。


 ニンフィに乗ってみると、しっかりとした感じで座れるし寄り掛かれるしで、イイ感じに乗って移動できるようになった。


「ねぇ、そうやって移動してるとなんかティーカップに入った犬か猫みたいに見えるよ」


〈別に良いもんね、快適だし。なんか気持ち良いから〉


 この形状だとニンフィの体温なのか、少し暖かく感じる。


「所でさ、あの三姉妹って誰か分かる?」


〈さぁ? 僕の所だとデンドロ(木の)ニャムペ(妖精)って書かれてる。木の妖精だって〉


 何と言うか、この場は碁会場みたいな雰囲気になってしまっている。

 黙々と囲碁や将棋をパチパチと打ち合いながら、真剣勝負をしている。

 偶に雑談が混じるようだけど、その内容は戦略の話し合いしかしていない。


「ふむ、負けじゃな。ふ~、休憩じゃな」

「手加減無しでと言っても、もう追い付かれてきてますな」

「段々と拮抗した戦いになってきましたね」


 ボウガさんとエーコーさん、知らないお姉さんが妙に仲良くなっている。


「こっちも終わった~」

「負けた~」

「二姉の負け~」


「むぅ~、全然ダメでしたね」

「取られた石の数が多すぎですよ」

「良い感じに逃げてくれたんで助かりましたよ」


 トワちゃんも妖精達と仲良くなっている、知らないお姉さんとトワちゃんと変わらなくらいの女の子が和気藹々としている。


「なんだ? 今はどういう状況だコレ?」


 ティフォが休憩から帰って来たようだ。

 パッと光の泡みたいなシャボン玉が現れてティフォの体が出現した。


〈ずっと囲碁やら将棋で遊んでたみたいだよ〉

「はぁ……ゲーム内だと丸一日くらい経ってるだろう」


「それほどにハマってるんでしょう。若干だけどトワっちもボウガさんも窶れて見えるよ」


 目元に薄っすらとクマが出来ている様に見える。それでも楽しそうに遊んでいる所を見ると、本当に遊びに飢えていたんだなと思う。


 休憩から次々と皆がログインしてくる。


 一番最後に来たのはガウだった。ゲームに関してはガウが一番にログインしているんだろうと思っていたのだけど……何かあったんだろうか。


「ティフォナ妃……逃げよう。鬼達の都市国家ま――」

 そう言い終える前に、ガウからピロンピロン――という音が聞こえてくる。


 ダイレクトメッセージが届いている様で、その音が鳴る度にガウの顔色が悪くなっていく。終いには震えて、泣きながらティフォに謝りながらしがみついた。


「な、何だよ? どうした」

「予定よりも早くに、拙者の姉上が来てしまったんだな」

「あ~、先輩もやるって言ってたもんな」


 呑気にティフォが答えているけど、その様子をスズメちゃんが冷めた目で見ていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る