【オンライン】グランスコートの動向。




 【グランスコート:雪姫配下の民とプレイヤー】



「交易路を都市国家まで作ると言ってもな、森を突っ切るは無理じゃないか?」


「あそこは山道もあるからな。レースさんとコフさんに相談してアロゴ族を貸し出して貰えないかを相談してみよう」


「荷馬車を使うの? 山道なんて載ってられないよ。絶対にケツが割れるぜ」


 露店を開きながら、広場で会議をしている三人の男達にゴスロリ衣装の女の子が近付く。


「露店三人組、朗報よ。スノーちゃんを頼ってきた鍛冶屋が居たでしょう。あの人ならスプリングを作れるかもしれないわよ」


「今ね~、武器の整備に行ってみたらかなりの腕でさ、色んな道具が並んでたんだ。話を聞いたらスノーちゃんが色々と教えたんだって」


 狩人の女の子がうっとりした顔で、整備して貰ったナイフを見せびらかしてくる。


「そうなると……後は木工職人と錬金術師が必要だな」

「誰かプレイヤーの木工職人って居たっけか?」


「ベアリグも作って貰えねぇかな。球は錬金術の合成金属を使えば何とかなるだろう」


「そうなると、ミカさんが帰ってくるまでに色々と揃えておきたいわね」


「ボウガさんは忙しそうだしね」


 皆が悩み始めると、クスクスと笑いながら魔女っ娘が空から箒に乗って降りて来た。


「よっとと、木工職人なら一人居るわよ。無口な庭師が居るでしょう、アイツに頼むと良いわよ。ギャザラーを名乗ってはいるけどね、下手なクラフターよりも良いモノを造るわ」


 皆が一斉に中央広場を一生懸命に整備している麦わら帽子の青年に向いた。


「もちろん、無償で手伝え何て言わないわよ」


 ビクッと一瞬だけ逃げそうな大勢だったが、すぐに何かを思いついたみたいで立ち止まり、露店を開いている三人の場所まで近付く。


「……別に無償でも構わない。ただし、料理人を紹介してくれ」


 全員が顔を見合わせながら、横に首を振った。


「料理ならワタクシが御作りしましょう」


 右目に眼帯をしたスキンヘッドの住民が話しを聞いていたようで、声を掛けて来た。


「何処かで見たことがある様な気がするな」

「あぁ、でも思い出せないぞ」


「……もしかして、中央都市にある喫茶店で働いてたNPCじゃあないか!」


「言われてみれば、そうかも」


「でも、なんで此処に居るのよ?」


「マスターより、今後は自分自身の店を持ち、創意工夫しながら料理をしていけと言われましてね。親しいケリア様の紹介により此処へと引っ越して来たんです。まだまだ未熟ではありますが、ワタクシの腕を知って頂ければと」


 肩に下げているアイテムボックスから可愛らしいラップの小袋に包まれたクッキーを皆に配り始めた。猫や犬の形をした様々な形のクッキーがある。


「……美味い……が、コレじゃあダメだ」

「何か足りなかったでしょうか!」


「違う、味は良い。だが、小生が欲しているのは妖精達と仲良くなれる料理だ」

「妖精達と、仲良くなれる料理⁉」


 そんな料理は考えた事がなかったという表情で麦わら帽子の青年を見る。


「あ~そういう事ね、アンタって無駄にデカいし体格もごっついからって、ギフトで【威圧】のスキルを貰っちゃったのよね」


 魔女っ娘の憐みを含んだ顔に、皆も同じような視線を其々が青年に向ける。


「やはり、此処に来て正解でした。必ず作ってみましょう。貴方様と妖精達を繋ぐ料理を」

「……小生も頑張る、此処に妖精達が沢山来てくれる様な場所にすることを」


 お互いに強く握手して、気合を入れる二人。


「こりゃあ色々と掲示板を駆使して皆に知らせといた方が良さそうだな」

「交易路を作るって話から、何か別方向に拡大してってんな」

「そういやさ、次のイベントってハロウィンだよな?」

「ハロウィン? 何ですかそれは?」


「オバケや魔女、悪魔なんかの仮装して、お菓子を貰ったり交換したり……まぁ、簡単に言えば種族の垣根を取っ払った交流会みたいなモノよ」


「その説明は大雑把過ぎない?」

「でもさ、どんなイベントになるんだろうね」

「それはまた、素晴らしいイベントです」


 眼帯スキンヘッドの料理人がヤル気の炎を身にまとっている。



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