【オンライン】219話:鬼ごっこと修業のやり方(7)




「スノーは器用だね~。ボクはそんなに上手く削れないんだけど」


〈最初から強く削り過ぎなんだよ。少しずつで良いからゆっくり削れば成功するからね〉


 シュネーが削た石は歪な形になっていた。


「それじゃあ使えないね」

「ふん、そう言うサクラだって似たようなもんじゃんか」


 サクラちゃんの石はひょうたんみたいな形になってしまっている。両者共に使い物にならないから、貶し合った所で意味は無いんだけど。


「まだアタシの方が形は良いじゃない」

「バランスの問題ならボクの方が良い感じの大きさでしょう」


 ……団栗の背比べなんだよね。


 ケリアさんは裁縫が得意なだけあって、細かな作業は得意なようだ。力加減も問題なく綺麗な碁石が作られていっている。


 ちなみにだが、この修業は失敗しても数をこなしていくと補正値が上がっていく仕組みらしく、最終的には意識しなくても碁石程度なら片手間で作れるよになる。


 そうなったら台座が無くても『風』と言う単語を含めた呪文を言えば、同じ事が出来る。だから日本語で「風よ」と言う感じで一点に集中しながら、少し体に力を籠めれば風魔法が使える仕様になっている。


 ティフォは世界観の雰囲気に合わせて「アネモス」という言葉を使っている。


 ……ティフォはもう風魔法の初歩は習得済みなんだね。元々のプレイヤースキルもあるんだろうけど、随分と碁石作りをしていたんじゃないかと思う。


 ボウガさんやトワちゃんなんかも、片手間で碁石を作れるようになっている。


 【風魔法】のスキルを習得して、熟練度を上げればエーコーさんがやっているように、手に石を持つことなく、数個の石を浮かせて一気に削るなんて芸当も出来るらしい。


 アレは【風魔法】のスキル基礎と、風魔法で覚える事が出来るギアで《浮遊》というモノを合わせて使えば僕等でも出来る芸当だ。


 今の僕みたいな種族スキル【浮遊】は、あくまで自身が飛べる能力という事になる。


「ほれ、我のノルマは終わったぞ」


 僕等よりもかなり多くの碁石を削っていたように見えたけど、随分と早く終わるんだな。


「いや~助かりましたよエーコー様。ありがとうございます。コチラ、例の物になります」


 ボウガさんが碁盤と将棋盤を献上している。


「ねぇねぇスノー。碁盤と将棋盤って違うの?」


〈ん~っとね、碁盤は18×18の324マス、囲碁だと19路盤って縦と横の線が19本の線があるヤツでマス目が真四角なの、将棋盤は9×9の81マスで長方形だったかな〉


 前にダイチお爺ちゃんがそう説明してくれた記憶があるのだけど。

 ……多分、合っているはず、自信は無いけどね。


 エーコーさんは二つの盤を大事そうに抱えて、初めは泉近くの大きな木の方に向かって行ったが、段々と逸れていってお城の方へと向かっていった。


 アレは絶対に寝床に持って行って、妖精達と遊ぼうとか考えていたに違いない。


〈エーコーさんって囲碁や将棋って出来るの?〉


「いや、最初に捕まえた時にちょっとな……囲碁と将棋のルールやら、駒の動きを書いたモノを渡したから、今日から覚えるんじゃないか?」


〈ふ~ん……大丈夫? 金と銀の動き方を間違えて書いてないよね?〉


 僕が揶揄う様にティフォを見ながら言うと、ジト目で見返されてしまった。


「お前、何時の話をしてるんだよ」


 将棋をやるときに、何時も最初に金と銀の動きを確認するという事から始まるからね。


「大丈夫よ~、普段やらないとどっちがどっちだったけって忘れちゃうものよ」

「ケリアさんも良く覚えていないタイプだね」


〈ティフォは偶に二歩をして負けるから……少し心配だな〉


「安心しろ、ルールの説明を書いたのはハーナさんだからね」


 その言葉を聞いた瞬間、遊びの説明をしている途中できっと不安になったなっと横目でティフォを見ると、僕の視線から逃げるように顔を逸らしていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る