【オンライン】218話:鬼ごっこと修業のやり方(6)
「さぁ、楽しい碁石作りだ。と言っても無駄に時間を使うって訳じゃあ無いんだけどな」
仲間が出来て満足そうに説明を始めるティフォに、僕やシュネーはジト目で見つめる。
ただケリアさんは捕まってしまったのに、少し楽しそうにしているのが気になる。
〈なにか別の理由でもあるの?〉
「簡単に言えば『風』魔法を覚える修行だな」
「石磨きなんて、また変わった修行の仕方ね。私もまだ風系統の魔法は使えないのよね。どうやって取得しようかって考えてたのよ」
身体強化に必要なのは『土』が少しでも使えれば良いらしい。
「はいは~い、ボク達でも使えるの~」
「もちろん使える様になる。……って、カミルさんが教えてくれた」
ただし、攻撃系の大魔法なんかは習得できないらしい。
「なんかずっとスノーちゃんが主体だったから、反対になると変な感じね」
「声質はあまり変わらんのじゃな」
周りの人達に微笑ましく見られているが、今は気にせず魔法の習得だ。
〈どうやって練習するの?〉
「先ずはコイツを使う」
ティフォが取り出したのは、風の力が込められたクリスタルだった。透明なペットボトルみたいに透き通った指先二間接くらいの大きさだ。
そんな小石サイズのモノが袋の中にいっぱい詰められている。
〈綺麗だね〉
「本当だね~、少しだけ青っぽい様な、白い雲みたいな線もあるね」
こうして空に透かして改めて見ると、どちらかと言えば大きなビー玉みたいだ。
「そいつは『風の魔クズ石』って魔石でな、エレメント系のモンスターなんかを狩ってると手に入るんだ。クズ石って呼ばれるくらい幾らでも手に入る代物で、二束三文で投げ売りされているヤツだ。基本はコレと、作業台を使って修行するんだ」
ボウガさんが皆の前に作業台を並べていく。
簡単な作りの折り畳み式の小さな机、中央には魔石を嵌め込む小さな台座を置き、そこに三角架が付いている三脚が置かれた。
〈理科の実験かな?〉
台座の部分がアルコールランプかガスバーナーだったら完全に理科の実験だろう。
二つの魔法陣が机両端に描かれていて、そこには水晶が一つずつ置かれている。
「水晶を強く握ってみな」
「こう? うぁ⁉ なんか変な感じ」
〈変って? 何が起きてるの?〉
「手の平っていうか、内側から吸われる感じがする」
シュネーがそう言っている間にも、三角架に置かれた石に変化が起こり始めていた。
カカカッ――と少しずづ石が回転して削れ初めていくのだ。
「顔を近付けるとケガするからな。左右の握り方で強弱が変わるから色々と試しながらやるんだぞ。しっかり綺麗に磨き上げろよ」
確かに地道な作業だな。
「おい、何を他人事みたいに見てるんだ? お前の分もちゃ~んと用意してある」
〈へ? だってこの体じゃあ〉
「ははは、何言ってんだスノーちゃんよ。妖精達にも手伝わせてるんだぜ」
ボウガさんがチョイチョイと親指で指示した方では、小さな妖精達が使える様に特殊な机と台座まで用意されている。
魔法陣の真ん中に立って、目の前に置かれた台座に手を翳すと連動してシールドが張られながらも、その先ではシュネーがやっている事と同じ現象が三脚の上で起きている。
「ほれ、やれ」
〈ティフォさんや、瞳のハイライトが消えてますよ〉
「皆でやればその分は早く終わる。ついでに風魔法の修業も出来る、一石二鳥だろう」
あぁ、もう僕の声はきっとティフォには届いていない。
乾いた笑い声を上げながら、同じように捕まえたサクラちゃんにも説明していく。
「貴方達、何やったのよ?」
「何もしてないんだな」
「そうそう、な~んにもやってないよ」
僕は何も言わずに、黙々と作業に集中する。必死にジト目で見てくるケリアさんと目を合わせない様にしながら。
「そういう事はこっちを見て言いなさいよ、ティフォナスちゃんに何かしたって言ってるようなもんじゃないのよ~」
拷問の様に聞き出されたんだな。
あそこまでやさぐれるとは、思わなかったよ。
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