【オンライン】217話:鬼ごっこと修業のやり方(5)
ティフォのターゲットは絶対に僕達だろう。
執拗にガウを追っているし、さっきから数名は誰も追わずに何かを探している。
この際だからカミルさんに逃げる手伝いでもして貰おうと彼女の方を見たのだけど。
「私はどちらの味方でもないので、協力はしませんよ?」
顔は真正面を向いたままで、目線だけコチラを一瞬だけ見てから小さな声で言う。
「ブー、良いじゃん別に~」
「まぁ私としてはこのまま、ミニなスノー様を見ていたい気持ちで一杯なんですけどね。良いんですか、そろそろ移動しないと気付かれますよ」
肩入れしないと言いながらも、僕等に逃げやすい道を視線だけで教えてくれる。
草蔭を利用して、視線が外れてからサッと隣の茂みに隠れて移動していく。
「このまま隠れて外周を回っていればさ、バレないんじゃない?」
〈それはティフォの思惑にハマっちゃってるよ〉
先に中央からどんどんと捕まえていって、外側に逃げた足の速い子達は外周へと逃げ場を無くして追い詰めていく作戦だろう。
それを裏付ける様に、段々と中央側から人がどんどん隠れた子達を探しに鬼が出てくる。
〈泉の祠近くにある大きな木にさ、タイミングを見計らって上に登って隠れよう〉
ガウみたいに上手くは登れなかったけど、何とかバレずに登ってこれた。
「ふう~、意外と難しいね」
〈ガウやティフォは良く木登りをしてたから、足の掛ける場所とかどうすれば素早く登る事が出来るかっていうのを知ってるんだよ〉
ただし、ガウの身軽さは異常だとは思うけどね。
木の上に上がったと事で、少しだけ周りを見回せる。葉っぱの隙間から見ているのでどうしても見えない位置もあるけど、ガウの動きは此処からでも観察が出来る。
ステータス異常の『麻痺』と『鈍足』効果が掛かっているというのに、まだ逃げ続けている。時折、『麻痺』の効果で動きが鈍くなったり、足が止まったりしているけれどその瞬間にダメージ覚悟で転がったり無理やり飛んで距離を稼いでいる。
「すごい体の使い方だね」
〈本人曰く、転がった方が早い時もあるらしいよ〉
リアルでやれば傷だらけになってそうだけど。受け身の取り方一つで色々と変わるらしい。転がって素早く起き上がる事が出来れば良いだけらしいが、普通は出来ないだろう。
スタントマンさながらの動きをしているのに、体形はぷっくりしてるんだから……女性たちからの残念な眼差しを幾度となく見て来た。
その度に皆が思うのだ……痩せれば絶対にカッコいいのにって。
「けどまぁ、もうチェックメイトだね」
〈囲まれたら流石のガウも逃げられないね〉
他の子達もかなり掴まってしまったようだ。
「ぬぅ~、何故じゃ。なぜこんな事をせねばならん」
ちょっと涙目になりながら一生懸命に碁石を作っているエーコーさんを見つけた。
「良いじゃないですか、手伝ってくれれば、遊び道具がタダで貰えるんですから」
「真っ先に我を狙うのは酷いと思うのだがのぅ」
「エーコーさんを狙い撃ちした訳じゃあないんですけどね。一番に厄介そうな連中がまだ見つかってないんですよね」
「その厄介な連中にアタシは含まれてないの?」
「サクラちゃんはドジっ子だったんだね~。まさかスパイクに抱き着くとは思わなんだ」
悔しそうにしながらも、スパイクちゃんを撫でて顔は綻んでいる様子だ。
「ケリアさんも見つかってないんだね」
〈スズメちゃんはまだしも、ムーンちゃんも上手く隠れてるみたいだね〉
「そうね~。まさにドキドキの展開よね~」
僕等より上の方から声が聞こえて少しだけ驚いた。
どうやらケリアさんもこの場所に隠れていたようだ。
〈なんで此処に?〉
「そりゃあ、隠れるならここかなって思ったからよ」
ケリアさんも此処に隠れていたという事は……上手く誘導されたかな。
木下の方を見ると、既に囲まれてしまっていた。
〈……はぁ、やられたね〉
「あらら、そういうことね~」
「逃げ場は無いね」
三人そろってお手上げという感じで、仕方なしに木から降りていく。
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