【オンライン】220話:鬼ごっこと修業のやり方(8)
碁笥一杯に碁石を作り終わる頃には、風魔法のスキルを習得していた。
「お~、本当に魔法が使える~!」
台座を使わずに片手に置いた黒い石を綺麗に磨いていく。
〈その割には時間が掛かってたみたいだけどね〉
個人差と言うか、やっぱりプレイヤースキルも色々と関係しているみたいで、シュネーはどうも大雑把と言うか、考えてやるより、感覚を掴むことが出来れば後は早いみたい。
「スノーは黙々とやり過ぎじゃない? なんで僕よりも多く作ってるのさ」
僕はシュネーが風魔法を習得し終わるまで、ずっと繰り返し同じ作業をしていた。
ただし、今度は『浮遊』させて削れる様になるまで、ず~っと同じ作業の繰り返し。本当はシュネーが終われば止めるつもりでいたのだけど、僕が『浮遊』を覚えるのと同じくらいで、やっとシュネーが風魔法を習得したのだ。
この体なら浮いている感覚も掴みやすいから、丁度良かったのかもしれない。
「ボクよりも不器用な人が居ると安心するよね」
〈どっちかって言うと、説明する方もダメな例だと思うよ。なんでゲームの攻略とか設定なんかの説明は出来るのに、こういう練習とか習得的な事になると感覚的になるんだろう〉
スズメちゃんとムーンちゃんの二人は、なんと鬼ごっこから逃げ遂せたけれど、風魔法の習得という事で自分達から混ざりたいという感じでの参加になった。
「違うぞ妹よ。そこはギュッとじゃあなくって、サッとしてフッと力を抜いていけば良いんだよ。あぁ、それじゃあフゥ~っとだろう」
「もう分かんないって! その説明の仕方は何とかならないの⁉」
なぜ説明に擬音が混ざるのか、僕にも良く解らない。
「ん~、分かりやすい説明だと思うけどな~」
〈はっ? アレが分かりやすいと?〉
何を言ってるんだと言う前に、サクラちゃんが後ろから一言、
「そうね、分かりやすい方だとアタシも思うけどな」
なんてことを言うもんだから、言葉を飲み込んでしまった。
唖然としている僕に、後ろからチョイチョイと裾を引っ張ってくるムーンちゃん。
「……大丈夫、私はスノーちゃん側だから?」
〈うん、ありがとう……そうだよね、あっちが特殊だよね〉
最後の方が疑問形で終わらずにハッキリと言い切ってくれると更に嬉しかったけど。
この中でムーンちゃんが一番早くに風魔法を覚えた。最後に参加して速攻でマスターしていたのには僕達全員(サクラちゃん以外)が驚いていた。
「助けてよスノー先輩! このお姉ちゃんじゃあ覚えるの絶対にムリ!」
「なに! なんで解らないだ? 優しく教えているだろう?」
確かに優しいお姉ちゃんみたいな声のトーンだったけど、説明は論外です。
〈そうだね。僕が教えた方が良さそうだ〉
涙目で訴えてくるスズメちゃんが可哀そうになり、彼女の肩まで飛んでいって頬を軽く撫でてあげる。
「くぅ、何がいけなかったというんだ」
悔しそうに僕を見られても困るのだが、今はティフォの事は無視しておこう。
「基本的に全体的な擬音の説明なんだな」
「あの説明じゃあちょっと伝わり辛いわよ」
ガウとケリアさんが慰めるように優しく肩を叩いてあげている。
けど、言葉は決して慰めにはなっていない。
〈先ずは~、そうだな……緑色の線が濃く出すぎていたら力を込め過ぎかな〉
風魔法を使うとエフェクトだからか、魔力が宿っているからという設定なのか風に色が付いていて視認が出来る様になっている。それで強弱が分かり易く、風魔法だという確認もしやすくなっている。
「こう、ですか?」
〈そうだね。後は石の一部分だけに集中し過ぎちゃっているのかな、その部分だけが削れ過ぎる事が多いみたいだね。石の全体を見ながら、緑色の風て包むみたいにしてあげて〉
少しずつ一ヶ所に当てていた風の力を徐々に石全体に馴染ませていき、全体を削り始めていく、最初に作った時よりも良い出来の碁石になっていく。
スズメちゃんは集中し過ぎると息を止めてしまうようだ。
〈ふふ、ゆっくり息を吸って~吐いて~、落ち着いてやれば大丈夫だよ〉
変な力みが取れていき、ようやく一つの碁石が完成した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます