【オンライン】214話:鬼ごっこと修業のやり方(2)




 妖精達やニンフィと同じ種族のロスト族達が泉の水面付近で楽しそうに浮遊している。


「ニンフィより小さい子達が一杯居るわね」

「物凄く和む?」


 双子ちゃん達が何とかロスト族と仲良くなろうとゆっくり近付いて触れ合おうとしているけれど、サッと風に乗る様にすぐ離れて行ってしまう。


〈ニンフィ、遊んで来る?〉

「ふぃっ⁉」


 良いのっていう感じの表情で僕を見てくるので、ニンフィから降りて頷く。


〈行っておいで、村に帰る時は転移でね〉

「ふぃ~」


 何回か頷く感じの仕草をして、ロスト族達の元へと飛んでいく。


 まだ生まれたばかりの子達は真っ白な雲みたいだけれど、ニンフィは少し紅く色付きはしめているようで、少しピンクっぽい綿菓子に見える。


「むぅ~、全然ダメ……仲良くなれない?」

「警戒心がかなり強いみたい」


 どうやら双子ちゃん達の仲良し作戦は失敗に終わったらしい。


 そんな彼女達を横目に、ケリアさんの方はロスト族に加えて妖精達とも仲良く戯れている。ケリアさんの手にはお手玉が握られていて、テンポ良く空中に投げては手に取ってを繰り返し、常に一つ以上の玉が宙に舞いクルクルと回していく。


 やってる事は単純に見えるけど、僕には出来ない芸当だ。


 三つ以上になると明後日の方向に飛んでいき、顔に当たるか頭に落ちるかだ。


「スゴイすごい!」

「魔力も無いのになんで~」

「風に乗せてる訳でもないよね」

「ただ投げてるだけ?」


 妖精達がケリアさんの真似をして、小さな種らしきモノを投げてみるけれど、僕と同じように丁度良い感じで回ってくれず、明後日の方向へと飛んでいく。


「こんなの楽勝だね」


 シュネーはそんあ妖精達に見せつける様にして、ドヤ顔でクルクルと種と回していく。


 ロスト族達は玉と一緒に回って見たり、ケリアさんの回すお手玉の中心を潜ったりして楽しそうに遊んでいる。


「ケリアさん、混ぜて貰えます?」


 シュネーに対抗してか、ケリアさんに混ざる様にして更に難易度の高い事をスズメちゃんが始めようとしている。


「あら、良いわよ~」


 スズメちゃんがケリアさんの前に立って、同じようにお手玉を投げ始めた。

 数回くらい手元で回してから、ケリアさんがお手玉の数を増やしていく。

 交互に投げ合っていると、ケリアさんが優しく歌を口遊み始めた。


「まるたけえびすに、おしおいけ、あねさんろっかく、たこにしき、しあやぶったかまつまんごじょう、せったちゃらちゃらうおのたな、ろくじょうひっちょうとおりすぎ、はっちょうこえればとうじみち――」


 妖精達がパチパチと拍手して二人を称える。


「手毬歌でござるな」

〈ガウは出来ないの?〉


「蹴鞠なら出来るんだな。ああいうのはティフォナ妃の方が上手いんだな」


 まぁ、小鳥ちゃんに付き合わされて覚えたんだろうね。負けず嫌いだから、出来ないって揶揄われて、まさに手玉に取られて覚えさせられたんだろうと容易に想像できる。


「なんじゃ、楽しそうな事をしておるな」


 エーコーさんが態々お城の方から歩いて来た。


〈お邪魔してます〉


「あぁゆっくりしていくと良い。その方が此処の者達も喜ぶからのう」


 そう笑いながらも、そうっと僕の方へと近付き耳元に口を近付けてきた。


「初めから城の方に居ったからな、間違っても上の小屋には興味本位で行かぬように」


 それはもう自白したも同然ではないだろうか。


〈行きませんよ、と言うより。寝ぐせは大丈夫ですか? 少し毛先が跳ねてますよ〉


「なにっ⁉」


 エーコーさんは自分の髪をたくし上げて見るが、そんな毛先は無い。

 その姿を見て更に確信が出来た。


 やはりぐうたらと小屋で寝ていたんだな。


「えぇいその笑みをやめい! それにちょっと鼻で笑ったであろう」


 意外にも顔を少しだけ赤らめて、気恥ずかしそうにしながら僕の頭を小突いてくる。


 エーコーさんの可愛らしい姿が見れたので満足しよう。




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