【オンライン】213話:鬼ごっこと修業のやり方(1)




 漆喰の壁も高くなって、更にお城っぽくなっている。


 簡単な作りだった場所が今では城門に変わってしまっていて、簡単には入れなさそうだ。

 無駄に大きな城門を見上げていると、右側の小さな穴から妖精達が飛び出してきた。


「スノー?」

「シュネーも居るよ」

「それにガウとケリアも~」

「……知らない人も居るね~」


 妖精達が僕等を囲んで、観察しだした。


〈エーコーさんは居るかな?〉


 僕の目の前でフワフワ浮いている青色の子に話しかけると、少しキョロキョロとしながら「う~ん」と考え込むような仕草をしていた。


「居るよ~」


 隣に浮いている赤色の妖精が元気よく答える。


「ただ、お昼寝中だけど」


 マイペースな感じで青い子が付け足して答えてくれた。


「入っても良いかな?」


 シュネーが前に出て、妖精達に聞く。

 こうして見るとシュネーの方が一回り大きいし、スタイルも良いんだな。


「この人達なら別に入れちゃって良いんじゃない」

「そうだね~、エーコー様も許可してる人だし、開けてあげる」

「でんちゃ~ん、開いて~」


 緑色の子が門に向かって声を上げると、ゆっくりと右下の方にある人が通るには丁度良い大きさの扉が開いていく。


「入ってどうぞ~」

「キョカはモラッテいるモノは、トオレル」


 誰かが開けた訳ではなく、門そのものが生きているモンスターのようだ。


「シュネーを見てても何も思わないけど、この子達は可愛く感じるのは何でだろうね」


 小さな妖精達をほんわかした表情で見つめていたスズメが、手を振って別れる間際に、細目でスーっとシュネーに視線を向けて言う。


「スズメ、それは聞き捨てならないよ! ボクは綺麗な分類なの」


 スタイルの良さをアピールするように胸を張って強調する。


「確かに、可愛さではない?」

「え~、ウザ可愛いっていうジャンルじゃないの?」

「一言余計なモノが付いてるよサクラ!」


 じゃれ合いながら、楽しそうにエーコーさんの居る城を目指してあるく。

 そう、今までは真っすぐに向かえた筈の場所に行けなくなっている。


 クネクネと入り組んだ作りになっていて、ちゃんと先の見えづらい細道。

 それに上から狙い撃ちが出来るような構造をしている。


 少し上を見上げて目を凝らさないと見えないが、小さい窓口が幾つもある事がわかる。


「しっかりしたお城になっちゃったわね」


「エーコーさんを知ってる身としては、天守閣でゴロゴロとお昼寝している姿しか浮かばないんだけどね。まぁ、森で偉い立場に居る人だっていうのは理解してるけどさ」


 確かにイメージが出来るが、どうも僕はしっくりこない。


「でもコレって殆どカミル嬢の仕業では? エーコー妃にはお城の知識なんてないんだな」


 確かに、僕等のホームでも大きな木を生やして、その上にただ住んでいただけだった。


〈僕はツリーハウスとかの方が、エーコーさんっぽい気がするな~〉


 むしろこういう建物は見栄えだけではないだろうか。


「はは、何を言ってるでござるか、エーコー妃がそんなズボラな訳ないんだな」


 エーコーさん自身は簡単な場所で、行き来が楽な所に住みやすいツリーハウスを建てて、ズボラな生活をしていそうな気がするんだよね。


 ガウには悪いんだけど、そのエーコーさんは余所行きの姿だと思うよ。


 ニンフィ達とも遊べるよう、泉の近くに、大きな木を生やして気付かれ難い場所にひっそりとバレないよう、自分だけの専用スペースでだらしなく寝ていそうだ。


 くねくねとした道をしばらく歩いて、ようやく見覚えのある泉に着いた。


 中には手入れの行き届いた落ち着く雰囲気。

 所々に遊べるような広いスペースが幾つも設けられている。


 そして泉の近くには、僕のホームにある様な巨大な木が…………。


 あぁ、本当にツリーハウスが上の方に建てられている。


 見上げていると、妖精の一人が気付いたようで慌ててハウスの方へと飛んでいった。



 ……とりあえず、僕は何も見なかった事にしよう。



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