【オンライン】210話:新たなトラップと連携の試行錯誤(3)




「初めの草原だし強い敵は居ないみたいだね」


 スズメちゃんの言葉を聞いてサッと僕とシュネーは顔を背けてしまった。


「大丈夫、ファーマーはそもそも戦えるジョブじゃない?」


 ポンポンとムーンちゃんに肩を軽く叩かれながら言われてしまう。その言葉にシュネーと僕は更に深く胸の辺りに何かが突き刺さっている様な痛みを感じる。


「ムーン、その慰め方は逆効果じゃなないかな」

「サクラ、そんな哀れむ様に見ないで!」


 彼女の場合は絶対にワザと哀れむ感じで見てきている気がする。特にシュネーを揶揄う目的でジッと言い返したシュネーを見つめている。


 ぽかぽかとシュネーがサクラちゃんを殴っているが、全く効いていない。


 スズメちゃんはもうアタッカーとして活躍してもらうとして。

 二人はどうしたら良いんだろうか、サポートタイプの職業か……難しいな。


 動きを封じるトラップはスズメちゃんに合いそうだし、何か一つ考えるとして。


 双子ちゃん達がな~、僕と一緒の時にどうやって彼女達の能力を活かせま良いんだろう。


 簡単に作れるモノとしては、ハーナさんが使っていた縄の両端に錘を付けた分銅鎖かな、海外だとボーラだったかな、似た感じの投擲武器がそんな名前だったはず。


 アレなら僕でも使えるし、シュネーも上手くすれば扱える代物が出来るかもしれない。


〈ニンフィはどんなタイプの罠が使えると思う?〉

「ふぃ~?」


 そんな事を聞かれても分からないという様な顔で見られてしまった。


 森の前まで何時の間にか移動していたみたい。

 木漏れ日と風に揺れる木々の音が心地良く聞こえてきた。


「デンドロの枝でござるよな、欲しいアイテムって。それなら幼体であるネギみたいな見た目のモンスターか切り株のモンスターを倒すと良いでござるぞ」


「あんまり可愛い見た目じゃあないんだね」

「ネギに足が生えてる……変なの?」

「切り株の根がウネウネ動いてる方が気持ち悪くない?」


 デンドロの幼体達はコチラから攻撃しない限り襲ってはこない。ネギみたいな子達はリンクもしないので、初心者には狩りやすいモンスターだ。


 切り株のモンスターも同じだけれど、同族が近くで攻撃されるとリンクしてしまうので注意が必要だったりする。数が集まるとネギの子達を呼び出すから少し厄介だ。


「それじゃあ新入りちゃん達はガウちゃん達に任せたわよ。私は少し奥の方に行って染色に必要な素材を集めてきちゃうわね」


〈はい、気を付けて〉


「まぁ、ケリアさんならガウっちみたいなヘマはしないだろうけどね」

「余計な事は言わなくて良いんでござるぞシュネー姫よ」


 僕達のやり取りをみてケリアさんが少しだけ笑って、手を振って奥の方へと進んで行く。


「よ~し、それじゃあ気合を入れて倒すぞ~」

「張り切りは良くない、まったり行こう? 楽が良い」


「ねぇ、ムーンが武器に銃を使えるジョブを選んだのって攻撃とか激しい動きが面倒だからじゃあないでしょうね」


 スズメちゃんの言った事があっていたのか、そっと顔を背けて知らんぷりをする。


「ムーンは元から手先が器用だし、色々と弄れるモノが好きだからね。運動はからっきしだけどね~。その分、アタシが動き回るのが得意だけど」


 にししと笑いながらサクラちゃんが言う。


 その言葉に少しだけムッとした表情になるムーンちゃん。


「サクラ、それはフォローしてるのかな? ちょっと意地悪が混じってない?」

「もう~そんなことないって、それよりもバフを掛けちゃうね」


 そういってサクラちゃんがタロットを取り出して、占う。

 引いたカードを見て、彼女の動きが止まった。


「……ゴメン、クラッシュを引いた」

 小さく舌をチロっとだして、軽くスズメに謝る。


 彼女の引いた絵柄は小さな妖精が塔や盾など色々なモノを砕いている絵柄だった。


「ちょっと! なに引いてんのよ!」


 能力アップを掛けようとしていたはずなのに、スズメに掛かった効果は防御力ダウンと攻撃力ダウンの二種類だった。


〈なるほど、本当にカードによって掛かる効果が変わるんだね〉


「そう、面白いでしょう!」

「運が悪いと大変そうだね、その能力」

「もう~、デバフが解けるまで、その辺を散策してようよ~」

「それは、賛成?」


 まだ敵にちょっかいを出す前だから、別に能力減少している状態で喧嘩を吹っ掛けるの必要も無いからね。まぁ、しょうがないか。


「ついでに、鬼達の集落に腐葉土でも持って帰るでござるか」


 ガウの言葉に頷いて、僕とシュネーは良さそうな場所の土を掘って持ち帰る事にした。




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