【オンライン】209話:新たなトラップと連携の試行錯誤(2)




 森に移動してくるまでに、それぞれの戦い方を見せてもらった。


 スズメちゃんは遠くから大きな弓で高い火力を出していた。

 けれど、素早い敵にはやはり苦戦するようだ。


 近付かれるとナイフで戦う……筈だったのだが、大弓を斧みたいに使って敵を叩ききっていた。

(殆ど潰していたと言った方が正しい気がする)。


 普通は壊れるだろうと思うけど、まぁゲームだしね。

 そういう所はファンタジーで済むのだろうか……あ、少し壊れてるんだ。

 そりゃあ斧みたいに使ってれば壊れるよね。


「もう、この弓って脆くない!」


「いやいや、それが普通なんだな。と言うか普通なら木っ端みじんに吹っ飛んでるんだな」


「ねぇスノー、スズメには斧を持たせた方が良いって。あの子に弓なんて持たせちゃダメだよ、見てよ外れた場所を、地面が抉れてるよ」


 小柄で華奢な体付きに似合わないパワーと器用さで大弓を振り回しても自分にぶつける事無く、上手く敵にクリーンヒットさせるのだから凄い。


 スズメちゃんのプレイヤースキルが高いから出来る芸当だろうな。


 ゲーム自体はそんなにやっていなくても、基本的にゲームが上手いんだよな小鳥ちゃん。


「傍から見たらゴリラ――」

「シュネーちゃ~ん。何か言ったかな?」


 ハイライトの無い瞳でじっくりと見られながら言われ、言おうとしていた言葉を中断してシュネーは必死に首を左右に振っている。


「そう、ならよかった」


 女の子にゴリラはダメだよ。


〈シュネーはもう少し、言葉遣いには気を付けようね〉

「ぶーぶー、事実なのにさ」


 不貞腐れながら言うけれど、必死に声を抑えてスズメちゃんに聞こえないよう喋る。


「それにしても、皆の戦い方は独特よね~」

〈二人の戦い方ってどんな風になるんですか?〉


 スズメちゃんの戦いは例外として、双子ちゃん達の戦い方が想像し辛い。


「二人とも色々と違いはあるでござるが、共通点があるんだな」

「共通点……武器だって全然違うのに? と言うかタロットでどうやって戦うのさ」


 確かに、武器らしい物をサクラちゃんは持っていない様に見える。


「アタシの武器はコレだよ」


 そういって見せてくれた得物は鉄扇だった。


〈やっぱり武器は違うよね〉

「銃と鉄扇だもんね、何が一緒なの?」

「戦った時の技で分かるかも?」


 ムーンちゃんが茶目っ気たっぷりに人差し指を立てて唇に当てる。


 二丁拳銃で普通に発砲して攻撃すると、次に何かしらのスキルと使ってくれた。


「じゃあいくよ? 《チャージバレット》」


 それと同時にムーンちゃんからダイスを転がしたような音が聞こえてきた。


 転がり落ちたダイスは3と5の目が出た。

 すると三発の弾が発射されて、ダメージが二倍のダメージを相手に与えた。


「それじゃあ次はアタシだね」


 サクラちゃんは戦う前にタロットカードのホルスターに触れる。彼女の周りにカードが飛び出して、クルクルとサクラちゃんの周りを一枚一枚のカードが次々に周り始める。


 その中からランダムに一枚、彼女自身が選んで手に取る。

 残りのカードは纏まってカードホルスターの中に納まっていく。


「騎士の剣か~。まぁ良いカードを引けたかな」


 人差し指と中指で挟み、カードを目の前に翳すとサクラちゃんの攻撃力がアップした。

 普通に攻撃した時のダメージより高い火力が出ている。


〈二人ともランダム要素のある職業ってこと?〉


「えぇ、ムーンちゃんは技を使うとダイスに左右される攻撃回数とダメージのアップ。サクラちゃんは付与する効果がタロットによって決まるわ。攻撃の属性もタロットで決まったりするのよね~。楽しいジョブだけど、使い勝手が難しいのよ」


 何をするにしても運が絡んでくるという訳か。


 上手くハマれば強いけど……もしかして、悪い効果が付与される事もあるのかな。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る