【オンライン】203話:新しい開拓地(2)




〈元気かな?〉


 まさか話しかけて来るとは思わず、当たり障りのない言葉しか出てこなかった。


「一同、問題ナク元気にヤッテます」

「随分とスマートな体になってるけど、なんでなの?」


 そんなストレートに聞かなくても、シュネーは怖いもの知らずだね。


「リーダーと契約したヨクジツくらいですかね。体が変化していったのは。どうやら縮小というスキルを授かったからだと思いマス」


 ズナミのステータスを見ると、鬼集落の長(グランスコート)という肩書になっている。彼の指揮下、もしくは仲間になると【縮小】の効果を得られ、体の大きさを小さく出来るという効果らしい。

ただ、小さくなれる大きさには限界がある様だ。


〈不便ではないの?〉

「逆に助かっているくらいダ。皆も喜んでイル」


 それを聞いて少しだけ安心した。


「簡単な家ばかりでござるが、前の砦みたいな感じには作らないのでござるか?」

「材料がナイ、それにワレ等は森の者達からの信頼を失っているから」


 ガウの聞いたことに苦笑いを浮かべながら、少しだけ答え辛そうにしながらもしっかりと自分達の状況を教えてくれた。


 材料を入手しようにも、肝心の木や石材が手に入らないようだ。森を滅茶苦茶にした事もあり、森の住人達からは嫌われていて関係を改善しないと森への出入りが出来ないらしい。


「それじゃあこの家とかってどうやって建てたの?」


 シュネー不思議に思いながら聞く。

 たしかに、木材が手に入らないなら家も作れなかったはずだ。


「リーダーの関係者という女性がキタぞ。受付ジョウ?なるモノを生業としているそうだ。ココロ辺りはあるだろうか? たしかカミルと名乗っていた」


「あぁカミル嬢でござるか、その者なら知ってるんだな」

「ソイツが必要最低限の材料を置いていってくれたンダ」


 あの人は本当に行動が早い。と言うかかなり有能な人みたいだ。

 言動には問題ありだけど。


「見直しましたよね。いま、かなり有能な人って思いましたよね」


 ねっとりと僕の耳元で妙な吐息交じりで、頬を擦りつけながら後ろから抱き着かれた。

 驚きの余り、全身が硬直して脳内が停止してしまった。


「私の噂をしていると感じて、出て来てみました」


 明るく元気な声は正しくカミルさんである。


 鼻息を荒くして言うと同時くらいだろうか、シュネーの鋭い飛び蹴りがカミルさんの額に突き刺さって、スローモーションの様に見事に後ろへと倒れていった。


「ボクのスノーに変な事をしないでよね」


 そうだそうだとニンフィも怒りながら、モフモフの体でカミルさんに体当たりしている。

 ただ、ニンフィの攻撃は逆効果っぽいけどね。だって気持ちよさそうな顔をしてるもん。


「全く気付かなかったんだな」

「気配もナク近くに居る、オソロシイ奴だな」


 全くだよ。カミルさんの事を少しでも尊敬した僕の気持ちを返して欲しい。


〈何で此処に居るんですか〉


 ジト目でカミルさんを見つめながら聞くと、何故か照れた様子で僕を見返してくる。


「そんなに見つめられちゃうと照れちゃいますね」


「ダメだよ、上がっていた株を激下げしてくるよ、この受付嬢」

「残念なんだな」

「スゴイ奴なノカ? ただの阿呆なノカ?」

〈多分、どっちもだよ〉


 この場の全員から冷たい目で見られているのに、カミルさんはポジティブに捉えてしまうらしい。浮かれているのか知らないが、こうなった彼女は強いみたいだ。


 放置すること数分くらい。


「こほん、少し取り乱しておりました、すいません」

「今更取り繕われてもね~」


 シュネーの言葉に皆が頷く。


「第二拠点……いえ、此処だと地区ですかね。此処の発展もスノーさんが頑張っていかないと、大きくなりませんし強くもなりません。そこでコチラの品をスノー様にプレゼントしようと思いましてね」


 そう言って、カミルさんが巻物をカバンから取り出してみせた。


「それは、何でござるか?」


「発展盤と呼ばれる台座ですね。この集落にコチラを設置して頂くと、マイホームと同じような場所として扱われます。そして石材や木材を此方に転送できる道具です」


 便利でしょうと見せびらかせるように、僕の目の前に掲げて見せてくる。




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