【オンライン】204話:新しい開拓地(3)
カミルさんが鼻歌交じりに作業している後姿は、本当に楽しそうにテキパキと仕事をしている。ガウにとっては受付での姿が思い起こされるのか、凄く違和感があると言う。
〈……カミルさん? こんなに世話を焼いてくれるのは嬉しいんだけど、大丈夫なの?〉
あんまり特別扱いとかされるのも、良くないと思うんだけれど。
「あぁ~、そう言えば説明していませんでしたね。イベント終了時にスノー様の管理する区域が三か所になりましたよね。それによって私はスノー様の専属になったんですよ」
そういう大事な事は早くに言って欲しいんだけど。
「後はコチラを、お受け取り下さい」
忘れていた事はそれだけでなく、アイテムを取り出して僕に一つの手紙が渡される。
何だろう、普通の手紙っぽいけど。封蝋印までしてあるし。
シリンダースタンプの絵柄は中央都市とギルドの絵が組み合わせた感じの絵だった。
「綺麗だね、結構な厚みがあるけど……何の手紙だろうね」
「……ん? あっ! 待でござ――」
ガウがカミルさんを見ていて、何か叫んだようだけど少し遅かった。
手紙の中身が気になっていた僕達は、なんの疑いもなく封を切ってしまったのだ。
「ふふ、コレで晴れて私は貴女専属の受付嬢となりました」
僕に渡した手紙の封が切れた途端、カミルさんは妖艶に微笑み始めた。
「遅かったんだな。こういう手合いはティフォナ妃が居ないと防げないでござるな~」
悔しそうにガウが自分の髪をクシャクシャとかきむしっている。
〈どういうこと?〉
「説明を要求する! ボク等にも分かる様に放してよ」
「全くダ、我なんて蚊帳のソト、だ」
ガウがちょいちょいと僕の持っている手紙を指さした。
「それは多分、魔法の掛かった手紙なんだな。封蝋印に細工がしてあって、それを開けた対象の名前が契約書に刻まれる仕組みだと思うんだな」
その説明を聞いて慌てて手紙の中身を取り出し、開いてみる。
そこにはガウが言っていた通りの事が掛かれていた。
「スノー様。今後はこういった手を使ってくる輩が居るかもしれませんのでご注意を」
ウィンクして悪戯っ子の作戦が上手くいったという様なしたり顔をされた。
僕とシュネーは少しだけ、それにイラッとしたが助かっている事も多いので、この場では我慢だと思い、何とか耐え忍んだ。
「まぁ実際問題、スノー様とシュネー様だけでは管理が難しくなるでしょう。そこで派遣されるのが私みたいな受付か、専用職のギルド職員になります」
契約書が光って消えていき、僕の体へと吸い込まれていく。
「エーコーさんに頼まれて協力支援していた事を覚えてますか?」
〈アレだけインパクトが強い増築してれば嫌でも覚えると思うけど〉
「ふふ、そうですね。基本的にはあんな感じで手伝わせて頂く事も可能です。手の回らない事を任せて頂ければ、全力でサポート致しますが……今後はポイントを消費するのでご注意くださいね。イベント時はスノー様が隠し条件をクリアーしていたので勝手にやらせて頂きましたけどね。ダメですよ~、ちゃんとクエストクリアーの表示は見ないと」
なんか年上の友達お姉ちゃんに叱られた時みたいな感じに怒られた。
ガウの姉に悪戯して怒られた時を少しだけ思い出したよ。
カミルさんに言われて思い出し、イベント前にエーコーさんから受けたクエストは何時の間にかクリアーという表示になっていた。
成功報酬
《イベント終了時にグランスコートの保護下として同盟関係になり、イベント中は中央都市のギルド支援が受けられる》とある。
「他の地方は最低条件もクリアー出来てなかったので、ずっとエーコーさんの森に居ても問題なかったんですよ。もうちょっとトラブルでも起きてくれると楽しかったんですけどね」
そこが唯一の不満という感じで、少し拗ねた様に言う。
「まぁそんな事はさておき、此処はどういう感じに発展させていきます。スノー様は全然ポイントを使ってくれないので余りに余ってますよ」
それを聞いてズナミのヤツも期待の眼差しで僕を見つめてきた。
キラッキラの視線をそんなに向けないでよ! プレッシャーが凄いんだけど!
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