【オンライン】186話:人が増えれば汚れも増える




「水を綺麗にするのは【ツフトゥラ】まぁ通称はツフトと呼ばれる、半透明で丸い傘みたいな魔物です。もう一体は【コクレア】という、私は好きではないですが、アメーバと言うかスライムと言うか……渦巻いた貝殻を背負ったヘドロを綺麗な土に変えてくれる魔物です」


「そのような奴等が居るのか? コクレアでは無いのだが、同じ事が出来る奴なら【パギュール】というヤツが居る。姿かたちは甲殻類っぽいが、背に貝殻を背負っておる、図鑑に載っているのに近いぞ」


「確かに似ています、パギュールは汚物処理という感じですね、汚水での活動は難しいかと思います。どちらかと言うと陸に住む動物の死骸やフンを分解して森の栄養ある土に変えてくれているお掃除屋さんですね。馬や羊、牛に山羊といった動物や魔物を飼育している人の力にはなってくれると思いますけどね」


 流石は受付嬢という所か、こういう姿を見せてくれれば、周りの人達はもっとカミルさんの事を頼りにすると思うのにな。


 飼育か……人も増えたからな。そういう事も考えないとダメだよね。


〈ありがとうございます。カミルさん、何処に行けば、その二体に会えますかね?〉


「多く生息していて確実に居るのはジャンシーズ側ですね。『湿地平原』と呼ばれる場所で良く見かけるます。けど、スノー様達の場合はグランスコートの奥地へ行けば会えると思いますよ。グランスコート草原を抜けた先に運河があるんです、そこに二匹ともが好む様な環境があると報告が上がってきているんですよ」


 ドラコスの住む都市国家と交流が出来る様になったから、最近になって頻繁に地形報告が上がって来る様になったらしい。


「特にグランスコートに所属している人達ならモンスターは中立の立場で攻撃などはしてきませんから、安全に仲間に誘えるかと思います」


 先日までやっていたイベントのボスを倒してしまうと都市国家との関係は敵対から始まるらしく、ボスを味方にした僕達は安全に行き来が出来るという事らしい。


 都市国家に続く道である、僕等にとってはエーコーさんの森で、他の場所にもそういった場所がある、そこが都市国家との架け橋役となり、交通を許されれば行き来が可能になる。


 イベント進行で必ず敵対から始まり、放置しているとフォレストヒルみたいに敵意が無くなるものの、交流も閉ざされたままとなってしまう。架け橋となる途中の道が都市国家の支配下に置かれて、そこに生息している全ての魔物がアクティブ化する。


 防衛に成功した場合は、都市国家とは敵対関係になり道も開かれる。コレがヴォルマインの人達がやったクリアー方法だ。その場合は敵意だけで都市国家の半数がアクティブ化する。道中の魔物には襲われる事はない。


 防衛に成功し、尚且つボスも倒したジャンシーズは道中の道にも都市国家の魔物が溢れて中立と敵対する魔物が半々居る事になる。


 ミカさんから送られてきた、今日のズィミウルギア新聞にはそういう情報が載っていた。


「ねぇカミルさん、それって二体居ないとダメなの? このカタツムリみたいなの気持ち悪いんだけど」


 シュネーはカミルさんに見せて貰ったモンスターの絵を見て顔を拉げている。


「汚水を綺麗にするなら必要な力かと思います。ヘドロをどうにかしないと根本的に水質は向上しませんよ? 綺麗に見えるだけで人の飲める代物ではないかと」


「この二匹が居て初めて人が口に出来る水になるってことか?」


「はい、中央都市でも彼等の力を使って水質を上げているのは確かですから。きちんとした処理をした後で生活水として各家々に水を引いています」


 あんまり知りたくなかったような情報だな。まだスライムが綺麗にしてるとか言われた方が精神的には良かったかもしれない。


「スライムとかでは、ダメなのでござるか?」


 ガウも僕と同じ事を思ったのか、カミルさんに聞く。


「癒しの力を持つスライムが大量に居れば……ですが、それは精霊族に進化したスライムですよ? それにスライムは環境の影響を受けやすく、淀みが溜まった場所に居れば瘴気を纏った邪悪な魔物に早変わりして、逆に悪影響をまき散らす存在になるかと思います」


 なるほど、それじゃあ意味が無いな。


 こんな感じのスライムになるとモンスター図鑑を見せて貰ったが、此処に居る全員が顔を顰めて、絶対に会いたくないと思うような気色悪い触手の塊みたいなスライムだった。



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