【オンライン】187話:森の管理者は寂しがり




「このモンスター達は別に知性は無いので捕まえちゃえば良いんで、此方の専用容器に三から四匹くらい入れ、繁殖機に入れて水の中に添えて置くだけで、後は自動的に管理してくれます。まぁ、彼等の家みたいな感じだと思ってくれれば良いかと思います」


 僕と同じくらいの大きさで、半透明のカプセル容器が目の前に二つ置かれる。


「一つで千ポイントです。ご購入されますか? スノー様のポイントはイベントボーナスと合わせて、今は五万ポイントも使われずに溜まっていますよ」


 なんだろう、言葉の隅に少しだけトゲを感じる。


〈は、はい。ありがとうございます〉


「あぁ、そうです。此処で会えたことですし、次いでに此方もお渡ししておきますね」


 赤い六角形の鉄で出来たバッチで、中央には鬼の顔が描かれている。


〈コレはなんですか?〉

「可愛い鬼マークだね」


 シュネーと一緒になってバッチを表裏とクルクル回して見てみる。


「そちらは勲章です。この森の少し離れた場所に鬼達の集落が明日にでも出来ます、そこを開拓し、どういった場所にするかは貴方次第です。鬼達を管理し導いてあげられるのは、スノー様になるのです、しっかりと彼等を育て、見ていてあげてくださいね」


 勲章の次には分厚いカタログ集も一緒に手渡された。


「そして此方は、エーコーさんの泉で見たと思いますが、スノー様に解放された購入できる施設が載っています。今まで物置小屋や井戸などのグレードも上物が揃っています」


 次はしっかりとコレらを使って下さい。

 そんな字がカミルさんの後ろに表れ、僕を威圧してくる様に迫って来る。


〈わ、分かりました〉


 最近は女性に迫られる事が多い気がする。


「奥地に行けるでござるな。今まではどうやっても先に進めなかったのに」


「仕方なかろう、鬼共の力は強いのだからな。簡単には行き来が出来ない様に迷いの魔法で結界を張っていたのだ。此方からも行けぬが向こうからも来れないはずだったのだがな」


 それを破ったのが、今回の突如として現れた鬼達だったという。


「ただ、あの鬼達を見るに魔術に詳しい訳でもなさそうだ……気を付けて行くのだぞ」


 森を切り開いて力を弱めたといっても、簡単には突破されないように工夫した魔術を破られた事がエーコーさんにはどうも引っ掛かるようで、僕等を真剣な目で見ながら心配そうに注意をしてくれる。


「あらあら、大丈夫よ。何かあったらすぐにこっちまで逃げてくるから。それくらいの実力があるから先に進ませてくれるのでしょう」


 ケリアさんが石垣の向こう側からひょっこりと顔を出して出てきた。ウィンクをしながらエーコーさんに意味深に微笑みながら僕等の横に立つ。


「うむぅ。そうじゃが……本当に大丈夫なのかの」


 僕とシュネーをチラチラと見ながら、他の皆にも目を向ける。


 ケリアさんがそっと近づいて、エーコーさんに聞かれない様に小声で喋る。


「彼女は今までずっとグランスコートに居たでしょう。何だかんだで寂しいのよ、コレで疎遠になってしまわないかってね」


 後は僕からよろしくという感じで、小さくウィンクを飛ばして背中を押された。


〈僕等が居ない間は、鬼達の事は任せても良いですかね?〉


 ありきたりだが、コレでエーコーさんも気兼ねなく村に来やすいだろう。ついでに村人と仲良くなった妖精さん達でも連れて行ってあげれば、この泉とも交流がしやすくなる。


「それくらいなら朝飯前だぞ」


 僕の言葉を聞いて、不安そうな表情から一転。

 明るい日差しで花を咲かせるような微笑みを見せてくれた。


〈それじゃあ、僕等は奥地に行ってみますね〉


「ケリアっちも行くんだよね」


「もちろんよ~。先の道が解放なんて大イベントを逃す訳ないじゃないのよ。行くなら貴方達と最初に行こうって決めてたんだから」


 ケリアさんは少しプリプリと頬を膨らませ、冗談半分に怒りながら言う。


「ここで待ってれば貴方達が来ると思って、ずっと待ってたのよ」


「連絡をくれれば良かったんだな」


「フレンド登録からⅮMを飛ばせるだろう」


 あの機能ってそういう事も出来るんだ。


 説明書を取り出して、フレンドの欄を見てみると確かに連絡手段の場所に書いてある。


 へ~、色々と便利な機能も付いてるんだな。




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