【オンライン】163話:イベント騒ぎは大騒ぎ




〈少し皆に相談があるんだけど、良いかな?〉


 ティフォの服をクイクイと引っ張って、打ち込んだ文字を見せる。


「一々聞かなくても良いっての。皆を集めて来るよ」


 そう言ってすぐに疎らに散らばってしまった皆を集めてくれる。


 コレだけ色々と変わっているんだから見て回りたいのは僕も同じだけど、今は鬼達をどうするかを考える時間の方が大事だ。


「もう方針は決まったのかしら?」


〈うん、ボスは倒すんじゃなくて追い出す感じにしようかなって思ってる。追い出すというか、森から誘い出すと言う方が良いのかな……とにかく、戦って倒す事は意識しない感じでさ、前提として鬼達の本陣を再起不能にしなくちゃあいけなくなるんだけどね〉


 元々、敵陣を使えない状態にすると言うのは決まってる方針だし、そこはあんまり変わらないから問題は無いのだが、再起不能まで破壊する事になる。


「今までの戦法で行くという事でござるか? 囮役は拙者達が務めるという感じなんだな」

〈そうだね、釣れるかは正直分からないけど〉


 他の人達に任せるられるくらい信頼の出来ると言える人達は居ない。


 ダイチさんは村の守りに専念させたいから無理だ。


 エーコーさんは泉を守ると言っている。

 プレイヤーさんでそこまでの話を出来る人なんて思い当たらない。

 やるのなら僕等がやるしかないという事になる。


〈問題は破壊工作を頼む人を誰にするか、なんだけど……どうしよう〉


「あの人達に頼めば良いんじゃない?」


 頭の上からシュネーが指さした方向を見てみる。


「丁度こちらから申し出ようと思っていた所だったんですが、流石ですね」


 モグラを肩に乗せた好青年を先頭に、大蜘蛛を連れた小柄なおじさん、女性も数人混じったパーティーのようだ。女性たちも個性的な格好をしているが、このゲーム内ではコスプレみたいな衣装は普通なのかもしれない。


 村にいるプレイヤーさん達は大体の人が似たり寄ったりだしな。


「敵陣の破壊工作はウチ等に任せて欲しいんだ」

「ウサギさん達とも仲良くなってね、手伝ってもらうつもりなんだけど良いかな?」

〈えぇ、手伝いを頼める程に仲良くなっているなら別に構わないですよ〉


 僕が許可を出そうが関係ないしね。


 だってティフォの言う事しか聞かないんだから。シュネーも少しづつだけれど信頼関係は築けているようだけれど、どうも僕とは一定の距離を置かれてしまうみたいだし。


 あの双子のせいで、小さい魔物達とはどうも仲良くなり辛いようだ。


「ミカさんのアイテムを数個で良いんで、貰っても良いですかね」

「オッケー、トレードするからメニュー開いてね」


 お互いに向き合って、メニュー画面を開き透明なタイルをミカさんが相手に渡す。


「こんなに……良いんですか?」

「試作品だしね。それに使った後のデーターが欲しいから色々と試してみてくれない」

「なるほど、分かりました」


 モグラを肩に乗せた青年がミカさんから渡されたタイルを弄ると、マジシャンがトランプを扇状に開くみたいにスライドして数を増やし、パーティーメンバー其々に配る。


「使用方法は?」


「強い衝撃を与えるか、魔力を流し込むの二種類。魔力の場合は込めた魔力量に応じて威力が変わるし、魔力が多いほど起動するまでの時間が掛かるから注意して」


 という事はだ、ミカさんが工場で溺れかけたのは相当な魔力を流し込んだからという事になる。魔力を込め過ぎて時間が経ってから爆発したんだな。



 それで気付かずに工場が水で満たされちゃったんだろうな。




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