【オンライン】162話:イベント騒ぎは大騒ぎ
「どうじゃ、見違えたじゃろう」
エーコーさんが興奮しながらも顔や態度に出さないよう振る舞っているのだけど、何時もより声は張った感じで胸を突き出す様に胸を張り、口端が上がり気味だ。
「凄いわね~、防壁の内側からもしっかり攻撃が出来る小さな穴もあるし、見張り台には固定された連射式のボウガンまであるじゃない」
「それだけじゃないんじゃぞ。堀も作ってみたんじゃ」
「堀を作るのもかなりらくだったねぇ。魔法というんはほんに便利だね」
土魔法で御堀まで作ったんだ。流石と言うか、かなり凝った作りになってるみたいだ。
「見張り台から登ってみると良いぞ、かなり良い出来になったのだぞ」
自慢したくてしょうがない様子のエーコーさんが可愛らしくて、全員が視線を合わせるとクスッと少し笑ってしまった。
「ど、どうしたというのだ?」
そんな周りの様子が分からない彼女だけが分からないようだ。オロオロと全員を見回して不思議そうに首を傾げている。
〈なんでもないです〉
「そうそう、気にしないで大丈夫だよ」
僕とシュネーはニンフィに乗って高い場所に上がって御堀を見てみる。
〈エーコーさん、アレが御堀?〉
「良い出来じゃろう、アレなら簡単には侵入できんぞ」
彼女の言う通り簡単には侵入できないだろう。
だって溜池みたいな感じではなく、それなりに流れのある小川みたいだもん。
確かに川を使った御堀もあるけどね、どういう仕組みになっているのか知りたい。あんな流れる様な傾斜も無いのに、心地良い感じで水の流れる音が聞こえる。
「水門を上げればすぐにでもお主達の村まで水が流れてゆくぞ」
「どうやって作ったん……あぁ、カミルさん」
「それしか考えられないんだな」
今まで会話に参加せず、隙を見て何処かに逃げ出そうとしていた彼女をケリアさんが捕まえてくれる。アズミルとミカさんも行く手を阻む様に立ち回っていたようだ。
「もう何ですか、別にグランスコートに必要以上の手助けはしていませんよ!」
「水門なんて設置しといてよく言うわね」
「そんな事ばっかりやってるから怒られるのに気付きなさいよ」
ミカさんとケリアさんは呆れながら言う。
「しまった、逃げ出そうとする人を見るとどうしても捕まえたくなっちゃうのよね」
アズミルに至っては、彼女の変なクセのせいで体が勝手に動いたらしい。
それを聞いた瞬間にガウとティフォの体が少しだけ震えていた。
「何を言うんですか、私を腕前を見せなければ誰も頼ってくれないんですよ」
「それはアンタがいっつも面倒くさそうに仕事をするからでしょうに、それに変に干渉するから色々とこじれるのよ」
コンコンとカミルさんの御凸を突きまわすミカさん。
そんな二人を他所に、エーコーさんはもう周りの設備や景色に見入っている。
「此処の守備は気にせずに鬼共の陣地を潰してくる良い。この砦は我が守るからの」
ニンフィとは色違いの子達を撫でながら、何やら闘気に満ち溢れているようだ。
〈エーコーさんに一つ聞きたいんだけど〉
「なんじゃ?」
〈鬼って殲滅しなきゃダメかな?〉
「ふむ、別に殲滅する必要は無いな。我はこの森を守ってくれるならどんな形でも良い」
最悪でも追い出せば、このイベントは完遂した事になるのか。
今のところ僕等は森を守れているって判定なんだろうな、エーコーさんとの関係は信頼できる仲間という感じの表記をされている。
ボスを森から遠ざける事が出来れば良いなら、何とかなるかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます