【オンライン】138話:イベント騒ぎは大騒ぎ
集合住宅を一時的な宿泊施設として使ってもらうとして。
後は民家が出来るまで我慢してもらうしかない。
話し合いの結果で、最優先として鍛冶屋さんが最初に建てられる事になっている。
衣服はケリアさんの商売がてら、住民に品を配り、商品を見て貰ってからヤル気のある子や腕の良い人を雇うと言って、良いお針子さんを探し出すと息巻いている。
エーコーさんは外観が悪いと言い、建築を担っているボウガさんや引っ越して来た大工さん達と一緒になって、木を生やしたり花壇を造ったりしていのだ。
そして人が増えた事でちょっとした問題が生じていた。
〈どうしよう、木材や石材があっと的に足りない〉
「プレイヤーはテントでも問題はないんだがな」
「もうすぐ真夏の気温になっちゃうけど、まだまだ気温を気にしなくて良いのが救いね」
ケリアさんとティフォが一緒に考えながら、集落を歩き回ってくれている。
季節もしっかりと影響しているので、今が冬だったら大変な事になっていただろう。
「ねぇスノー、集合住宅の周りに何か居るんだけどさ、アレってなにかな?」
シュネーが僕の頭の上から顔を覗かせて、目を凝らしている。
確かに綿毛の様な光の玉がフヨフヨと浮いている。
〈幽霊……じゃあないよね〉
「スノー姫よ、まだお日様は天高く昇っているでござるぞ」
〈いや分かってるよ〉
「スノーは怖がりだからね。しょうがない――」
〈シュネーは少し黙ってて〉
頭の上に居るシュネーを口元からガッシリと掴んで、ぬいぐるみの様に抱き抱えてやる。もちろん、口元だけは押さえて鼻から息は吸える様に気を付けながら。
「とりあえず、皆で近付いてみようぜ」
相手が小さい事もあって、ティフォを先頭に驚かさない様に極力だが物音をたてない様に注意しながらゆっくりと歩いて行く。
角から覗く様に皆で顔だけ出して見る。外から見ればトーテムポールの様な感じで。
クスクスと笑う声を発する妖精ちゃんと、ちょっとだけニンフィに雲のモンスター。この二種類が集合受託の周りで遊んでいた。
「なんじゃお主ら、そんな所で固まって。何かの遊びかの?」
不意に後ろからエーコーさんに声を掛けられて、見入っていた僕ら全員が体をビクッと震わせて、取り繕う様に姿勢を正した。
別にやましい事をしていた訳じゃあないのにね。何と言うか気恥ずかしい思いだったのは皆が同じだったようだ。条件反射というか、覗いてて不意に声を掛けられれば誰だってこうなると思う。
すぐ冷静に戻った僕が指を指して、素早くタイピングする。
〈あの子達を見てたの〉
「ほう、あ奴等もこっちに来ておったのか……それに、花の魔物まで居るとはな。やはりここは面白き土地じゃな、前までは此処にはニンフィぐらいしかいなかったはずじゃが?」
そういえばモンスターと仲良く暮らしてる場所だって思っているだけで、此処は人がモンスターが湧き出る場所だって教えてなかったっけ。
「条件は分からないけどね~、人が移り住むとこうやってモンスターが湧くんだって」
「ほう、仲良くなって一緒に住んでおるという訳じゃあないのだな?」
〈自分達も此処に来た時はそうでしたよ。あのウサギさんとハチさん達がそうです〉
「懐かれているのはティフォナ妃でござるが――痛い、っちょスノー姫よ止めて」
あのマイホームの主は僕だと言うのに、結局ティフォに小っちゃくて可愛い子は全員がヤツの元へ行ってしまう。
「良いじゃねぇか、その代わりにお前は大型のモンスターに好かれるんだからさ」
〈小っちゃく可愛いのが良いの。モフモフしたいんだよ〉
「俺はカッコ良く大型のモンスターを乗り回したいんだよ。なのに、嫌われるんだぞ」
血の涙を流しながら迫って来るので、思わず怖くなってシュネーでガードする。
「わわ、ちょっとスノーってばやめて⁉ 怖い、近付くなティフォっち!」
「いった、コラ蹴るな、分かったから」
シュネーの御蔭で何とか接近してくるティフォから身を守れた。
「ふむ……あぁ、なるほどのう。また面白い加護を持っておるな」
エーコーさんがスッと目を細めて見つめられ、僕等の事を調べたのか楽しそうに笑い出した。
「あの種類の魔物は無理じゃが、妖精達なら影響は無いぞ。仲良くなれるかはお主の行動しだいではあるが、概ね大丈夫であろう」
〈えっ! 本当ですか⁉〉
「こんな事で嘘など言わんぞ」
〈じゃあ早速、仲良くなってきま――〉
そう言って僕が飛び出す寸前でティフォに首根っこを掴まれた。
「はいはい、後でな」
「今は見回りがてらの、話し合いが先でござるよ」
「ごめんなさいね~、此処のトップはあくまでもスノーちゃんなのよ~。区画の決め事もあるし、少しの間は我慢してね~」
「お仕事だってさ、ファイト―」
〈なに気楽に言ってるの。僕もヤル事がるってことはね、君にもあるんだよ〉
「へ? ちょ、ちょっと何させるきさ⁉」
シュネーだけは逃がさない様にしっかりと抱きしめてやる。
そのままティフォにズルズルと引き摺られて、集落の中央広場へと連行された。
「はっはっは、そうじゃ良い事を教えてやるぞ。あの妖精共と仲良くなりたかったら、公園や花壇を我に任せると良い、最高のモノを造ってみせよう」
それは、良い事を聞いたかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます