【オンライン】137話:イベント騒ぎは大騒ぎ
今日も朝から樹一達とログインしているが、マイホームの外では色々な人が忙しなく動き回っている。気のせいか分からないが、人が増えている気がする。
「凄いでござるな、あっちこっちで建設ラッシュなんだな」
〈ある程度の区画整理はしとかないと不味いかな?〉
「家って大きくない? ティフォっち、アレなに?」
「多分……集合住宅みたいなヤツじゃないか?」
なんかスリムなゴーレムが二体ほど居るし。
何時の間に増えたのだろう。
〈ねぇパニアさん? あんなゴーレムいたっけ〉
『アルジのテシタが、ソザイをワケてくれたのだ』
〈部下? どういうこと?〉
何時も組むメンバーをパニアは部下なんて呼ばないだろう。
とすると、昨日の戦闘に協力してくれた人かな。でも何で部下なの。
「あら~、おはよう。しっかり眠れたかしら?」
ケリアさんが僕達に気付いて、手を振りながら駆け寄ってきた。
〈ん~どうでしょう、もう少し続けたくて、なかなか寝付けなかったですけどね〉
樹一くらい大きければ多少の夜更かしは許してもらえただろうけれど、お母さんや小鳥ちゃん達が常に僕に絡みついて、ゲームをやらせてくれなかっのだ。
結局、眠るしか選択肢は選ばせて貰えなかった。
「それより、また人が増えてませんか?」
「んふふ、増えたわよ~。ヴォルマインやジャンシーズに住むこの世界住人もプレイヤーもグランスコートの仲間に加わってくれた人だって居るわよ」
〈じゃあ部下っていうのは――〉
「プレイヤーさんが分けてくれたってこと?」
シュネーが僕のタイピングに続くように頭の上から発言する。
「えぇ、ゴーレム大好きっ子が石材を取りに行ってたついでにね」
『ホキュウはタスカル。レイをイッテオイてほしい』
〈補給って……自然に回復しないの?〉
『ジブンはする。しかしツクリだしたモノタチはしない』
パニア自身が纏うゴーレムボディーは自然回復が出来るが、分隊であるゴーレム達は元にした石材を消費しないと体力の回復が出来ないらしい。
『まだイシのみ、ノウリョクがウマくアツカエるようになれば、テツのゴーレムもツクレル。まだまだ、シュギョウぶそくのようだ』
バリスタやトラップに使う簡単で小さいモノなら鉄でも動かせるようで、生き物の形をしたゴーレムを造るのは、まだまだ難しいらしい。
〈この戦いでランクアップが出来ると良いね〉
『うむ、ショウジンする』
僕の胸元からタリスマンが飛び跳ねて、何時もの定位置である台座で踊りだした。
今まで機械的に動いていただけだったゴーレム達が、意思を宿したように動き出す。
「おう、スノー。やっと起きやがったか、いきなりで済まねぇがパニアに家の柱を支える手伝いをしてもらいてぇんだ」
ボウガさんが木材を切り分けながら、大声で僕に話しかけてきた。
〈警備は大丈夫そうですか?〉
「あぁ、人が増えたからな。その分はこっちに回して貰いたい」
〈パニア、いま動かして問題なさそうなゴーレムって何体くらい居る?〉
『ニタイ、ホカはケイビけいかい、ミマワリをしている』
〈じゃあ二体はボウガさん達の方を手伝ってあげてよ〉
『リョウカイした』
段々とパニアの動きが手旗信号の様に見えてきた。
クルクルと回ってはピタッと止まり、右左に折れ曲がったりしてクイックイッと動く。
「ちょっと活気が出てきたな」
「でもさ、人が住むってなると、モンスターも増えるのかな?」
〈一般の家庭にはそこまで多くないんじゃない〉
「その理由は何でござる?」
〈イーゴさん。あの人の家には五体くらいだったし〉
逆にボウガさん宅は十五匹以上はスライムが動き回っていた気がする。
解体屋のレースさん宅は二人だけれど、二十くらい馬のモンスターが居た。
住んだ人に関連しているのか、家か場所か人など。まぁ、まだその辺は分からない事が多いし、今考えても仕方ない。
やるなら場所だけ、家だけ、人が住んでいる場所と分けてみないとだしね。
モンスターによっても違うのかもしれない。
「ひとまず、周りを見回ってみようぜ」
「建築中の建物ってなんか今しか見られないからね、なんかワクワクするよ」
僕が思考を巡らせていると気付いたのか、ティフォとシュネーが背中を押してきた。
〈もう、考え事をしてるのに〉
「お前が考え始めると長いんだよ、戦闘が始まる前の準備運動がてら動けよ」
「増えた住人って見てみたいじゃん」
お姉ちゃんに引っ張られる様にして、しっかりとティフォと手を繋いで歩き出す。
「はは、よう嬢ちゃん達。元気してたかよ?」
なんか妙に暑苦しいダンディーなオジサンが話しかけてきた。
「……タムさん、こんな所で何してるんです?」
「何ってオメェよ、引っ越して来たに決まってんだろ」
「こっちで稼ごうと思ってね。ダンナと一緒に此処で鍛冶屋を開くんさ」
タムさんの後ろからひょっこり顔を出していう女性もいた。
〈ブルさんも……そうですか、よろしくお願いします〉
「まさか、お嬢さんが此処の長だとは思わなかったがね。ダンナ共々、よろしくたのむよ」
鍛冶屋さんがこの場所に出来るのか、頼もしい人がまた一人増えたな。
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