【オンライン】139話:イベント騒ぎは大騒ぎ





 皆で中央広場まで来た時にカンカンッと警鐘が鳴り響く。


「拙者とティフォナス妃は防衛の方に参加してくるでござる。そっちはケリア嬢にお任せして大丈夫なんだな?」


「えぇ、しっかりとスノーちゃんとシュネーちゃんの護衛を務めるから、こっちは気にせず安心して行ってらっしゃいな」


〈え? 僕が行かなくても大丈夫?〉


 トラップ関連は僕が居ないと機能しないんじゃないの。


「ゴーレム達が動いてくれるだけでだいぶ楽に回せるようだぞ。トラップというか兵器の方も臨時に動かせる助っ人が居てくれるみたいだしな」


 ティフォがちょいちょいっと小さく指さす方向には、昨日は出店を開いていた内の一人が、せっせとバリスタを弄っていた。


「使用権限はね、スノーちゃんが許可した人ならパニアちゃんが協力してくれるって言うのよ。今のところはボウガさん一家が担ってくれてるんだけど、流石にこっちの建築で忙しいみたいでね、戦闘の方にも信頼できるプレイヤーが居た方が良いと思って。事後報告で悪いんだけど、良いかしら?」


 ケリアさんが申し訳なさそうに手を合わせて頭を下げてくれる。


〈……もしかして、深夜にも襲撃ってありました?〉


 リアルで朝だけのイベントと言うのも不公平だろう。それにこういったゲームは大体の人が深夜帯でゲームを楽しんでいる大人が多いと雷刀と樹一が言っていた。


「あ~、誰かから聞いたのかしら」


 ちょっとばつが悪そうに眼を逸らすケリアさん。

 どういった説明をしようかと焦る感じが可愛らしくって、クスッと耐えきれずに笑ってしまった。


「え~、夜もあったの⁉ ボクも参加したかったよ~」


 シュネーの気持ちも解らなくはないが、子供の体なのだから寝る様に言われるのは当たり前だし、僕がケリアさんの立場でも同じ様に振る舞うだろう。


〈ダメだよ、気を使って教えなかったんだろうし。子供は夜になったら寝なくちゃね〉

「もう~、スノーちゃんったら」

〈そういう事でしたら問題ありませんよ。元々、僕一人じゃあ無理が出てきますし。使える人が増えてくれるのはこっちとしても色々とありがたいです〉


 ケリアさんと一緒に少しだけパニアの居る台座まで戻り、事情を説明してから露店大将と呼ばれる人の使用権限を可能にして上げた。


 自由に使える広場や防衛戦闘の近くに建てた休憩所近くにはテントがチラホラ見える。そこで休んでいた人達が何時の間にやら綺麗サッパリ消えている。


「皆は音がなったらサッと飛び起きて行っちゃったね」

〈行動が早いね~〉


 午後になればもっと人が増えるのだろうか、そういう箇所も追々に作っていかないと。


   ※※※


「よう待ってたぜ」

「アンタの御蔭か、最近は家の稼ぎが増えたよ」


 レースさんやコフさん。それにイーゴさんなど、この集落に住んでいる主要メンバーが勢ぞろいしている、中には見た事もない医者っぽい白衣を着た人もいた。


「新しく住んでくれるってぇのは嬉しいが、流石に好き勝手に家を建てられちゃあ後々に争いの元になっちまうからな。ここらで決めておきてぇんだ」


 ボウガさんが皆を纏めてくれていて、そっせいんして発言してくれる。


「自分はほぼ端っこに住んでいますからね。気にしませんが……あの一画を医療区画にしてくれるとありがたいですね。森や薬草園を作りたいですし」


 白衣を着たイケメンさんが淡々と語る。


「先ずは自己紹介をしろってんだ。お前と嬢ちゃんは初対面だろうが」

〈えっと、初めましてスノーです〉


「はい、よろしくお願いします。自分はトクタと言います。家に湧く魔物は【ククヴァヤ】と言うモンスターらしいですよ。ちなみにこの集落全体の健康管理をしている医者だ」


 ここに樹一が居ないのが悔やまれる。多分、ギリシャ語なんだろうが全くわからない。


「フクロウよスノーちゃん。色々な色の子がいたわ。すっごい可愛いの」

「へ~、今度見に行っても良いですか!」


 シュネーが興味深々の様で、興奮しながらトクタさんに絡みに行った。


「別に構わない。ただ、病人が居る時は静かに頼むよ」


 小さい梟は可愛いんだけどね。飛ぶ音とか聞こえないって言うし、僕は一度も触れ合ったことのない動物だから、ちょっと躊躇してしまう。


〈仲良くなれるかな〉


「大丈夫じゃないかしら? この世界のフクロウは大型に属する子が多いのよ。ピースガーデンでは王族護衛の騎獣隊にも飼われているって話よ」


「という事は……やったね、スノーでも仲良くなれるんじゃない」

〈や、確かにモフモフしてそうだけどね。梟って大きくなったら怖いと思うんだけど〉


「ははは、なに大丈夫さ。数は多くないが賢い子達だからね。君を怖がらせることはしないだろう。むしろ保護対象として認識されそうではあるがね」


 それはどういう意味か、小一時間くらい聞いてやろうと思ったがやめておこう。


〈でも医療区画なら……確かに広めに確保しておきたいですね。人数が増えたら施設の拡張もしたいですし、薬草園や森の管理も兼ねてエーコーさんと要相談ですね〉


「むぅ……なるほど、見た目に騙されてはいけない様だね」


 なんか一瞬だけ鋭い視線を感じたが、すぐにニコニコした雰囲気に戻ってしまっている。

 とりあえず、気にせずに話を進めよう。


〈そうなるとレースさんコフさんとも合わせて、牧場付近は反対側にして良いですかね。畑とか育てる場所の近くにしたいんで〉


「外に出るにも近いし良いんじゃないかい。解体作業もその方が楽だしね」

「俺は馬が乗りませるなら何処でも構わないぞ」


 鍛冶屋の位置は民家から少し話した位置にして、大通りから広場付近にしよう。

 そんな感じで色々と皆さんの意見を聞きながら、決めていく。


〈ケリアさんのお店も広場近くで良い?〉


「もう、最高よ~。あぁ、どんな感じのお店にしようかしら」



 其々に思い描く家を想像しているのか、皆のテンションがやけに高い一日だった。




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