【オンライン】136話:イベント騒ぎは大騒ぎ(二日目)



 最初の勝利から数時間経つと、また同じように攻めてくる事が分かった。同じ手は通じ難く、しっかりと対処してくるようになった。

 ワザと前線が崩れたフリで誘い込んだり、正面だけ人数を少なくして左右の嵩上げした丘防壁をガッチリ固めたりして対策をして全ての攻撃を防いだ。


〈リアルの時間で言うと一日に三回なんだね〉

「基本的には時間を区切って、休憩時間込みでイベントが開始されるみたいだな」


 この状況から攻め込んでも良いし、今の状態を維持するのも良し。その辺は手伝ってくれている人達と話し合った方が良さそうだ。


 もうすぐ週末だしお休みの人も多いだろう。


「ゲームの中だと何日か過ぎた様な感覚だよね。勝どきから宴を約三回もしてるし」

「食べても太らない……最高じゃないですか」


 蛮族の様に肉料理やお菓子に果実を頬張っているシュネーとアズミル。


「お酒だって気にせず飲めるんですから、本当に良いですよね~」


 リアルではどうか知らないけれど、笑い上戸のミカさんと静かにお酒を嗜むケリアさん。妙に色っぽくなっているのは何故なんだろう。


「ちなみに、お酒を飲むと{酔い}というバッドステータスが付くんだな。混乱だったり魅了だったり、アルコール摂取量に対してバッドステータスの重ね掛け状態なんだな」


〈ふ~ん、そうなんですね〉


 ガウの説明を聞きながら、ケリアさん達の近くに置いてある酒瓶に手を伸ばす。


「ゲームだからって、子供がお酒を飲んじゃあダメよ」

「まぁ子供が飲んでも、ただのジュースとして処理されるんだけどね~」


 ミカさんはケラケラ笑いながら、少しだけ空いているコップにお酒を注いでくれる。


「あ~、ズルいボクも~」

「はいはい、慌てなさんな」


 炭酸水みたいな泡が表面を覆っている。

 シュネーには小さい盃に注がれた。


〈ん~炭酸飲料のリンゴジュース〉

「美味しいね」


「ふふ、良いの見っぷりね」

「はいは~い、ミカさんはこっちですよ~」


 アズミルがミカさんの首根っこを掴んで、キャンプファイヤーで大盛り上がりしている集団の元へと連れズルズルと引き摺って行った。


「あ~ん、可愛い子を愛でたいだけなの~」

「ノータッチでお願いしますね~、お触りは厳禁ですよ」


 骨付き肉を片手に連行していく姿が何とも頼もしいアズミルだった。


「ありゃあ酔ったら面倒なタイプの人だな」


 ティフォは乾いた笑いで二人を見送る。


「絡み酒の人は怖いでござる。永遠と同じ話がループするんだな」


 何かトラウマを呼び起されているガウはとりあえず、そっとしておこう。


〈ケリアさん、週末辺りに攻め込んでみましょう。このまま維持しているのも、何だか危ない気がするんで、他の人達に伝達をお願いして良いですか?〉


「そうね、敵さんも何気に対策を講じてるみたいだしね。長引かせるだけじゃあ危なそうね」


 ほろ酔い状態だけれど、ケリアさんは大丈夫そうだ。


「ふむふむ、週末辺りなら他の人達も時間は作れそうなんだな」


 何時の間にかトラウマから回復したガウが何か呟きながら、メニュー画面を開いて何か操作そしている。文字を打っている事から掲示板か何かだと思う。


「こっちもそれなりに人数は集まりそうよ」

「ヴォルマイン側とジャンシーズの人達の情報を知りたいよな」


 今の情報を整理すると、東側にジャンシーズの人達、西側にヴォルマインの基地。南側が僕等の居る場所という感じになっている。


 北側に守るべき森があってその中央付近に敵軍アジトがある。

 ミカさんからちょっとだけ教えてもらったフォレストヒルの人達は、相変わらず激しい戦いでお互いに競い合っているので、こっち側に手を出してくる余裕は無いそうだ。


 元々がジャングル地帯だったり木々が生い茂る森だったりするせいで、こっちの森まで狙う気は無いという事らしい。


 ヴォルマイン側の坑道には目を付けているようだけど。それは僕等には関係ない。


〈攻め時が決まるまでは、情報収集かな〉

「ふっふ~ん、それなら任しといてよね」


 何時の間にやらミカさんが戻って来て、僕の頭に肘をついている。


「私も協力するので、心配なく。だからノータッチって言ってるのにな~」



「あ~ん、いけず~」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る