【閑話】 グランスコートの集い


   ★★★★【グランスコートの集い】★★★★



 キャンプファイヤーを中心に中年や青年、魔女にゴスロリ衣装の女子など多くのプレイヤー達が火を囲む様にしながら屯している。


「約一週間は防衛状態か?」

「別に攻めても良いみたいよ、少しでも前に進むなら後々の作業が楽になるって」


 ミカもその輪に加わり、ログアウトしたスノー達からの伝言を伝えている。


「にしてもケリアさんや、一日3回ってなんだよ。深夜帯を含めれば計6回じゃんか。ジャンシーズの奴等がちょっかい出して、1から2回ほど緊急で始まるしさ」


「何言ってるのよ。あんなに小さい子に夜も参加しろっていうの? しっかりと夜は寝かさなきゃダメな年ごろよ」


 ワザとらしくプリプリとした感じでケリアが怒りだした。


「そうか、そうだな……すまない」

「しっかりした感じの子だものね、見た目は小学生で中身が別って感じで、子供って感覚じゃあなくなってくるのよね」


 魔女の恰好をした女性がビールジョッキを男らしく一気飲みして言うと、周りの皆が頷きあっている。


「深夜組で少しずつでも前に進めておくか?」

「パニア様のダンスが見れるなら、素材をかき集めて来るぞ」

「少しぐらいなら良いけど、過剰な貢物は止めなさいよゴーレムオタク」


 ミカが半目でゴーレムを磨いているテイマーを止めに入る。


「どの道、石材系アイテムの採掘場所はヴォルマインが握ってるんだ、森エリアを超えて行かなきゃならないんだから、そんなに持ってこれないって」


 道の整備もされていない状態では自身のインベントリに入れてしか運搬が出来ない。だから現状では大量の石材や鉱石の持ち運びが出来ない。


「そうなると、やっぱり森のエリアは取ってあげたよにゃ~」


 猫耳を付けた女狩人が料理を配りながら、呟く様に言う。


「此処に来られなかった人達には掲示板で報告しとくとして、結局さ此処に居るメンツって雪姫ちゃんやお姉様と一緒にグランスコートの陣営に入るって事で良いの?」


 アズミルが周りを見渡しながら疑問を投げかける。


「良いんじゃない? モフモフ達に囲まれるこの空間は最高だもん」

「陰ながら守ろうって思っていたけれど、どの道、東西南北の何処かには属さないとこの先はキツそうだしな。個人でもチームでも自由にやれるグランスコートの環境は自分に合っているしな」


「皆で楽しくワイワイ出来るしね~。アタシも此処が良いわ」

「変な目で見てくる人も居ないしね~、お店だって開いて良いんでしょう?」

「取り締まりは私達に任せてよケリア~、此処に住んでる人達と仲良くなってきたところだし、意外にもイイ男が多いのよ~、この集落って」


「イケメンなうさちゃんにハチくんも居るしね、色々と助けて貰っちゃって私ってばイチコロよ~。それにお医者様なんてダンディーな人でちょ~私好みだったわ」


「分かるわ~、しっかりケアしてくれるのよね」


 ケリアさんの仲間内がキャピキャピと盛り上がっている。

 あの空間に連れて行かれない様にしようと、そっと皆が距離を取る。


「もうすぐ町くらいはなりそうだが、それも森エリアを取れるかどうかだな」


 白騎士が咳払いをしながら、話しの流れを強引に変えてた。


「家の建築はギリギリで追い付いているしな、殆どゴーレム達の御蔭だがな」

「と言ってもよ、今はこっちの戦闘に掛かりっきりだから、そろそろヤベーんでねぇの?」

「バリスタなんかも作ってたしな」

「やはり、隙を見て石材を取りに行かねばなるまいな」

「……アンタに任せる。ゴーレムの数が多い方が良さそうし」


 ゴスロリ衣装の女性がもう面倒だという感じで、少しぶっきら棒に言う。

 NPCの人達が少しづつではあるが、グランスコートに移住してきているのだ。ヴォルマインからも流れて来ているという。


「任されました~」

「すっごい勢いで飛び出していったが……一人で大丈夫なのかな?」

「まぁ、大丈夫でしょう。雪姫の恩義に報いるまで死ねないとか言ってたし」

「ゴーレムのテイムを見つけてくれたのは彼女だものね~」

「今後に必要になるかもしれんし、俺も行こう」

「よろしく、露店店長~」

「御守は露店店長で決まりね。他にも手伝いたい人は付いて行ってあげれば?」

「石材や鉱石か……ちょっと良い事を思いついたから、俺も行くぜ」


 皆から露店店長と言われた男性と馬の世話をしていた騎士が、ゴーレムテイマーに続いてこの場所を後にする。


「それにしても、トラップってあんなに使えるんだな。ティフォナスって子が上手く戦闘で役立ててたけどさ、良く敵を嵌めながら立ち回れるな」


「トラップを深夜帯で使える人物が欲しいよな~」

「それなら俺が取るぜ。見てて結構に面白そうだったしね」

「流石、露店二人目ね……もう2号店で良くない」

「なんでそう言う名称で呼ばれなきゃならんのだ。普通に呼べ」

「じゃあ大将か?」

「頭に鉢巻撒いて、お祭りの出店みたいな感じだし、うなぎ屋とか焼き鳥やってイメージ」


 白騎士の言葉み民が頷いた。


「よし、それでいこう」

「決定ね、よろしく露店大将」


 納得した皆を諫めようと露店大将が反論をする。


「まてまてまて⁉ 名前で呼んではくれねぇのかよ!」


「良いじゃないか、俺なんて未だに三番手……なんか置き去りにされた気分だぜ」


「騙されるな、正気に戻るんだ!」



 勝手に二つ名を付けられた人物と、瞳から光が消えている青年を皆が温かい目で見守る。



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