【オンライン】135話:イベント騒ぎは大騒ぎ(二日目)



〈パニア、準備は?〉

『モンダイなく。ダイさんマデ、ソウテンかんりょう』

〈それじゃ、第二まで続けて撃ってくれる〉

『リョウカイした』


 タリスマンがクルクルと高速で周りだす。

 下の方から木が軋む音と、ガコンガコンという重い石と木がぶつかる様な音が響く。


「皆に当たらない様にしたいから、もうちょっと上を狙って」

『ゴサ、シュウセイ』

「それじゃあ、景気よく――ファイアー」


 シュネーが手を空に伸ばして、名一杯の掛け声で発射の合図と同時に腕を勢いよく前方へと指さしながら突き出した。


「ちょ、待てって、俺達には当たらないんだろうな⁉」

「ちゃんと計算しているのでござろうな。信じるでござるよパニア殿」

「やっぱりこの役は止めとけばよかったかな」

「はぁはぁ、全力で走っているからティフォナスお姉様のスカートが良い感じに――」

「何処見てんだよ、前を走れアズミル⁉」

「纏まりないチームだよね、本当に大丈夫かな母さん?」

「余裕があって良いんじゃないかい」


 ダイチお爺ちゃんとハーナさんは笑いながら先頭を走ってる。

 その後ろを狙ってパニアが止め金を外した。

 第一射のバリスタが風を切りながら大鬼に一直線に向かって行く。

 少し遅れて連射矢が次々に打ち出されていく。


 大きな鬼は目の前のティフォ達よりも後方で暴れているケリアさん達が気になるようで、ちょうど後ろを振り返っていたせいで反応が遅れた。


 極太の矢が不意打ちとクリティカル判定で脇腹を貫いた。

 大きな個体が悲鳴を上げながら倒れ、周りの小鬼達の脚が止まってしまう。


 とにかく全力で前に走っていたティフォ達は、そのままこちらまで駆け抜けていた御蔭で、遅れて飛んでくる矢の雨に巻き込まれることはなかった。


「それじゃあ、こっからは俺達の出番だな」

〈よろしくお願いします〉


 フルプレートの騎士や戦士達がズラ~っと防壁の上から顔を出した。

 殆どの雑魚敵は僕等の作戦で殲滅状態になった。残るのは隊を率いていた隊長格が少数。中隊リーダーの精鋭部隊。それでも体力は半分くらい減っている。


 混乱している敵に向かって追い打ちを掛ける様にて四方八方から、魔導士や弓使い達が一斉に攻撃を次々に放っていく。


 全員が一斉に大技っぽいモノを繰り出して、半分くらいだった隊長格の小鬼のライフも瞬時に無くなってしまった。


 何とか持ちこたえていた精鋭部隊には、前衛の人達が突撃して一瞬で守りが崩壊する。

 後方に残っていた数少ない鬼達が一斉に逃げ出そうと引き返すが、溝穴に落ちたり、左右に居る人達に狙い撃ちにされたり、それらを振り切って逃げれたとしても。そこにはケリアさん達とエーコーさんが待ち構えている。


 残ったのは中隊を率いていたリーダー格の大鬼達だけとなった。

 そして此処は僕等の陣地内。

 相手にデバフが掛かり、こちらは能力値が上昇した状態。


 それに――、

〈ここなら、仲間も呼べないでしょう〉

 鬼達の仲間を召喚する術は良く解らないけれど、敵陣地では出来ないんじゃないかと踏んでいる。だって、それが出来るなら捕虜にした鬼達が呼び出している筈だしね。


 少し実験で、一匹、二匹を囲って装備も全て持たせた状態で放置したが、仲間を呼び出した事は一度も無かったのだ。


「スノー……悪役がしそうな笑顔を浮かべないで、可愛いせいか変な迫力があるんだけど」

〈カッコイイと言えよ〉

「いや、無理だって」


 シュネーの言葉に頬を膨らまして怒っていると、下の方か声を掛けられた。


「こら~、まだ戦いは終わって無いぞ~」

〈わかってますよ〉


「や~い、ティフォっち怒られてやんの、ちょ! それは待って――」


 がっしりとシュネーを掴んで、真下に放り投げてやる。


〈パニア、援護射撃しよう〉

『ワカッタ』

〈左側の大鬼にバリスタ、撃ちますよ~〉


 一番体力が残っている敵を見て、下の方へと連絡する。


「助かるぜ」


「皆、いったん離れろ~」



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