【オンライン】54話:役割、開拓、初めの準備
一つ一つを説明するごとに一喜一憂するイーゴさんに疲れたが、説明を終える。
「すると貴方が……パニア様ですな」
「ウ、ウム。ソウダ」
タリスマンがオレにすり寄ろうとするんだけど。
その前に、がっしりとイーゴさんに掴まれている。
『イーゴさん、近過ぎますって』
何とかイーゴさんの間の手から助けようとしたが、一足遅かった。
「しばらくはパニアに我慢して貰うしかないね~」
シュネーも諦めたようにタリスマンに手を振っている。
「タスケヨ、ワレを、マモレ、ヨウセイ」
彼の手の中で暴れているが、それも逆にイーゴさんを興奮させているだけだ。
「それでイーゴさん、何かを準備してくれていたのでは?」
見ていたティフォが呆れながら次の話題へと切り替えてくれた。
スパイクはパニアの状態を見てか、ティフォの頭の上に避難している。
「おぉ、そうでしたね。先ず先に装置を試してさないとですからね。さぁさぁすぐにスノーさんのお宅へ行きましょう、ボウガさんにも色々と手伝って頂いたんですよ」
そう言うと、誰もが驚くスピードで家から出て行ってしまった。
『オレの家? って、イーゴさん⁉』
気が付いた時には、目の前にイーゴさんの姿がもうない。
「もう行っちゃったわよ」
「パニアも一緒に連れていかれたぞ」
「素早い動きだったね、声を掛ける暇さえなかったよ」
とにかく、パニアが心配なので皆で急いで後を追う。
☆☆★★★☆☆☆
「どうしたんだね、遅いぞ君達、彼が一番乗りだったようだがね」
「死ぬかと思ったんだな。酷いんだな皆、グスッ」
ガウが家の玄関前で泣きながら体育座りしていた。
その横にボウガさんも居た。
『あの、コレは……なんです?』
玄関から多少は離れているとはいえど、ちょっと大きなもの置き場が出来ていた。
「凄い石材が沢山……つうか、邪魔なほどあるな」
山の様に石材が積まれている。
「それよりも私的には、あの台座の方が気になるんだけれどね。なぁにアレ?」
「あ、台座にパニアが居たよ~」
綺麗な草花の紋様が台座の全体に描かれている。
ちょっと教会とかに在りそうだ。
「フム、フムフム⁉ ムム?」
パニアが台座の上で光ったり。
クルクルと回転してりして何やら色々と探っている。
「台座の上で踊っているのは何でだ?」
確かに、ティフォが言うように踊って見えなくもないな。
「それはだね、いまパニア様には色々と使い勝手を試してもらっているんだよ」
『とりあえず、説明をお願いします』
そう言うと、イーゴさんの肩を叩いてボウガさんが割って入ってきた。
「おいイーゴ、俺は帰るからな。ったく、何だって木工職の俺様が石材の加工なんて事をやらさなきゃならないんだかね。全く迷惑な話だぜ」
そういえば、ボウガさんにも協力してもらったと言っていた。
『ボウガさん、ありがとうございました』
すぐにお礼をしなくちゃと、慌ててお辞儀しながら感謝を言葉を述べる。
「ふん、まぁ……なんだ。上手くいってんなら文句はねぇよ。それよりも、さっさと俺様の依頼を完了させやがれ。今だ自分で花も薬草も育てねぇし、もう何かしらは育てられんだろうが、畑の状態だっていい感じっぽいっしよ」
ボウガさんは恥ずかしいのか、妙な間やオレからチラチラと視線を外す。
『その、森で取ってきた種は全部、そのウサギさんや蜂さん達に分けちゃいました』
色々と交渉をする道具として使っちゃったから、もう無いんだよね。
「……あぁ、あそこでアイツらが嬉々として育ててるのは、そういう事かよ。そういう理由なら仕方ねぇか。数は少なくても良いから、何かもって来いよ。じゃあな」
ウサギさんと蜂さん達を横目に見ながら、仕方ないとため息を付きながら言う。
「やっぱり、何だかんだ文句とか言葉は荒いけど、優しいよね~」
「職人の男って感じよねぇ~、ああいう背中って憧れるわ~」
シュネーとケリアさんがボウガさんの方を見ながら、物凄くキラキラした瞳で背中に視線を送っている。
「こほん、説明に移らせてもらって良いかね」
「それに比べて、こっちの先生はちょっと残念な人でござるからなぁ~」
イーゴさんを横目に睨みながらガウが言い、そのガウをティフォが横目に見る。
「お前が言うなよ。ゲームの攻略とか謎解きしてるお前さんと、どっこいどっこいだ」
確かにそういう部分は非常に似ているかもしれない。
「外野が五月蠅いですね、黙らせても良いでしょか?」
イーゴさんがちょっと怒った顔で、オレに聞いてくる。
『あ、はい、お願いします』
正直、なにも考えずに説明してもらおうと返事をしてしまった。
「スノー、どっちの意味で言ってる? なんか木の皆さんがガウと戯れ始めたけど」
『あれ? 説明を……あぁ、本当だ』
まぁ、ガウも楽しんでいる様子なので、ほっておこう。
「さて、まずはこの台座ですがね。コレはこの集落の入り口になりそうな場所にもう一つ設置しています。ここから見えると思いますが、あぁ、アレです。大体、中央都市から道を引いた場合はあの辺りが入り口になるでしょう」
イーゴさんが真っすぐに指さした先に、同じ台座が置いてあるのが見える。
「確かにポツンとあるわね」
「まぁ、外壁なんて無いしな」
外から入りたい放題だからな、此処は。
「この台座はね、ゴーレムの力を補助する役目を持っています。パニア様、ちょっともう一つの台座辺りにゴーレムを出現させてくれますか?」
台座の窪みに何やら取り付けてから、パニアの様子をみる。
「ワカッタ、ヤッテミヨウ」
パニアがいるタリスマンが強く光りだす。
「わわ、石材がちょっとなくなった⁉」
その光に吸いこまれるように石材が消えていった。
「これだけの土地ですから、置き場所には困らないで良かったですよ。それよりも、あちらの台座を見てください。パニア様、問題なく指示が出来ますかね?」
「ウム、カイテキ、な、ホドだ」
もう一つの台座近くに出現したゴーレムが、こちらに手を振って答えてくれる。
『操れる範囲が広がってる?』
「えぇ、ゴーレムの本体から指示できる範囲は決まっていますからね。ただ、それでは開拓にはネックです。だからこうした装置を作ってみたんですよ。動かすのに必要なのは魔石のみです。ただ、パニア様が創り出すゴーレム分の石材は別に必要です」
「コレは、凄いわね」
「パニアは疲れないの?」
「タショウ、マリョクを、ヒツヨウトスル、ミタイだ」
「えぇ、流石にその辺までの補助は出来ませんでしたが、ゴーレムの魔力は少し休めば回復しますし、疲れとはあまり無縁でしょう。それに、変な輩に襲われる心配もありません、本体であるパニア様はスノーさんの家という、絶対的な加護結界内に守られていますからね」
なるほど、確かにその辺は考えていなかった。
「襲われても、ダミーの方だから失うのは石材ってわけね。パニアちゃんにとっても過ごしやすい場所なら問題なさそうね」
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