【オン48】役割、開拓、初めの準備
「ねぇ、なんで俺の後ろを歩くんだよ」
先頭をティフォが歩いている、スパイクを先に行かせて安全なルートを探り探り歩む。
「いや、深い意味はないでござる」
「えぇ、ないわね」
レベルがそれなりに上がっているガウとケリアさんは、オレ達の後ろから優々と気楽に歩いてくる。ある程度のレベル差があると襲われないそうだ。
「ないない」
もう一人、オレの後ろで楽をしてるヤツも居るが、大きな声を発せないので無視する。
『……ティフォ……その色っぽい歩き方、止めない』
後ろから舐める様に見られているティフォが、さっきから色気を振りまき過ぎで見てられない。綺麗な太ももから、スラッとした長い脚を隠そうとしてるせいで余計に視線を集めてる事に気付いてほしい。
隠密行動のせいで、屈んでるから少しはマシかと思ったが、逆効果な気がする。
「スノーってば、教えちゃダメでしよ」
「せっかくの目の保養でなんだな」
変態オジサンが若干二名居るようです、ウチのパーティーは。
「どういう事だよ?」
全く気付いていないとは、そっちのほうにオレは驚いた
『いやだって、恥ずかしいのか知らないけどさ、ちょっとモジモジして歩きすぎ』
ゔっと小さく唸っていたが、それでもやっぱり隠したい気持ちは消せないらしい。
だから、逆効果だってば。
「ふふふ、可愛いじゃない」
「あれで男でござるからな……ゲームの中とはいえど、良いモノは良いんだな」
ケリアさんは純粋に可愛らしいモノを愛でる視線だが、ガウお前はダメだ。
リアルだったら警察を呼ばれちゃうよ。
「こ、この変態共め。俺の足なんか見て何が良いんだよ」
顔を真っ赤にしながら、声を必死に抑えながら訴えてくる。
「脚のライン? あとティフォっちの恥ずかしがる態度」
ごめん、オレもシュネーに同意せざるおえない。
「綺麗よね、私のはちょっとだけ、筋肉質だからそういう服って中々に履けないのよ。後はティフォナスちゃんの可愛らしい態度かしらね」
羨ましそうにケリアさんは、ティフォの脚を見ている。
「ふっ、女性の脚などガン見していたら殴られるか引かれるかでござろう。ティフォナス氏のおみ足ならば見放題なんだな。後は女子には中々出来ないその態度なんだな」
ティフォを男と知っているガウの言い分は、残念なものだった。
「おい、コイツ等を何とかしてくれよ。スノー」
いきなり助けをオレに求めるなよ。
『むりだよ。だって助けたりなんかしたらオレがハイエナに狙われるじゃん』
「ハイエナとは失礼ね~、美しい作品を眺めるのが私の創作意欲を沸かせるのに」
「そうでござるな、愛でるだけで何もしてないんだな」
やっぱりハイエナで間違ってないと思うよ。
「なぁ、コレ、交換しようぜ」
『却下です』
即答してやった。誰が着るか。
やっとスカート姿から脱却したというのに。そんな下着みたいなのは履かない。
「ダーメ、スノーはコレで良いの。野獣の目に晒したら食べられちゃうでしょう」
『シュネーさんや、オレは羊か何かかな?』
小さい体をいっぱいに広げて、ティフォから守る様に立ちはだかる。
「むしろ、雛鳥かしら? 黄色いモコモコの」
「子猫じゃないか?」
「拙者的には子狐でござるな」
結局は小さいのを愛でて遊びたいだけじゃないか? 付き合ってられん。
『え~っと、どっちかな』
マップを開いて無視する事を選んだ。
「露骨に無視されたよケリアん」
シュネーさん、お前はどっちの味方なのかな? オレは時々だが不安になるよ。
「標的が自分に移るのを恐れたでござるな」
「ほんと、見た目に反した回避力ね」
見た目に関しては仕方ないが、そこに居る二人と同年代だよケリアさん。
「ったく、アクティブモンスターを気にしないで良い奴等は羨ましいね」
オレに便乗してか、ティフォも話題を逸らすように話しを切り替えた。
「初心者あるあるでござるよ。誰もが通る道なんだな」
「そうね、高レベルになっても隠密行動は当たり前にするのよ。いま体に覚えさせておかなくちゃ、後々になって苦労するわよ」
『アクティブモンスターって、そんなに厄介なの?』
まだ絡まれた事もないし、戦った事も無いから良く解らない。
「厄介でもある。まぁ、面倒なモンスターだよ」
他のゲーム知識からか、ティフォが最初に答えてくれた。
「倒せるなら、その場で倒してしまう方が良いけど。大体、アクティブモンスターはこのエリア内の中堅から高レベルまでいるでござる。戦いの最中に横やりを入れて着たり、こっちを見つけたらすぐに追いかけて来たり、追ったら執念深く追尾してくるんだな」
森で追われてたもんね、沢山の針鼠に。
「だから、戦闘は基本的に安全な場所で戦うのがベストなの。モンスターが増えるとその分プレイヤー側は不利になるから気を付けないとダメよ」
そう聞くと、確かに面倒そうだな。
今のうちに経験を積んでおけと言われる理由も分かる気がする。
「いま、ボクらが通ってるルートは安全なの?」
ふよふよういてるシュネーがちょっと不安そうに後ろ組に聞く。
「上手く回避しながら進んでると思うわよ、スパイクちゃんの危機管理能力が高いのかしらね? 野生の感って奴かしら」
ティフォの能力って訳じゃあ無いんだよね。スパイクの力だし。
『……ティフォって、スパイクよりも役立たず?』
「失礼な事を言うな、テイマーの本体は魔物の方なんだ。俺はあくまで支援役なの」
魔物方を本体と言っている以上、オレの言葉は否定されてない気がしますよ。
「泉ってもうすぐ?」
オレの持ってる地図を覗き見ながら、シュネーが頭に乗って聞いてくる。
『そろそろ見えてくるはず……あっ、あった』
少し先の岩陰から、泉がチラッと見えてきた。
「セーフティーエリアじゃないけど、アクティブなモンスターは居ないみたいね」
モンスターは普通に徘徊しているが、どれも温厚な魔物の様だ。
近付いてもチラッとこっちを向くだけで、何もしないと分かると離れていく。
「休憩するにはもってこいでござるな」
「人も居ないみたいだね」
「ちょっと一休みしようぜ。なんか色々と疲れた」
『精神的に?』
「それもあるが、スパイクの能力を使うと俺の気力も徐々に削れるんだよ」
あぁ、ちゃんと本人の力も使うんだ。
「けっこう良い子が仲間になってのね。森の針鼠にそんな能力があったなんて意外だわ」
「気配には敏感なモンスターでござるからな、それで拙者もひどい目にあったんだな」
あの大量に追われて理由は、多分だけれどスパイクが使ってた能力だろうね。
「ガブッち追われてたもんね」
「一匹に戦闘を挑んだら瞬時に周りにいた針鼠もリンクしたのは、流石に驚いたんだな」
アレは、皆が驚いてたと思うな。
ケリアさんが居なかったら全滅してたよ。
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