【オンライン】47話:役割、開拓、初めの準備




「俺達が出入りしてた東門付近と雰囲気が全然違うな」

 東門の付近は牧場や棚田があったりと、ゆったりした感じだった。

『そうだね、武器屋や宝石屋に防具屋とかが目立つね』

 それに対して北門の付近は職人町といった風貌だ。


「城下町から近く、大きく発展した町の影響を受けるみたいなのよ。私達が行くヴォルマインは主に鉱石やら原石の発掘を元に栄えたのよ」


 なるほどね、まだ発展もしてない東側は、田舎町みたいになってるんだ。


「良い言い方をすれば職人町という感じでござる。ここで作られる物は良い代物ばかり、ただまぁ職人気質なのか社交性は皆無なんだな」


「それって、プレイヤーも同じなの?」


 シュネーは周りの視線が気になるのか、オレにしっかりくっ付いて周りをキョロキョロ見回しながら言う。まぁ、オレもだけど。


「人に寄るんじゃないか? 街の人を見る感じは確かにガブの言った感じの人しかいない気がするけどな。なんか、じろじろ見られてる感じがして怖いし」


 意外と平気そうな顔をしていても、やっぱりティフォも怖かったんだね。


「ん~、割と騎士ムーブやら無口な実力者って感じの人が多いとは、思うわね。何事にも実力主義な人が割と好んで北側の攻略や生活をしてる感じよ」


「ただまぁ、取っ付きにくくはあるでござるな。無口で寡黙、或いは屈強な体に強面な外見とか、ソロ活動が目立った陰キャな者が多いと聞いたんだな」


 ケリアさんはまだ分かるけど、ガウも結構詳しい。


『門まで……凄い力の入った装飾だね』

 北門に付いて最初に目がいったモノは、ド派手な装飾が施された門だった。

「要塞かよ。というかあんな分厚い鉄扉って開くのか? 巨人でも通るんかね」

「ほえ~、ドラゴンが今にも動き出しそうで凄いね」


 巨人でも通れそうな大きな門。

 左右には鉄扉を支える様に並び立つ二匹のドラゴン。


「ふふ、私達はあの門は潜らないわよ。あっちの方から出るの」

「拙者も最初はそう思ったでござる」


 あぁ、流石に違ったのか。

 普通に人が通れる小さい鉄扉がちゃんとあった。


「門の前ってバザーを開いてる人が多いな」


 不意に、ティフォが周りを見て呟いた。


 ちょっと見られてる感じがするのは職人町から変わらないけれど、門前に来て妙な視線が増えたのは確かな気がする。それにティフォも気付いての事かな。


「色んなのがあって目移りしちゃうよね~」


 約一名、そんな事よりも食い気に走ってるヤツが居たよ。

 確かに、食べ物関連も売ってる人が多いから良い匂いに釣られそうになる。


「そうね、門前広場って【広場】でしか露店は開けないから、大体ああいう人達は広場に固まってるのよ。それに、露店はメリットも大きいからね。プレイヤー同士の交流や情報交換にも役立つのよ。それをネタにアイテムを値切り交渉したりとかね」


『へ~、【広場】って場所が無いとダメなんだ』

 そういえば、あの集落には広場って近くになかった。

「あの集落にもきちんと作った方が良い区画でござるな」

 人が集まる場所なら、確かに重要だよね。考えとかないと。

「ほらほら、道癖してたらいつまでも着かないわよ。今回の依頼は馬車なんて無いんだから」


 門を通る際に門番さんと挨拶を交わして、チラッと露店の人達を見ると、前に買い物をした人達も居たのでちょっとだけ手を振った。


 相手側も気付いたのか、オレに挨拶をするよに手を振り返してくれる。



「なんか、北門を出た瞬間から全然違った景色だよ」

 一歩外に出ただけなのに、東門付近とはガラッと違う大地だった。

『あえて道は創ってないのかな?』

 門から外に出たのに、道が無い。

「見渡す限り、岩って感じだ」


 道が作りにくいのだろうか?

 それともその辺の事には興味が無いのだろうかね。


「移動も少し大変よ、こけたりしたらダメージ判定だから」

 土なんて無く、岩が吐出した地面だからかな。

「でも、フルプレートみたいな鎧だったらダメージは無いでござうるぞ」


「正確には脚や腕がしっかり守られてる装備なら、ダメージ判定は無いのよね。ティフォナスちゃんもスノーちゃんも初級装備だから、無いんだけど、気を付けなさい」


 ちょっと子供の頃に引率された先生を思い出したよ。


『「「はい」」』

 元気よくケリアさんの注意に返事をする。

「という事で、これに着替えてちょうだい。簡単な着替えスペースはすぐ作るから」

 三十秒とせずに布で覆われた個室が出来た。


「ホットパンツ? え、これ……俺が履くのか?」

 ちなみにオレのはレディースのハーフパンツの大きめだった。

「じっ……ティフォ、パンツが見えるよりマシだと思うけど」

 確かにスカートで山を登るのはナンセンスだね。


「ケリア嬢……ナイス、なんだな」

「あら、ありがとう」


 なんかケリアさんとガウが、がっちりと握手して意気投合してるよ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る