【オンライン】46:役割、開拓、初めの準備




「とりあえずは、どうやって契約するのかということだが……ゴーレムの中にあるコアは仮の依り代だという事が分かったんだ」


 コアの破片を摘まみ上げて、力説するイーゴさん。


「つまり本体は別にあるっていうの? でも、今までそんなの見たことないわよ?」


『何か根拠が、あるの?』


 イーゴさんってば曖昧な時は若干だけど、肩が落ちて弱気になるね。


「察しが良いな嬢ちゃん。色々と観察していて分かった事だが、ゴーレムは一定範囲に沸き、その出現した範囲から活動範囲まで決まっているみたいなんだ、自分も最初は山の丸々全部が行動範囲だと思っていたがね。其々の区画に分けて目印をしたゴーレムを泳がせたり、戦闘をして逃げ出したりしてみたが、一定の距離までしか追わないんだよ」


 きっと一人で頑張って調べたんだな、背中が語っている。


 遠くを見つめて、自分は頑張った褒めて欲しいと言わんばかりに。


「ふぬ? しかし、聞いた話では山下まで追われた者が多く居ると聞いてるでござるぞ? それも連鎖して執念深く追われるから厄介だとも、言っていたんだな」


 ガブさんや、貴方はゴーレムでもトレイン行為をしたのではないのかね。


 他の人から聞いたにしては、良く知っている気がするよ。


「それは、区別事に連携……いや、連絡と言った方が良いか? まぁ、それが取れて居るからだ。現に、頂上付近で印を付けたゴーレムは頂上から降りては居ないのを自分は確認しているんだ。一定区間の間は追うが、過ぎれば別の所に待機していたゴーレムが後を追う」


「最後まで追ってるゴーレムが実は別のもってこと?」


 オレが聞く前にシュネーが聞いてくれた。


「そうです、問題は何処にメインのコアがあるのかって事ですが……そこで必要になるのがゴーレムの中に埋まっている、このコアになるんですよ」


 露骨にシュネーに対しては、腰が低くなっているな。


「でも、それはもう壊れてるのでござろう」

「それ以前に、初心者同然の俺達がいてゴーレムって倒せるのか?」


 オレ達は助けて貰って針鼠を倒したりしたけど。実質、戦闘経験は負け越しだ。あのウサギさん達のせいで、勝ちを知らずに来てるよ。


「無理でしょうね。ゴーレムって旨味が無いのよ~。倒すのも厄介なモンスターだしねぇ。元々が弱いモンスターじゃないわよ」


「え~、そんな初心者にとってボスクラスじゃん。無理だよ~」


 確かに、そう考えるとイーゴさん。もしかして少なくともオレ達の事は知ってるのか? あの木々のモンスターが近くに越してきたオレ達の事を報告しないはずは無いし、イーゴさんはモンスターに対しては凄い執着心だった。オレのホームに沸いたモンスターを調べに来なかったとは、考え辛いな。


『あれ? ひょっとして倒さない?』


 退治するようなら、最初からオレ達をボウガさんが進めるとは思えない。

 むしろ仲良くとか、契約の話しを先にしていたんなら、戦闘しない方が良いよね。

 実力を示して契約するって話でもないと思うしな。


「スノーさん、貴女は本当に子供かね? 正解だ。というよりも、むしろ倒したり戦ったりしてはダメなのだよ。メインコアが逃げてしまうからね」


 あぁ、やっぱりと。と、オレが頷いてると、周りは驚いた顔をしていた。


「倒さないって、どうする気よ?」


 一番に興味津々なのはケリアさんだった。

 経験者である分、興奮するのかもしれない。


「壊れたコアにも使い道はあるという事だ。元々は仮の依り代として機能していたなら、逆にメインコアに対しての接続があるという事にもなる。だからこのコアを使った探索アイテムを作ったんだよ」


 魔法陣が描かれた円盤上の上に、中央で回る矢印の様な装飾がある。


「タリスマンか?」

「この矢印が動くよ、面白いね~」


 シュネーが矢印をクルクル回して遊ぶ。


「矢印の先端に付いてるの石が、ゴーレムのコアね。デザインも面白い感じね」

『コレを使って探すって事ですね』


「あぁそうだ。それで気を付けて欲しいのが、それはある一画のゴーレムコアにしか反応しないという事だな。コアごとに区画があるように、コアにも其々に違うんだろうな。他の場所では反応を示さない」


 今まで一番のキラキラした笑みを浮かべて、自慢してきた。


「何と言うか、情報屋に売ったらたんまりとお金が貰えそうな話でござるな」


 ぽつりとガブが呟いた。


「ねぇ、イーゴさん。研究結果が出たらある程度の情報は流しても良いのかしら」


 報酬は開拓の手伝いって事だから、お金は出ないもんね。

 確かに金策も大事だな。


「ふむ、纏めた論文をとある場に提出した後なら別に問題は無い。それまでは我々の間ね秘密にして貰うがね。それならば、別に構わない。大いに広めてくれ」


 むしろ広めて欲しそうなのは気のせいだろうか? いや、気のせいじゃないな。


「それで場所は何処に行けば良いんだ?」


「中央城下町から北門を抜けた先だ、ヴォルマインの岩山である泉の近くだ。自分は君達が成功した時の為に準備をしておく」


 マップを広げて、大体の場所に印を入れてくれる。


「準備~って、一緒に来てくれないの?」

「契約したゴーレムコアに過ごしやすい環境は必要だろう」

「良い意味でも悪い意味でも、研究者でござるな~」

『もうオレ等の声は聞こえてないね』


「失敗して帰ってきたら、つうか、失敗は許して貰えそうに無いな」

「呪われそうだよね~」


「まぁ、良いわ。楽しんで行きましょう」




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