【オン49】役割、開拓、初めの準備



 泉で涼み、ちょっと水の感覚をシュネーと楽しんでから、皆で一息ついた。


「どう? 反応してるかしら?」


 胸元に仕舞っていたタリスマンを引っ張り出してみる。


『ちょっと待って……えっと、此処では反応なしです』


 左右に振っても矢印が動くだけで、何にも反応していない。


「どの辺りで反応するかな」


 シュネーも一緒にタリスマンを覗き込み、突いたりして反応を見ている。


「とにかく泉を中心にぐるっと廻ってみるか」


 ティフォの言葉に皆が頷いて、ゆっくりアクティブモンスターに注意しながら時計回りに歩いてみる事にした。


「注意するでござるよ。ゴーレムは襲ってこないから急に現れても驚かないように気を付けて欲しいんだな。パニックになって攻撃したりなんて洒落にならんでござる」


 自分でしたことあるのか、ガウはちょっと遠くを見て切なそうに語っている。


『えっ! ゴーレムって急に出てくるの⁉』


「あぁ、そこからだったわね。基本的にゴーレムは岩場と一体化してたり、地面や大きな石に偽装している事が多いのよ。堂々と歩いてるゴーレムは云わば囮なの、ああいうのに攻撃しちゃうと周りを囲まれて襲われるから。多分……あの辺と、あの岩はゴーレムね」


 ケリアさんが一体のゴーレムを指さし、親切にどの辺に隠れ居そうかを確認しながら一つ一つ説明してくれる。


「面倒なモンスターって言われるのって」


「それも一つでござるよ、ティフォナス氏。大体は弱点属性以外はダメージが通りにくいでござるからな、前衛職にとっては相手にしたくない敵なんだんな。それにドロップアイテムも残念なモノしか落とさないって話なんだな」


 戦った事はあるのに、倒したこと自体はそんなにないのかな。


「偽装してる子を狙えば、ゴーレム自体は安全に狩れるのよ。探すのは面倒くさいけど」


 ケリアさんが補足説明を入れてくれる。


 でも、ちょっと気になる事が出てきたな。


『隠れてるヤツは、他のゴーレム達は反応しないの?』


 歩いてるゴーレムに反応するのに隠れゴーレムには反応しないの?

 それは、おかしいと思うんだけど。


 他の人達は、気にならないのかな。


「えぇ、しないわね」


 オレの問いに、不思議そうな声で返されてしまう。


「歩いてるゴーレムは全員で襲ってくるのに?」


 シュネーも気になったのか、オレに続いて聞く。


「そうでござるな。だから誰も戦いたがらないんだな」


「おい……それってまさか――」


 ティフォが何かに気付いた様子で、オレを凝視してくる。


『どうだろうね。確かめてみない事には、判らない』


 まだ、タリスマンが反応していないから、正しい事は分からない。


「うへ~、ちょっとややこしそうだね」


 まだ契約の条件とかも分からないし、ややこしいのは始めっからな気がする。


「貴方達だけで納得ないでよ~、なになに~、いったい何に気付いたのよ」


「いやいや、えっ! まさか~」


 ガウも何かに気付いたらしい。


「ボスじゃないけど、周りが襲って来るのを考えると……やっぱ可能性は高いよな」


「周囲がごちやごちゃしてる間に、本体は逃げる敵な奴だね」


『とにかく、このタリスマンに反応したら、きっと正解かな?』


「え? もしかして、皆はアレが囮じゃなくって、本体だって考えてるの?」


 ケリアさんの顔がゴーレムを見たり、オレ達を見たりといったり来たりしている。


「ダミーを幾ら倒しても、まぁ、無駄だわな」


「要らないアイテムしか、出ない?」


 ティフォの言葉に何となしに反応する。


「偽物なら、誰がやられても構わないよね~」


「だから、他のゴーレムがリンクしない」


 シュネーに言われて、段々と違和感を覚えたらしい。


『本体には別の役割が、在るのかも? それにイーゴさんは逃げるって言ってた』


「隠れるより、逃走に特化した能力があるって訳ねっ!」


 徐々に整理された思考でたどり着いたのか、手を打って顔が明るくなる。


『という、仮設かな?』


 まだ正解という訳じゃない。


「おい、俺はそこまで想像してねぇよ。漠然と本体っぽい条件だなって思ってただけ、色んなゲームでも在りそうなネタだしな」


「流石はゲーマー、拙者には劣るでござるがな」


「その割には、気付かなかったね」


「シュネー嬢、それは言ってはダメなんだな。畑違いって感じなんだな」


 半分くらい廻ってようやくタリスマンに反応があった。



『あ、反応したよ』



 後は、タリスマンの矢印が指す方に、反応が強くなる場所を探すだけだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る