【暴走40.5】初めての準備=あの時、樹一に起きた選択肢




 ==視点【秋堂樹一】==


「おぉ~、コレがフルダイブ。違和感が無い事に違和感があるな……」


 ラフな部屋着の半袖にトランクスっぽいパンツを着てる。


「こういう感じなら、なぜもうちょっとマッチョな体を用意してくれないんだ?」


 見慣れた自分の体を見つめながら思わず呟いてしまう。


「それは、スキャンした時のデータで組まれた肉体ですからね、あまりに現実離れした肉体で仮想世界とはいえ、フルダイブという仮の肉体を動かす感覚がリアルに及ぼす影響があるという実証実験に伴い、リアルの肉体に近く作られるようになっていますので。色々と支障が出ない様にという、医療関係者の助言から…………あら、あらあら、まぁまぁ。今日は本当に良い日ね」


 何もない場所から急に光ったと思ったら、美女が出て来た。


「コホッ、失礼しました。そのままでは色々と不便ですね」


 女神っぽい美女が指を鳴らすと、何も無かった空間が無機質な室内に変わった。

 ふわふわと浮いている感覚がなくなって、地面に立った感覚だけがある。


「えっと、貴女は?」


 かなり色っぽい服装で、色んな所に目がいってしまう。


「私は【ズィミウルギア】の世界で光と美を司る【乙女】の女神ですよ。新たななる未来を創りし創造者よ。ようこそ我らの世界に」


 宙にふよふよ浮きながらも、綺麗な姿勢でお辞儀をしてくれて、思わず俺もつられて頭を下げて、挨拶をしてしまう。


 ただ、女神はお辞儀をしながらも、俺を舐める様に見ている気がするのだが、気のせいか? この視線はよく先輩やら生徒会長と似た雰囲気がある。


 というか、どことなく先輩や生徒会長に近い感じがするな。


「さて、先ずはこの世界が今、どういった状況かと見るには世界地図が一番ですね。こちらをご覧ください。白く煙っぽい感じで見えない部分は、開拓やプレイヤーによっての発見がなされていないフィールドになります」


 空中モニターが表示されて、世界地図が映し出された。


「貴方が最初に踏む地は、この中央の城下町になりますね」


 島の全体はどことなく、花っぽい。

 幸十、もとい、翡翠だったら家紋に例えそうだ。


「まだ開拓も発見もされてない場所がこんなにあるんだ」


「ふふふ、そうですね。発見では限界がありますから、開拓が進んでいない土地もありますからね。その影響も大きいかと思います」


 女神が楽しそうに説明してくれる。


「では、続いてきゃ…………パラメーターの初期値を振ってもらいます」


 何か言葉を飲み込んで、凄い一瞬だけ考える素振りがめっちゃ気になる。


「えぇっと、どうやって振ったらいいんだ?」


「貴方は……あぁ、【コードギア】をお持ちですね。それでメニューを開けますから、メニュー欄から自分の体のアイコンを選択してください」


 すべてのパラメーターが1と書かれているページまでとぶ。


HP:50 MP:50 TP:100


 筋力:10 体力:10 敏捷:10


 器用:8 知力:5 精神:8


「こんなもんかな」


「続いて、種族ですが……コレ等の機能はまだ発見されておりません。世界の謎かもしくは開拓、発見が進めば種族変化が可能になりますので、頑張ってくださいね」


「つまり、まだ人間しか選べないと?」


「そうです、追記で話してしまえば。ある程度、仮想現実のゲーム世界に慣れていない内に特徴的な肉体を選べない様に、といったところですね」


 色々と考えての種族縛りか、つか、後に肉体を弄れるのか……だったら別に貧弱そうな見た目でも仕方ないかな。追々に男らしい肉体を手に入れる為に頑張るか。


「次に職業ですが……何かこの世界でしたい事などはありますか?」


 何か一瞬だけ目が鋭くなった気がした。


「えっと。竜騎士とかしてみたいな。カッコ良くてデッカイ騎獣に乗って戦いたい」

「あらあら、男の子ですね~」


 何か女神が自身の前に空中モニターを出現させて、捜査をしている。

 動作的に何かを探しているようだ。


「では、こちらの職業などいかがでしょうか?」


 ピンと空中のモニターを掴んで、手をスライドさせる動作で俺の前に画面が飛んできた。


「えっと【テイマー】ですか?」


「えぇ、結構に強い職業ですよ。モンスターと仲良くなれば色々な事ができます」


 結構、使い方が難しそうだけど。


「モンスターは一体までならパーティーの枠を使いません。好感度によって出来る事が多くなっていきます、獣パーティーとして活躍することも出来る、自由度の高い職業と言えます。どうでしょうか?」


 それは確かに面白そうだな、モンスターによってはサポートも前衛も出来そうだ。

 こういったゲーム初心者の翡翠も居る事だしな、色々と出来る方が良いだろう。


「わかった、それで良いや。良い感じの選んでくれてありがとう」


 基本的に、職業とかって自分で選んで決めるんだと思ったけど、違うのかな。


「いえいえ、これくらいは当然ですよ」


 物凄く機嫌が良さそうな笑顔だった。


「では、最後にちょっとしたプレゼントがあるのですが……教えてしまえば【スキル】に関する事です。コレは残念ながら運の要素が絡んできます。今からいくつか質問をしますので、その質問にしっかりと考えて、お答えください」



 質問形式で【スキル】の配布が決まるのか。



「別に制限時間はありませんので、ゆっくりと考えてください」

「え、あぁ、わかった」





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