【暴走40.5】初めての準備=あの時、樹一に起きた選択肢




  ==視点【秋堂樹一】== 



「では、集計結果が出るまでの間、簡単に【スキル】の説明をします。スキルがあるからといって、何でも出来る訳ではないんです。そこはご注意ください」


「何でもできないって?」

「【スキル】は主に、それらに関する事柄の制限が解除された感じです。

 例えば――、魔法で説明した方が分かりやすいですかね。

【魔法(火属性)】のスキルを得たとします。コレだけでは火を操る事が出来るだけです。周りにある火を自在に操るだけです。威力としては、たき火の火力程度しか操れません。ここで必要になるのが【ギア】と呼ばれる技能になります。

 【ギア】はまぁ、自分が使える《技》ですね。《火球》という【ギア】を取得すると、この様に空中から火の玉をだして、魔力に応じた威力の魔法が使えます。

 これ以上の火属性魔法を覚えたければ、

 【ギア】で言えば《業炎》という技を取得するか。

 【スキル】では、【中級魔法】をいうモノを取得するかですね」


「ん? その二つは何が違うんだ?」


「【ギア】は説明した通り《技》です。つまり、自分の想像力、あるいは努力次第で初期のスキルでも扱えるモノになります。逆に【スキル】は《恩恵・開花・加護》といった部類になり、特別な環境下で耐え続けるといった方法や他にも色々です、我らの様な存在から加護を貰うまで覚えません。どちらも一長一短で威力は自身の努力や使い方次第ですね」


 使い方はっていう事は、火球でも人によってちょいちょい違うのかな。


「お答え頂いた質問の結果は……ふむ、なるほど」


 俺が答えた質問の結果が表示されてるのか。

 真剣に俺には見えない画面を見つめている。


「これでは……ふむ。一つ提案が、スキルの授与を私に託してみませんか?」


 画面を見ていた女神がちょっと困り顔で聞く。


「なにかダメだったんですか?」


「えぇ、テイマー向きのスキルが選ばれませんでした。(えぇ、テイマー向きのスキルは、ですがね)ですので、(全て私が)ランダムに選ぶという、加護によるスキルではいかがかと思いまして。ランダムで選ばれるんですが、私しからの加護が得られるという特典付きですので、テイマーに向いたスキルを確実に一つは選んであげられますよ」


「なるほど、そこまで酷いんですか?」

「えぇ、コレで始めるのはちょっとお勧めできません。(私の計画的に)」


 流石に翡翠や琥珀といった素人を守りながら、自身が足を引っ張るようじゃあ恰好が付かないか、ランダムと言っても一つは確実に有利なスキルが得られるなら、やるか。


「じゃあ、お願いします」


 俺がそう言うと、花が咲き誇ったような笑顔を向けられた。


「はいっ! それじゃあ始めますね」


 業務的な態度から、物凄く元気の良いお姉さんな返事が返って来た。


 ホクホク顔でモニターを鼻歌交じりに捜査していく。


「コレで、良いですね。では最後に、私から一つプレゼントがあります」

「あれ? スキルの確認は?」

「それは、地上に降りた時に解る様になっております、此処での確認は出来ません」

「あ、そうですか」


 キッパリと言われた。


「では、贈り物はこちらです」


 そう言って握りこぶしを作ると、手の中が光りだした。


「指輪?」

「えぇ、どうぞ、付けてみてください」


 手渡された指輪を、とりあえず右手の中指に付けてみる。


「あら、薬指には付けて下さらないのですね」


 ちょっと落ち込んだ感じで言う。


「いや、それは……」

「ふふふ、冗談ですよ」


 悪戯っ子な笑みを浮かべながら、つんつんと眉間を突かれた。

 ただ、どこか違和感のある笑みで、口の端が妙に上がっている気がする。


「では、この世界を楽しんで――」


 そう女神さまが言おうとした瞬間、無機質なコンクリートっぽい壁が壊される。


「はぁはぁ、おいどういうこった⁉」

「あら? 【騎士】の貴方が此処に何の御用かしら?」


「こんの目狐っ! そいつは男の担当は俺様や他のヤツ等の管轄だろうが、何でお前が此処に居んだよ、お門違いだろうっ⁉」


「え? え? なに、どういうこと⁉」


「ふふん、もう遅いわ。最初にこの子を見つけたのは私なの、こんな可愛らしい子を貴方達みたいなムサイ連中に託すわけないじゃない」


「遅いって……おまっ! 君、早くその陣か出るんだ」


 足元にいつの間に出現していた。

 存在を隠すかのように徐々に浮かび上がっていく。


 慌てて陣の外に移動しようとした時に自分の体、というか、貰った指輪が光り。


「たぁ~、お前はなんてもんを渡してんだよ」

「あら失礼ね、良いモノでしょう」


 取り外そうとしても、指輪は体の一部かのようにくっ付いて離れない。


「ちょっと、コレって何ですかっ⁉」


 体格の良い男の神様が申し訳なさそうに俺を見てくる。


「そいつはな、ちょっと特殊な指輪で、確かに効果は良いモノが付いているが……美の、コイツの認めた装備品しか付けられないんだ」


「装備の制限のデメリットだけ、ですか?」


「コイツの認めたってことは俺達が着るような鎧は切れない……簡単に言っちまえば、強制的に女性のみ装備可能なモノしか切れない」


「は、はぁっ⁉」

「大丈夫よ~、効果は良いモノが沢山、付いてるから」


 ホクホク顔でやり切った表情の女神が、俺をうっとりと見つめている。


「おい、君、まさか、とは思うが……コイツにスキルなんて選ばせてないだろうな、恩恵とかって貰ってないだろうな」


「えっと、ランダムで――」


「ランダム? 本当にランダム選択か? キャラ作成はどうした? 職業は選んだのか?ランダムは最初から全部が決められるんだぞ」


「え⁉ だって――」


 鼻歌を歌いながら、俺達の会話なんて全く聞いてない。


「じゃあ、転送ね♪」


「騙したなぁ~~っ‼」


「あら、最初から疑問形で投げかけたじゃない。きちんと聞き返さないのが悪いのよ。それに説明書は初めにきちんと読むモノよ。開始時からメニュー欄に説明書の項目が出てるじゃない、選ばなかった貴方の落ち度ね。大丈夫よ、元の貴方を更に綺麗な感じにしといてあげたから、貴方は男にしておくには勿体無い位に、綺麗よ」



「俺は、カッコよくな――」


「ばいば~い」

「すまない、もう我らの管轄を離れた」





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