【暴走40.5】初めての準備=あの時、樹一に起きた選択肢。
☆★☆ ==視点【秋堂樹一】== ☆★☆
「ふぅ、まさか、もう見つかるとはな」
なんというか、顔を会わせ辛くって連絡もしてなかった。
思い返してみれば、雷刀と話したのは本当に久しぶりな気がする。逆の立場だったら確かに似たような事をしていたと思うな。
「翡翠や琥珀については、しばらく小鳥に託すのが良いだろうな」
流石になぁ、男と女じゃあ色々と違うだろうし、下手に小鳥の邪魔なんかした日にはどんな復讐をされるか分かったもんじゃない。
前に怒らせた時は、本当に……本当に恐怖を覚えるえげつない事をされたもんだ。
思い出した瞬間に、全身が勝手に震えてしまう。
「なんか、ライバルが増えたっぽいけどな」
あの双子、どうしてか小鳥と似た雰囲気があるから怖いんだよな。
翡翠達の事になると、マジで何でもしてきそうな感じだ。その分、小鳥の方がまだ可愛げがある方なのかもしれない。
…………あるか? いや、どっちかっていうと、
加減を知ってる分、ギリギリまで追い詰められそうな気がする。
「おぉ、こわ。恋路は傍から見るのが一番楽しめるってもんだな」
飲み物を取りに台所まで行って、麦茶を注いでいる時だった。
久しぶりにちゃんと聞く、携帯の着信音が聞こえた。
ポケットから取り出すと、画面には雷刀と表示され、電話が掛かってきたようだ。
『もしもし、なんだな』
「ああ、もしもし。久しぶり」
なんかちょっと声が震えている様な気がする。
『久しぶり。っで、悪いんだけど。悪い報告があるんだな』
「は? 悪い報告?」
なにか小言の一言でも言われんのかと思ったが、違うらしい。
雷刀はネチネチと言ってくるタイプではないから、久しぶりの電話でもうちょっとテンションが高く、ゲームの情報なんかを楽しそうに語ってくれるかと思ったんだけど。
『姉上に……バレたんだな』
震え声で、ぼそぼそ喋っているのに、不思議とすんなりと聞き取れてしまった。
「ねぇ、ごめん。もっかい言って欲しい」
いやいや、聞き間違いかもシレナイ。
『姉上にバレた』
「どういうことだ?」
『知らない、分からなない、怖いんだな。きっと超能力なんだな、休憩で起きたら六十秒もしない内に来たんだな。この怖さは小鳥妃のそれと同じだと思うんだな、同氏たる樹一氏なら分かるはずなんだな。摩訶不思議な探知魔法なんだな』
むしろ未来予知的な能力な気がするが……。
確かに、小鳥の事を言われると何も言えん。
『樹一氏が籠って居るのが悪いんだ。とばっちりなんだな』
余程な怖さだったんだろうな。
「そんなに、その、怒ってるのか? 確かにお前と遊んでる時に良く会ったり喋ったりするけどさ、そんなに仲が――」
『それ以上の言葉を言うな、貴様、オイラを殺したいのか⁉』
物凄く慌てた様子で言われた。
「な、なんだよ? どうしたんだ」
『はぁはぁ、聞かれては……無いんだな。コレだから――は困るんだな』
「は? なに? なんか小声だったぞ」
『くぅ~~~、言いたい事が言えないとはこの事よな』
「ふぶき先輩に口止めでもされてるのか?」
『ちがっ、くないけど、違う。だぁぁ~~~このモドカシサはどうすっぎーよか』
佐賀弁が出たな。
そんな困る事を聞いたのだろうか? 別段、親密な仲って訳ではないのにな。
『大体、急に引っ越しとかする樹一氏も悪いのだ。せめて連絡が取れて話せればオイラが困る事なんてなかったんだな。心配を掛けた分は樹一氏の責任なんだな――というか、むしろ、そのせいであ――が自身の――に――というか』
所々、何故かごにょごにょとくぐもった声で聞こえない。
「と、とにかく、ふぶき先輩も俺の事を心配してくれたって事で、良いのか?」
『はぁ~~、その認識で間違いではないんだな。下手すると樹一宅を調べて突貫しだす前に、住所と…………ティフォナ氏の写真を寄こすんだな』
「なんでだよ⁉」
『良いのでござるか? 暴走した姉上を止める手立てが、それだけで回避できるかもしれぬのですぞ。身から出た錆じゃないけど、それだけで、後の事がスムーズになるんだな』
「……くっ、わかったよ」
雷刀の言う通り、確かにふぶき先輩がお姉さんオーラ全開で暴走したら止められない。というか、下手したらゲームの世界にまで突貫してきそうで怖いな。
『それで聞きたいのだが、ティフォナ氏よ。どうしてあの様な姿になったので?』
俺も雷刀側の立ち位置に居たら、確かに聞きたい事だよな。
「色々と、あったんだよ」
『色々って、もしかして、登録と認証時にあまりに女――』
「違うからなっ⁉」
『誤作動的な事案じゃないなら、何故なんだな?』
「あの世界の……奴の悪乗りのせいだ――――」
あんのダメ神は絶対に、俺が討伐してみせる。
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